【美濃赤坂線の秘密⑧】同線と深い関わりを持つ「西濃鉄道」って?
美濃赤坂線を紹介する上で欠かせないのが「西濃鉄道」だろう。鉄道好きにとっては、美濃赤坂線とともに、注目したい鉄道会社である。
同じ西濃地方(岐阜県の西部)を本拠にする大手運輸業の西濃運輸という会社は良く知られている。名前は似ていて勘違いされがちだが、西濃鉄道はこの西濃運輸とは無縁の会社だ。
会社の創立は古い。1927(昭和2)年に創業した。赤坂地区は石灰岩、大理石の採掘地だった。古くは上記の赤坂港から舟便で積み出されていたが、いかんせん輸送力が脆弱だった。その積み出しのために造られたのが美濃赤坂線であり、その後に設けられた西濃鉄道だった。西濃鉄道の路線は美濃赤坂線が開業した9年後の1928(昭和3)年12月17日に開業している。
西濃鉄道は現在、貨物列車のみの輸送を行っている。旅客営業はしていない。貨物輸送のみを行う民営の鉄道会社は西濃鉄道のみだ(岩手開発鉄道を第三セクター鉄道と見た場合)。
路線は市橋線(いちはしせん)と呼ばれ、その距離は1.3km。美濃赤坂駅〜乙女坂間を列車が走る。かつて市橋線は乙女坂の先まで延び、美濃赤坂駅〜市橋駅間2.6kmを走っていた。さらに昼飯線(ひるいせん)美濃赤坂駅〜昼飯駅間1.9kmという路線もあった。
太平洋戦争前まで市橋線では旅客営業も行っていた。そんな華やかな過去を持つ鉄道会社でもある。現在は路線距離が縮められ1.3kmのミニ路線を運営するのみの会社となっている。だが侮ってはいけない。
平成27年度の貨物の輸送トン数を65万4432トン。同じ東海地区を走る衣浦臨海鉄道の輸送トン数(36万5695トン)に比べて倍近くの輸送量を保っている。貨車が積む荷物が異なるために重量だけでは単純に比較しにくいが、週末でも、貨物列車が走ることが多い。
さらに西濃鉄道は大垣駅を始点にして走る樽見鉄道の筆頭株主にもなっている。路線はミニながらなかなかの実績を上げていることが、これらの事柄を見ても分かる。
【美濃赤坂線の秘密⑨】神社の境内を走る西濃鉄道の貨物列車
美濃赤坂駅でJR貨物から貨車を引き継いだ西濃鉄道。貨物列車の牽引役はDD40形ディーゼル機関車だ。こげ茶色、角張った車体がなんとも渋い。重厚感が感じられる。
その機関車がエンジン音を高らかに響かせ貨車を牽き、赤坂宿を通り、商店の軒先を走っていく。さらに神社の赤い鳥居の前を通り過ぎる。西濃鉄道の沿線では、そんなユニークな光景を楽しむことができる。
20両ないし24両のホッパ貨車を牽いて力強く走る貨物列車が乙女坂にある矢橋工業の構内に入っていく。構内では、機関車が後ろから前へ、機回しして位置を変更。貨車を連結し直す。そして専用設備を使ってホッパ貨車へ石灰石が素早く積み込まれていく。
西濃鉄道の貨物列車の時刻をここに記しておこう。1日に3往復の列車が出ている。なお同時刻は目安で、発車の準備ができたら、この時刻よりも前に(早発気味の傾向が強い)出発する。運休もあるので注意したい。
◆西濃鉄道・市橋線の時刻
〈下り〉
1021列車:美濃赤坂6時9分発 → 乙女坂6時14分着
1025列車:美濃赤坂11時33分発 → 乙女坂11時38分着
1023列車:美濃赤坂15時44分発 → 乙女坂15時49分着
〈上り〉
1022列車:乙女坂8時25分発 → 美濃赤坂8時30分着
1026列車:乙女坂14時15分発 → 美濃赤坂14時20分着
1024列車:乙女坂17時57分発 → 美濃赤坂18時2分着