乗り物
クルマ
2019/7/20 18:00

ホンダ「Nシリーズ安全取材会」で見た 新時代に向けた安全への取り組み!

新型「N-WGN」、「N-WGNカスタム」の市場投入とともに、ホンダはさらなる安全性がアップしました。今回のイベントはメディアに向けたNシリーズの「衝突安全性能」と「予防安全性能」のデモンストレーション。普段では立ち入ることのできない研究エリアへと潜入し、新時代の安全性に取り組むホンダの最新技術をレポートします。

【関連記事】

ホンダの「N-WGN」ティザー公開。Nシリーズの新型車はどうなる!?

東京ドームが丸々入る巨大な施設で、実車を使った衝突実験に心拍数が急上昇!

訪れたのは、栃木県にある何重にもセキュリティが掛けられた「屋内型全方位衝突実験施設」。その大きさは東京ドームがすっぽり収まるといいます。今回、広大な実験施設で行われたのがオフセット衝突実験。N-BOXとインサイトをオフセット(互い違い)した状態で正面衝突させます。

安全なエリアに避難すると、巨大なドームの左右から加速する2台が登場。50km/h(相対速度は約100km/h)まで加速し、息を飲んだ瞬間…「バッガーン!」という強烈な爆発音とともに2台のクルマが衝突。破片が飛び散り、エアバッグの煙が立ち上る……。その様子は交通事故の現場そのもので、実験と分かっていても心臓がバクバクと高鳴り心拍数が急上昇しました。

【フォトギャラリー】※GetNavi web本サイトにてご覧になれます。

 

オフセット衝突をした2台は目を覆いたくなるほどの状況でありながらも、しっかりとキャビン部分が原型を留めていました。オフセットで衝突した運転席側のドアは歪んではいたものの力を入れれば開けることができ、後部のスライドドアに至っては何事もなかったかのように開閉できました。ドアが開閉できれば迅速に救護活動が行え、救護に手間取るリスクは回避されることになります。この実験ではインサイトとN-BOXは1.5倍の質量(車両重量差)があり、その違いはN-BOX側では1.5倍の荷重が掛かります。早い話、軽いクルマほど大きな衝撃を受けるということです。

↑運転席側は見事にダメージを受けていたが、足元などはつぶれていなかった。運転手を助け出せる、または自分で脱出できる余裕はありました

 

実験後、ハイスピードカメラで撮影したVTRをもとに衝突結果を検証したのだが、衝突の瞬間、乗員を守るためにボディ自体がしっかりと衝撃のエネルギーを分散していたことが理解できました。このテクノロジーこそがホンダが誇る『コンパティビリティ対応ボディ』であり、独特のメインフレームとロアメンバーの構造によってキャビンへの負担を軽減することで乗員の安全性を高めています。また強固なボディで自車だけを守るのではなく、衝突エネルギーを分散させることで相手への攻撃性も低減しているのも大きな特徴です。

このコンパティビリティ対応ボディはNシリーズを含む全てのモデルに採用され、万が一の衝突事故でも乗員をしっかりと守ってくれます。事故を起こさないようにするアクティブセーフティだけでなく、非常時に乗員を守るハイレベルなパッシブセーフティにホンダならではの“自動車哲学”を感じずにはいられません。ホンダが誇るコンパティビリティ対応ボディはオーナーにとって「安心感」になることは間違いないです。

↑コンパティビリティ対応ボディ。パッケージ拡大とボディ軽量化を両立し、全方位安全性を確保します

 

ホンダが開発した歩行者ダミー「POLAR」。傷つきボロボロになることが人の安全につながる

ホンダのEEVC(サブシステム試験法)に使用される歩行者ダミー人形「POLAR」は、数多くのセンサーを搭載でき、最大128か所の衝撃データを計測することが可能。その開発は1988年から始まり、最新モデルのPOLARⅢへと進化を遂げています。開発当初のモデルは前進挙動を再現するだけでしたが、2世代モデルでは全身挙動の精度を向上させ、各部の傷害値を計測できるようになり、現在の3世代モデルでは腰部・脚部の人体忠実度を上げ、胸部傷害値計測精度もアップデート。

 

