【只見線じっくり探訪記⑧】会津若松ではソースカツ丼が名物に
只見線の起点となる会津若松。古くは会津藩の城下町。会津松平家の治世が長かったこともあり、質実剛健という文化、および史跡が市内に残る。海が遠い内陸ということもあり、伝わる料理は保存食が多くいたって質素だ。
そんな会津グルメの中でいま静かなブームとなっているのが、ソースカツ丼。「ソースカツ丼の会」なる団体も立ち上がり、盛り上げムードが高まる。
さて、会津グルメで腹ごしらえしたら、只見線の旅をはじめよう。
城ふうのたたずまいをした会津若松駅。駅入口で白虎隊の像と、会津の民芸品である赤べこが歓迎してくれる。
只見線の列車は3番線もしくは4番線からの発車だ。同じホームから会津鉄道の列車や磐越西線の列車も発着しているので注意したい。
乗車するキハ40系はセミクロスシート。向かい合わせて座るクロスシートでなく、車両の端に2人掛け用のクロスシートがあったので、そちらを利用した。窓も個人用の小さめのものが付き特等席気分で只見線の旅を楽しんだ。
2つ先の西若松駅までは会津鉄道との共用線区。会津若松市の住宅地を左右に見て走る。
西若松駅から会津鉄道会津線と別れて、西を目指す。西若松駅を過ぎて間もなく、大川橋梁を渡る。橋の下を流れるのが阿賀川。またの名を大川と呼ぶ。同河川は新潟県に入ると阿賀野川と呼ばれる大河で、会津盆地の西側で只見川と合流をする。
【只見線じっくり探訪記⑨】磐梯山の姿を見ながら会津盆地を走る
会津盆地を走る只見線の車窓からよく見えるのが磐梯山だ。「会津磐梯山は宝の山よ〜」と民謡に唄われるように、阿賀川(大川)とともに会津のシンボルとなっている。盆地は平坦なだけに、只見線の各所からその姿が望め、見る角度が変わると、印象も変わって行くところが、この山らしいところだ。
盆地の中にある会津坂下駅付近まで、盆地に広がる田畑と磐梯山、北には万年雪をいだく飯豊連峰(いいでれんぽう)などの山々を望み列車は走る。
会津盆地を南側、そして西側と、盆地のフチをなぞるようにして走る只見線。そうした盆地の風景ともに、朝夕は列車に乗り込む学生の姿が目立つ。会津若松駅〜会津坂下駅間は、会津若松の近郊路線としても機能していることがわかる。
【只見線じっくり探訪記⑩】只見線のおもしろ駅を訪ねてみる
平坦だった只見線の路線。会津坂下駅を発車して間もなく、車窓模様が一転する。木々が列車を覆うようになり、急な坂を列車はディーゼルエンジンの音を響かせて上り始める。ここが会津盆地の西の端であり、山間に徐々に列車が入っていくことがわかる。
次の塔寺駅(とうでらえき)は山の中の駅。ホームへは入口から階段を上がって出る。そんな駅に訪れると待合室に「熊出没注意」の貼り紙が。実際にホームで鉄道作業員に目撃されたこともあるとか。自然が豊かということは、熊に出くわす危険と隣り合わせという現実もあるわけだ。
さてこの先、注目したいおもしろい駅がいくつかあるので、そちらの写真を中心に沿線模様をお届けしよう。前述した塔寺駅。山中に突然のように入口がありホームへの階段が延びる。隣の会津坂本駅は、もと貨物車両(有蓋貨車)の車体を駅舎に生かした駅だ。
さらに会津桧原駅(あいづひのはらえき)は駅舎がキノコのようでユーモラス。第一只見川橋梁の人気撮影ポイントである展望台への最寄り駅だが、展望台へは歩くと40分以上(約2.2km)ほどかかるのが難点だ。
駅の傍らを只見川が流れる早戸駅(はやとえき)。駅近くに民家など皆無で秘境駅の趣だ。駅からは国道252号のトンネルを通り抜けて約700mのところに早戸温泉があり、こちらの温泉宿へ行く人たちがこの駅を利用することもある。
こうした小さめの駅をいくつも停車しつつ走る只見線の列車。もし1駅のみ途中下車するとしたら、会津柳津駅をお勧めしたい。
会津柳津駅から徒歩で12分ほど(距離650m)のところに円蔵寺(えんぞうじ)がある。円蔵寺は9世紀に創建された古刹で、只見川を見下ろす高台に立つ。
本尊の福満虚空蔵堂(ふくまんこくぞう)は日本三虚空蔵にも上げられる。無限の智恵と慈悲を持つ菩薩として信仰されるありがたい虚空蔵菩薩。お参りに訪れる人も多い。
円蔵寺には柳津観音堂もあり、こちらは最近、文化庁に認定された日本遺産、会津の三十三観音めぐりにも含まれている。