【左沢線の秘密⑤】田んぼの中におしゃれな駅を発見。さて屋根が
左沢駅の起点となる北山形駅を発車した列車はしばらく山形の市街を左右に見て進む。次の東金井駅(ひがしかないえき)付近から、田畑が多くなってくる。
山形市西部を流れる須川(すかわ)を渡ると、路線は北へ向きを変える。そして羽前山辺駅へ到着する。地元は山辺町(やまのべまち)なのだが、駅は不思議に「やまべ」と読ませる。
羽前山辺駅を発車すると列車の左右の視界が開け、周囲に田園風景が広がる。
次の駅は羽前金沢駅(うぜんかねざわえき)。この駅は四方すべてが田んぼで、駅近くに民家はない。駅に降り立つとわかるが、西側に少し離れて集落がある。その集落の名が金沢。この集落の名が駅名の元となっている。
さてこの駅。無人駅で小さいもののおしゃれだ。駅舎の天井に丸い赤い屋根が2枚付けられている。この形は何を意味するのだろう。
地元・中山町の町内誌「広報なかやま」を見せていただいた。
広報誌によると、2003年に建て替えられた駅舎で、ホームに入る入口にはスロープ、手すりが設けられバリアフリー設計となっている。駅舎のデザインは「大空に羽ばたけ」がテーマなのだそう。屋根は鳥の翼をイメージして付けられていた。まるで田園風景のなかから、鳥が飛翔するかのように。
設計者は、若い人たちにこの駅から広い空へ向けて鳥のように羽ばたいて欲しいという思いがあったのだろう。田園の真ん中の駅が、素晴らしい思いとともに造られていた。このような駅に巡りあえてすがすがしい気持ちになった。
ちなみに中山町は山形名物、芋煮会発祥の地だそうだ。次にはぜひ芋煮会が楽しめる秋に訪れたいものだ。
【左沢線の秘密⑥】春の沿線に多く見かける白い花木は何だろう?
羽前長崎駅を過ぎると大きな川を渡る。この川が最上川だ。地図を見るとわかるように最上川は、山形盆地を“にょろにょろ”とカーブを描きつつ流れている。
奥の細道紀行で俳人の松尾芭蕉は、「五月雨を集めて早し最上川」とうたった。この句どおりに、最上川は特徴のある川の流れを見せる。一般的に平野部を流れる川の多くは、広大な河原が自然とできあがるケースが多い。ところが、最上川は四季を通じて水量が豊富で、河原がほとんど形成されずに県内を流れていく。
そんな迫力ある最上川を渡ると列車はいよいよ寒河江市へ入る。
寒河江市の中心駅でもある寒河江駅(さがええき)付近では、5月上旬、白い花をつけた花木が多く見かける。ほとんどの木が周囲を覆うことができるように柱で取り囲まれ、とても大切に扱われていることがわかる。
賢明な読者の方はもうおわかりだろう。白い花を咲かせていたのは「さくらんぼ」だ。さくらんぼが実るのは品種により異なるが、6月上旬から7月上旬まで。寒河江市には300か所もの観光さくらんぼ園があり、早い所では5月下旬からさくらんぼ狩りが可能となる。
実るシーズンともなれば、きっと見事な風景になるのだろう。ちなみに寒河江駅の駅名標はさくらんぼの形をしていた。さくらんぼにかける思いが伝わってくるようだった。
ところで、6両で走ってきた朝7時3分山形駅発の列車。寒河江駅2番線に到着すると前の2両がそのまま左沢駅行きに。後ろ4両が山形駅として折り返した。
駅ホームでは大掛かりな切り離し作業はなく、そのままの位置で、前の2両と後ろの4両が分かれて走り出した。利用者も慣れている様子で、乗り間違いもほぼない様子だった。寒河江周辺からは山形市内への通勤・通学客が多く、山形行きへの朝の列車は、どの列車もかなりの混雑度となっていた。