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2019/4/27 17:30

上州名物・赤城山の南麓を走る「上毛電気鉄道」10のお宝

おもしろローカル線の旅37 〜〜上毛電気鉄道(群馬県)〜〜

群馬県の中央前橋駅と西桐生駅の間を結んで走る上毛電気鉄道上毛線(以下「上毛電鉄」と略)。美しい姿を誇る赤城山の南麓を2両編成の電車が走る。

 

上毛電鉄には、国の登録有形文化財に認定された橋りょうや駅など「お宝」が多い。そうした歴史的な施設以外にも「お宝」がふんだんに隠されている。そんな上毛電気鉄道の“お宝さがしの旅”に出かけた。

↑中央前橋駅を発車するデハ101(詳細後述)も上毛電鉄のお宝だ。中央前橋駅はJR前橋駅からシャトルバスで10分ほど。ホームの傍らを広瀬川が流れている

 

【路線の概要】昨年で路線開業90周年を迎えた上毛電気鉄道

まずは、上毛電鉄の概要を見ておこう。

路線と距離上毛電気鉄道上毛線/中央前橋駅〜西桐生駅25.4km
開業1928(昭和3年)年11月10日、中央前橋駅〜西桐生駅間が開業
駅数23駅(起終点を含む)

 

上の地図を見ていただけばお分かりのとおり、JRの両毛線は伊勢崎の町を通るために、南へ大きく迂回して走っている。対して上毛電鉄は前橋と桐生の間をほぼ直線的に結んでいる。当時、鉄道の空白地帯だった赤城山南麓の養蚕地帯を結ぶ意図もあったとされる。

 

路線は全線が単線、直流1500Vで電化され、京王電鉄の井の頭線で活躍した700形(京王時代は3000系)電車が2両編成で走る。

 

中央前橋駅発からは朝の7時台のみ20分間隔、あとは大体30分おきに列車が発車する。朝の9時と23時台発の列車2本が途中の大胡駅(おおごえき)止り。ほかすべての電車が終点の西桐生駅行きとなる。

 

なお、交通系ICカードは使えない。ワンマン運転のため、有人駅以外は整理券を乗車時に受け取り、降車時は運転席後ろの運賃箱に該当する運賃を支払う。「赤城南麓1日フリー切符」も用意されていておトクだ(大人1300円、小児650円)。このフリー切符は有人駅で販売されている。

 

↑上毛電鉄の起点、中央前橋駅。駅名のとおり前橋市の中央部に位置するものの、JR前橋駅とは1kmほど離れている。現在の駅舎は2000年に建てられたもの

 

珍しいのは起点となる中央前橋駅と、終点となる西桐生駅の両駅とも、他の鉄道路線と接続していないこと。接続は途中の赤城駅のみで、東武鉄道の桐生線と接続している。こうした姿の路線は国内では希少だ。

 

 

【上毛電鉄のお宝①】京王井の頭線当時の面影を残す700形

上毛電鉄の車両は、すべてが700形。京王井の頭線を走った3000系が使われている。京王の3000系は1962(昭和37)年から製造された電車で、京王電鉄初のオールステンレス車両。当時、加工が難しいとされた前面の上部にFRP(繊維強化プラスチック)が使われている。FRP部分のパステルカラーで7色の色分けをするなど、当時の車両としては画期的な試みが行われた。

 

京王井の頭線では2011(平成23)年12月まで走り続けている。

↑上毛電鉄を走る700形は全部で2両×8編成。車体側面の色帯は上毛電気鉄道カラーのフィヨルドグリーンと赤、京王当時の正面を彷彿させる華やかな8色のカラーで上州路を走り続けている

 

↑700形の車内にある鉄道車内製造銘板(メーカーズプレート)。旧京王3000系はステンレス車体の黎明期、東急車両で造られた車両で、現在も多くの地方の民鉄路線を走る。1998(平成10)年、京王電鉄の関連会社、京王重機で上毛電鉄用に改造が行われた

 

旧京王3000系が上毛電鉄へやってきたのは1998(平成10)年から2000(平成12)年にかけてのこと。京王電鉄の関連会社、京王重機で改造が行われ、上毛線に搬入された。正面上部のFRP部分の色は京王時代とはやや異なるものの、8色の華やかな色の車体が上州路によく似合う。

 

ちなみに京王3000系は上毛電鉄以外に、岳南電車(静岡県)、アルピコ鉄道(長野県)、北陸鉄道(石川県)、伊予鉄道(愛媛県)を走っている。ところが、みな姿を大きく変えた車両が多い。上毛電鉄の700形のように、京王井の頭線に走ったころの面影を色濃く残した姿は今やお宝と言っていいだろう。

 

この700形の一部更新の準備が始まっている。現在の上毛電鉄では700形と同じく長さ18m(正確には18.5mある)の車両が必要とされている。大手私鉄各社は長さ20m車両が主流のため、なかなか合う車両が見つからない。そこで路線開業時以来の新造車両も計画されている。

 

数年後、どのような車両が登場するのか、楽しみにしたい。

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