【香椎線を巡る旅4】西鉄貝塚線との接続する和白駅付近の不思議
宇美駅から香椎駅に戻り、西側の西戸崎駅を目指そう。西戸崎駅へ向かう列車はレジャー利用の乗客が目立つ。沿線の海ノ中道駅が最寄り駅の「海の中道海浜公園」や「マリンワールド海の中道」へ向かう観光客が多く利用するためだ。
宇美駅方面へ向かう列車が地元に住む人たちの利用が多いのに対して、対極を行く趣がある。さらに海の景色や長く続く砂浜などが、リゾート気分を高めている。
西戸崎駅行きの列車はしばらくの間、鹿児島本線と平行して設けられた線路を走る。鹿児島本線では、香椎駅の隣の駅は九産大前駅(きゅうさんだいまええき)だが、香椎線は九産大前駅のそばを通るものの、駅が設けられていない。
香椎駅の次の駅は和白駅(わじろえき)となる。この駅、かつては香椎線を同じ会社の路線だった西鉄貝塚線との接続駅だ。香椎線は和白駅の手前から、数100mにわたり貝塚線と平行して走る。
現在は、JRと西鉄の和白駅は別々に設けられているが、古くは、現在よりも500mほど香椎駅側に駅ホームがあり、JR・西鉄の共用駅として利用されていた。さらに現在は、駅の北側で両線が立体交差しているが、1966(昭和41)年10月までは両線の線路が平面で交差していた。
JRと西鉄という違う道を歩み始めた両線だったが、20年にわたり平面交差が続くという、ちょっと考えられない線路構造が長年にわたり続いたわけだ。さぞや、両路線の列車の運転に手間がかかったに違いない。
【香椎線を巡る旅5】8kmにも渡る長大な砂州の上を走る
和白駅を出た香椎線の列車は、「海の中道」を呼ばれる、巨大な砂州(さす)を走り始める。
海の中道は博多湾の北側をふさぐように九州本土と志賀島(しかのしま)を結ぶ長さ8kmにもおよぶ長い砂州だ。この砂州の上を走るだけに珍しい光景が楽しめる。和白駅の次の駅は奈多駅。畑地や住宅を見て走る。さらに次の駅が雁ノ巣駅(がんのすえき)だ。
雁ノ巣という地名をどこかで聞き覚えている方も多いのではないだろうか。筆者は例年12月に行われる福岡国際マラソンの折り返し地点として覚えている。ただし、この福岡国際マラソンも、現在は海の中道で風の影響を受けるということから、香椎で折り返すようになっている。
さらにこの雁ノ巣には雁ノ巣飛行場があった。太平洋戦争時は博多海軍航空隊の基地も置かれた。太平洋戦争前に滑走路を延ばすために、香椎線(当時は博多湾鉄道汽船が運行)の線路が北側に移設されている。戦後はアメリカ軍に接収されていたが、1977(昭和52)年に返還され、現在は広い敷地を活かしたレクリエーションセンターとなっている。
雁ノ巣駅〜海ノ中道駅間は駅間が4.4kmと離れている。列車は玄界灘側に砂丘を見ながら進む。砂丘が続く海岸は奈多海岸と呼ばれている。さらに海ノ中道駅に近づくにつれクロマツの松林に包まれるようにして列車は走る。
「海の中道海浜公園」や「マリンワールド海の中道」の最寄り駅、海ノ中道駅を通り過ぎれば、終点の西戸崎駅も近い。
西戸崎駅近くには近年、リゾートマンションが建てられているが、港側には今も広大な空き地も広がる。石炭輸送が行われていた当時の地図を見ると、引込線が多数、敷かれていた様子が分かる。石炭が積まれた貨車が、駅構内にたくさん停められていた様子が目に浮かぶようだ。
なお、12月14日にJR九州から新たな発表があった。その発表によると香椎線の車両が2019年3月16日に予定されるダイヤ改正にあわせて、すべての車両がBEC819系「DENCHA」に変更されることが発表されるとのこと。BEC819系は電化区間ではパンタグラフをあげ電気により走る。また車両にリチウムイオン電池が積まれ、電化区間で充電。その充電した電気を使って非電化区間を走る仕組みで「蓄電池電車」とも呼ばれる。
長らく非電化だった香椎線も来春に、大きく変ろうとしている。
香椎線のレポートはここまで。【西鉄 貝塚線編】では香椎線と同じ会社が開業させた貝塚線を旅する。