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2019/4/6 18:00

鈴鹿山脈を眺めて走る三重のローカル私鉄−−10の新たな発見に胸ときめく

【三岐線で新発見③】近鉄富田駅への路線は後から造られた!

では、三岐線の電車に乗車することにしよう。

 

三岐線の電車は近鉄富田駅の3番線ホームから発車する。近鉄の名古屋方面行きの電車が発車する2番線と同じホームで、乗換えしやすく便利だ。

↑近鉄富田駅の3番線は三岐線の専用ホーム。線路は写真の手前で行き止まりとなる。反対側、2番線は近鉄名古屋線の名古屋方面行きのホームとなる。2番線と3番線を遮る柵等もなく、乗換えしやすい。ただし、三岐線内ではICカードが利用できないので注意したい

 

出発するすぐに近鉄名古屋線と別れ、坂を登り始める。そして高架橋でまたぐのがJR関西本線の線路だ。線路をまたぐと電車は最徐行、ここで右から上ってきた線路と三岐朝明(あさと)信号場で合流する。

 

実はこの合流してきた線路こそ、路線開業時に造られた三岐線そのものだ。

↑三岐朝明信号場からJR富田駅へ向かう三岐鉄道の貨物列車。三岐朝明信号場とJR富田駅間は旅客列車が走ることが無く、貨物列車のみが走っている。写真左手の高架線が近鉄連絡線で、この上を近鉄富田駅へ向かう電車が走る

 

↑JR富田駅と平行して三岐鉄道のホームと跨線橋がある。現在このホームは使われておらず、また跨線橋への入口も閉鎖されている。写真右手にはJR貨物のDF200形式ディーゼル機関車の姿が見える。同機関車が三岐鉄道から貨車を引き継ぎ、関西本線を走る

 

概略で触れた三岐線の路線はJR富田駅〜西藤原駅間だ。しかし、電車は近鉄富田駅から出発する。近鉄富田駅〜三岐朝明信号場1.1km区間は、近鉄連絡線という扱いになっている。

 

近鉄連絡線が開業したのは1970(昭和45)年のこと。以降の1985(昭和60)年まで三岐線の電車は近鉄富田駅と、JR富田駅の2つの始発駅があった。

 

ところが、JR富田駅の利用客は近鉄富田駅に比べて少ないことから三岐朝明信号場〜JR富田駅間は、旅客営業は休止、現在、“本線”というべき路線には電車が走らず貨物列車のみが走る路線となっている。

 

近鉄富田駅を発車した電車は、四日市市の郊外住宅地を左右に見て走るうち、2つ先の平津駅(へいづえき)を過ぎた付近から左右に田園風景が広がり出す。

 

 

【三岐線で新発見④】保々車両区で塗装変更が進む電車は何だろう

近鉄富田駅から約16分で保々駅(ほぼえき)に到着した。

 

この駅には隣接して車両の基地、保々車両区がある。車両区を取り巻く道から停めてある電車や電気機関車がすぐ近くに見える。そのためか週末になると付近では鉄道ファンを良く見かける。

↑駅を出て近鉄富田駅側に歩いたところに保々車両区がある。基地と巡る道路の間には写真のような柵があるのみで、気軽に基地内の車両を眺めることができる

 

3月下旬に保々車両区の周囲を歩いていたら、基地の検修庫内で全般検査とともに塗装変更を行う車両を発見した。上下をラズベリーレッド、窓の周りがトニーベージュという色で塗られていた。

 

これこそ、西武鉄道の1960年代から1980年代にかけて西武鉄道の路線を走ったレトロカラーそのものではないか! 通称「赤電」と鉄道ファンに呼ばれ、愛されてきた車体カラーだ。

↑赤電塗装化が進む三岐鉄道803編成。西武鉄道でも新101系を「赤電」塗装を施した車両を走らせているが、新101系の登場した当時はすでに赤電は消滅していた。旧西武鉄道701系を赤電カラーにするとは何とも粋な計らいだと感じた

 

毎回、筆者の経験談で恐縮だが、西武鉄道の沿線で育ち、また通学、通勤に「赤電」を使った世代としては、懐かしさで胸がいっぱいになった。

 

しかも、現在、西武鉄道の西武多摩川線などを走るレトロ赤電塗装車は、古くは赤電でなかったこともあり、形と色に違和感を感じていた。

↑1968(昭和43)年、所沢駅近くで筆者が撮影した西武鉄道701系。当時は膨張する人口に対応するため西武鉄道では車体が新しかったものの、古い台車の再生品利用などして車両増産が図られた。当時の道路はデコボコ、軽トラックにも時代が感じられる

 

それに対して、三岐線で今生まれつつある赤電は、本家そのものの姿形を再現したもの。現実感が違うのである。

 

三岐線の赤電塗装車だが、4月上旬から走りだすべく最終調整中と三岐鉄道では話す。“あぁ、また三岐線に行かなければ!” うれしい悲鳴とともに、早く走る姿に出会いたいと感じたのだった。

↑すでに三岐線ではオールイエローのレトロ塗装車の801系(元西武鉄道701系)も走っている。1980年代の終盤からは西武鉄道701系が黄色一色に塗り替えられていった。その時に冷房化、さらに台車も写真のような新しいものに履き替えて走ったと記憶している

 

 

【三岐線で新発見⑤】不思議な形、レトロな音の踏切警報器を発見

三岐線に乗っていると、懐かしい、そして今となっては聞くことない踏切があることに気付いた。あれ〜、これは最寄りの駅で降りて確かめないと。

 

ということで保々駅から2つめの梅戸井駅(うめどいえき)で途中下車。近くにある古風な警報器が付く踏切へ向かう。

↑梅戸井駅〜大安駅(だいあんえき)間にある梅戸井2号踏切。警報器の上部の突起物の中で鐘を鳴らして、警報音を作り出している。三岐線でもこうしたレトロな踏切は徐々に減りつつある。通り過ぎる電車は101系

 

県道617号線が渡る「梅戸井2号踏切」。警報器の先が見かけない形状になっている。電車が来ると「♪カン、カン、カラン、カラン」と鳴る。現在、全国で多く設置されている警報器は「電子音式」と呼ばれるもので、電子音が鳴り、利用者に電車の接近を伝えている。

 

それに対して梅戸井2号踏切に設置された面白い形の警報器は「電鐘式」と呼ばれるもの。電子音ではなく上に付く発生器の中で実際に鐘を鳴らして音を生み出している。古風な音色でおもしろい。

 

電鐘式の警報器はすでにメーカーも生産を終了させており、三岐線でもこうした古い警報器は減ってきている。つい先頃にも1つの踏切の警報器が電子音式に変更された。残るのは梅戸井2号踏切を含め3か所のみになっているとか。ぜひとも古風な音色を今のうちに聞いておきたい。

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