【いい電の秘密⑥】今やこの駅のみ「岩代国」にちなむ駅名が残る
JR東北本線を越えたいい電は、しばらく盛土を走り、右に緩やかなカーブを切り、次の駅、岩代清水駅へ到着する。
この岩代清水駅。今となっては珍しい駅名なのだ。
岩代清水駅に付く「岩代」という地名。元は「岩代国」という地方区分された地名を元にしている。かつて「岩代」という地名は、岩代清水駅以外に、磐越西線の岩代熱海駅(現在の磐梯熱海駅)といった駅にも付けられていた。また磐越西線の始まりが岩越鉄道であったように、岩代国を元にした名前がちらほらみられた。岩代(現在の二本松市の一部)という町もあった。
ところが、岩代と付く駅名は今はやこの岩代清水駅のみとなっている。岩代国は福島県の西部地域の呼び名で、現在ほとんど忘れられ、使われなくなっているようだ。この岩代国、実は明治元年に設けられた国の名前。それまでこの地方は会津藩、二本松藩、梁川藩(やながわはん)などのいくつかの藩に分かれていた。
つまり戊辰の役後、明治政府によって付けられた地域の名前で、当初は使われていたものの、浸透していないようだ。裏には戊辰の役で、敗れてしまった側の思い、お仕着せの地方名は使うまい、という思いもあったのではなかろうか。
【いい電の秘密⑦】平行して走る道路名は県道「福島飯坂線」
岩代清水駅を発車したいい電。線路の左側に片側一車線の道路がほぼ平行して走るようになる。
この道路、県道(主要地方道)3号線で、福島市街と飯坂温泉を結ぶ地域では重要な道路だ。いい電と並走する区間は飯坂温泉駅の手前、花水坂駅まで。6kmに渡って県道に沿って延びる。
地元の人たちには「飯坂街道」の名で呼ぶ県道3号線。「福島飯坂線」という名前でも呼ばれる。いい電は正式名が福島交通飯坂線だから、非常に似通った名前で呼ばれているわけだ。
その県道3号線の横にある桜水駅。この駅には車両基地と検修施設がある。今は常時、走っていない7000系も、2両1編成が停められていた。
路線距離9.2km中の6kmという3分の2の区間を県道3号と並走することもあり、この区間の風景は似ている印象。沿線は郊外の住宅街が点在し、そして一部に田畑が広がる。医王寺前駅を過ぎて、小川を渡れば飯坂温泉も近い。
路線開業当時の終点駅、花水坂駅を過ぎ、電車は右カーブをきり、飯坂温泉駅へ入っていく。駅ホームは摺上川沿いにある。駅の玄関口は階段を上がった上にある。駅前広場には温泉に立寄ったとされる松尾芭蕉の像も立つ。