【世田谷線の謎②】路面電車と普通の電車はどこが違うのだろう?
世田谷線は専用軌道、つまり電車専用の線路を走っている。なのに路面電車タイプの車両が走る軌道線となっている。普通の鉄道とどこが違うのだろう。その長所、短所はどこに?
路面電車は道路の上に敷かれた軌道を使って走る電車のことを指す。普通の鉄道とは法律も異なっている。路面電車は軌道法という法律に従っている。普通の鉄道は鉄道事業法という法律に従っている。
普通の鉄道用の線路を道路上に敷設することはできない。一方、路面電車ならば道路上に敷設した軌道を走ることができる。車とともに走る路面電車は、あくまで道路交通の補助的な役割と位置づけられている。
世田谷線は玉電の歴史を受け継いでいる。専用の線路を走るにもかかわらず、普通の鉄道路線とならずに路面電車の形態を今も保ち続けている。
だが、この路面電車のスタイルが今となっては、長所となっているように思える。例えば駅の形。世田谷線は全駅にスロープが付く。もともと、世田谷線のホームは路面電車用に造られたために、ホームの高さが普通の駅のホームに比べて低い。そのため緩やかな傾斜のスロープを設けやすい。さらに床が低い低床車が導入されている。ホームの高さイコール、電車の乗降口の高さとなっている。
実際に世田谷線に乗ってみても、高齢者や車椅子を利用される方々をよく見かける。健常者の人たちにしても、長い階段を上り下りする必要がない。もちろんエスカレーター、エレベーターの設置も必要がない。実に体に、そして環境に優しいシステムとなっているのだ。
一方で、軌道法という法律に従っているため、車との併存が可能なように、最高時速を抑えている。世田谷線の最高時速は40kmだ。普通の通勤電車が時速90〜100kmといったスピードで走ることを考えれば、かなり遅い。
とはいえ、駅間が短く、そして路線の長さが短い世田谷線にはちょうどよいスピードということも言うことができるだろう。
世界各地でも今、路面電車は安全安心、そして環境にやさしい乗り物「ライトレール」として見直されてきている。言い換えれば、世田谷線は人の暮らしにあった安全なスピードであり、スローライフという生き方にぴったりな乗り物なのかも知れない。
【世田谷線の謎③】人気! 招き猫電車のbefore & after
世田谷線の人気電車「招き猫電車」が5月に復活した。招き猫電車とは、招き猫のイラストが描かれたラッピングをまとった電車のこと。308編成はこうした招き猫ラッピングが施されている。
この招き猫電車、 “初代”は2017年9月に玉電開通110周年を記念してデビューした。そして2018年3月までラッピングされて走った。
さらに1年を経て、“二代目”招き猫ラッピング車両が走り始めた。世田谷線となり50周年を記念する企画でラッピングされたという。見た目、かわいらしい電車の再登場。世田谷線の人気盛り上げに一役買いそうだ。
さて招き猫電電車。初代と二代目ではどこが変わったのだろう。
下の写真を見ていただこう。招き猫電車のビフォーアフターを比べてみた。こうして見ると一目瞭然。正面の窓の上に耳が付けられた。東急電鉄によると「“猫感”を強くパワーアップ」しているとのこと。
猫感アップとはおもしろい! 確かに新しい招き猫電車は猫らしさがアップしているように見える。
運転終了の時期は未定。前代に引き続き人気電車となっているので、しばらくの間は世田谷線の看板電車として活躍しそうだ。ところで、なぜ世田谷線に招き猫電車が走るのだろうか。理由は、招き猫が世田谷線と縁が深いため。
宮の坂駅から徒歩2分ほどの豪徳寺(ごうとくじ)。この寺は徳川家康の家臣であり、江戸時代に彦根藩の藩主をつとめた井伊家の菩提寺でもある。
招き猫の逸話は次のようなもの。彦根藩の2代目藩主だった井伊直孝が、鷹狩りに出た時のこと。小さなお寺の前を通るとそこに手招きしている猫がいた。住職の愛猫「たま」だった。この猫の手招きで寺に入ったところ、激しい雷雨に。雨やどりしている最中に寺の和尚と昵懇になった。その後に寺は井伊家の菩提寺となり、その名も豪徳寺となった。猫の手招きが寺の隆盛にもつながったわけである。その後に「福を招き、縁起がいい」と境内に招福殿が建てられ、招猫観音がまつられた。こうした話が招き猫の起源になったという(諸説あり)。
猫の名が「たま」とは。玉電の名といい「たま」に縁が深い土地のようだ。それこそ“たまたま”のことなのだろうか。