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2018/12/15 17:00

かつては同じ会社の路線だった — 数奇な運命をたどった2路線を巡る旅 【香椎線編】

 

【香椎線を巡る旅2】まさに威容!志免の竪坑櫓の意外な歴史

さて長年にわたり石炭輸送を行われてきた香椎線。かつての栄華の跡に出会うことができる。

 

香椎線の酒殿駅から志免(しめ)という町へ元貨物支線に沿うように歩いてみた。酒殿駅の南側は、空き地が広がり、また廃線跡を利用した道が駅の先、緩やかにカーブしつつ志免方面へ延びている。

↑酒殿駅の南側には広々した空き地が広がる。かつて同駅からは、旧・志免駅へ向けて貨物支線が敷かれていた。往時は酒殿駅構内には多数の線路が敷かれ、多くの貨車で賑わっていたことだろう

 

酒殿駅から志免町までは約1.6km、徒歩で20分ほどだ。町には「志免鉱業所竪坑櫓(たてこうやぐら)」という巨大な建物が立つ。地下深く埋蔵されていた石炭の産出のために設けられた竪坑の跡だ。空を突くように延びる竪坑は周囲からも望め、この櫓を目印に歩くことができる。

 

志免町では、まず旧志免駅へ立ち寄った。同駅は香椎線の貨物支線と、勝田線が走っていたところ。旧駅は広々した鉄道記念公園となっていた。ホームと線路が残る。ちょうど訪れた時には、親子が写真撮影をしていたが、訪れる人は少なく寂寥感が感じられた。

 

志免の観光名所になっている「竪坑櫓」は旧志免駅のすぐ東側にある。頭上、50m近く延びる櫓。この下は地下430mまで竪坑が延びていたとされる。巨大な櫓は石炭の採掘と、作業員の移動に使われていた。

 

この竪坑櫓の着工は1941(昭和16)年、完成が1943(昭和18)年のことだった。かかった経費は当時の金額で200万円、今のお金に換算すると6億円以上だとされる。当時、最新の技術を誇った竪坑で、太平洋戦争前に造られた同スタイルの竪坑は世界で3つしか残っていないとされる。

 

さらに骨組みとされた鉄鋼はイギリス製のものだった。戦時下、入手さえ困難だったと思われる海外の鉄鋼を優先的に使って造られたことに驚かされた。

↑志免鉄道記念公園のすぐ近くにある「志免鉱業所竪坑櫓(しめこうぎょうしょたてこうやぐら)」。高さ47.65mの鉄筋コンクリート造りで、地下430mまで竪坑が延びていた。現在は、国の重要文化財に指定。周囲は運動公園として整備、左下にはボタ山が見える

 

鉄筋コンクリート製で、見上げるその姿は威容そのもの。さらに驚かされるのは元鉱業所の運営母体だ。当初は海軍省。戦争遂行の名のもとに、多くの作業員が動員され、短期間で造り上げられたものだった。

 

戦後は日本国有鉄道(国鉄)に引き継がれる。採炭した石炭は、当時まだ主力車両として活躍していた蒸気機関車の熱源として使われたのだろう。

 

戦後も採炭に役立ってきた竪坑櫓だったが、志免鉱業所が1964(昭和39)年に閉山されるとともに竪坑櫓もその役目を終えた。巨額な投資が行われたにも関わらず、現役として活躍したのは20年足らずだったわけだ。

 

巨額な費用をかけ、建造には多くの犠牲も伴ったと推測される巨大な櫓が、完成後わずか20年もたたずに、廃虚になるとは……。 石炭から石油へエネルギーの変化があったとはいえ、空しさを感じさせる遺構でもある。

 

 

【香椎線を巡る旅3】宇美駅前に旧勝田線の路線跡を発見する

駅に戻り、香椎線の旅を続けよう。車窓には住宅地とともに田園風景が広がるようになる。そして香椎駅からちょうど30分で終点の宇美駅に到着した。

 

宇美駅は、今でこそ香椎線のみの駅だが、前述した勝田線にも宇美駅が設けられていた。開業させた鉄道会社が異なったせいか、勝田線の線路は香椎線とつながらず。共に国鉄の路線となった後も線路は結ばれることなかった。

 

しかも、両線の宇美駅の改札口が向き合っておらず(それぞれ西側に駅舎が向いていた)、歩くと100mほど離れていて、乗換えも不便だった。ちなみに勝田線の線路は宇美駅から約2.8km先の筑前勝田駅まで延びていた。

↑香椎線の終着駅、宇美駅。円内写真は駅名標。駅舎はコンパクトだが、不釣り合いなほど駅前広場が大きい。香椎線とほぼ平行に敷かれていた勝田線の線路や駅間にあった家屋が駅前広場や、道路の拡幅工事に流用されたためだ

 

↑香椎線の宇美駅はホームの先まで続いている。側線に入るポイントが設けられているが、現在は使われていないようだった。線路の先には宇美町立武道館の建物が立つ

 

↑旧・勝田線は宇美駅付近で香椎線と平行に線路が敷かれていた。右奥に宇美駅に到着する香椎線の列車が見える。写真右側に宇美駅があり、広場をはさんで撮影者の立ち位置を勝田線の線路が通っていた。横断歩道の先に旧・勝田線の線路を利用した遊歩道がのびる

 

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