EEVCと呼ばれるテストはホンダ車が、歩行者の損傷度合いをデータ化するもので、実験で収集されたデータはホンダのクルマ作りに反映されます。そのデータをもとに開発されたボディは、歩行者との交通事故による死亡率を下げるとともに歩行者の衝撃をクルマの構造で和らげます。人に優しいクルマ作りはホンダの安全性における重要なファクターなのです。POLARに刻まれた傷は「人を守る」ための勲章。今後は歩行者だけでなく自転車に乗った状態でのテストを行うため、ホンダでは新たなるダミー人形の開発を進めているといいます。

↑「POLAR Ⅲ」。腰部、脚部人体忠実度、胸部傷害値計測精度をアップさせています

 

↑子どもタイプのPOLAR

最新のHonda SENSINGを体験!安全性の進化を体感

毎日のように誤発進や暴走による衝突事故が報道され、これからの日本はどうなってしまうのか……と不安を抱かずにいられません。SNSや加熱する報道により事故自体がクローズアップされていることは分かりますが、実際に起きていることなのだから決して目を背けることはできません。そんな不安を感じていた筆者ですが、ホンダが開催したワークショップ「Nシリーズ安全取材会」で体験した「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」によって新たな光を見ることができました。

 

山深い専用のテストコースでHonda SENSINGのレクチャーを受け、その後に実際に後方誤発進抑制機能を体験。テスト用に設えた壁に向かってリバースギアに入れた状態でアクセルを全開にします。すると、コンピュータとセンサーが障害物を読み取り自動的にエンジンの出力を抑えることで誤発進を防止。このシステムがあれば、アクセルを踏み違えてコンビニに突入する事故は未然に防げるはずです。もちろん、この誤発進抑制機能は後方だけでなく、前方でも抑制機能を発揮してくれます。

「高齢者比率が高まっている我が国において、この誤発進機能は大きな役割を果たすに違いない」と、よく言われています。実際に誤発進抑制機能を体験してみると、人間ミスは付き物ですから“もしものケース”を考えれば、この機能の必要性を強く感じました。

↑後方の障害物はソナーセンサーで検知。実際、壁に衝突するかどうか検証

 

次に、広大なテストコースに場所を移して行われたのがHonda SENSINGの目玉である「横断自転車検知」と「夜間歩行者検知」という機能の体験。まずは横断自転車検知だが、当日があいにくの雨ということもありテスト環境を整えるのに少々手間取ったものの、道路を横切る自転車(自動的走行)を前方に備えた単眼カメラとミリ波レーダーが自動的に探知して緊急ブレーキをかけてくれました。日本における自転車の死亡事故の50%が出会いがしらで起きていることを考えれば、このシステムが果たす役割は決して小さくないです。

↑テスト条件は自車速度30km/h、横断自転車速度15km/h。自転車を認識しスピードをゆるめ、自転車が走り去ってから再スタートをきった

 

最後は日没を待って「夜間歩行者検知」による自動ブレーキのテスト。しかし、天候がさらに悪化したことで残念なことに中止を余儀なくされました。実際にはテストできなかったものの、夜間歩行者検知機能は照度の低い夜間の道において緊急避難ブレーキを自動的に行ってくれるというもの。従来のシステムと比べ、カメラの認識精度を向上させるとともにアルゴリズムの解析精度を高めたソフトを搭載することでドライバーが視認しづらい夜間でも威力を発揮します。歩行者の死亡事故昼夜割合では夜間の事故が63%を占め、夜間における歩行者検知システムは今後必須装備になるはずです。

 

軽自動車の全グレードに標準装備される。Honda SENSINGがクルマ選びを変える!

ワークショップとして開催された「Nシリーズ安全取会」に参加したことで、これまで机上でしか味わえなかったHonda SENSINGの実力を目の当たりにすることができました。人気のN-BOXや新型モデルとしてラインナップされたN-WGNなど、新時代の軽自動車としての魅力は居住性や経済性だけではありません。世の中の二―ズが「安全性」へとシフトしている今、ホンダが精力を注ぐ「安全性への取り組み」は日本が誇る自動車産業の向かうべき姿であることを再認識させられました。

↑写真手前から新型のN-WGN、N-WGNカスタム、N-VAN、N-BOX。これらの車種も最新の安全性能を装備しています

 

【関連記事】

ホンダからの新たな刺客!軽自動車戦国時代に新型「N-WGN」がキタ〜

【フォトギャラリー】※GetNavi web本サイトにてご覧になれます。