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2019/7/21 17:00

夏こそ乗りたい! 秘境を走る「只見線」じっくり探訪記〈その2〉

【只見線を探訪する後編⑦】次の只見まで1駅間にかかる時間は?

大白川駅と只見駅の間は1971(昭和46)年8月29日に開業した。大白川駅まで路線が開業してから、29年後のことだった。

 

大白川駅〜只見駅間の距離は20.6kmある。この間に、トンネルが10本、橋梁はなんと41か所も設けられている。特に難工事だったのが6354mの長さを持つ六十里越(ろくじゅうりごえ)トンネルだった。

 

開通当時、日本の鉄道トンネルの中で、6番目に上げられるぐらい長いトンネルとなった。しかもトンネルの上にそびえるのは標高1000m級の山々だ。トンネル掘削の技術も、現代とは比べ物にならないくらい未熟だったに違いない。

 

難工事で、わずか1駅区間の開業のために5年以上の歳月と、当時の資金で51億円がかかった。現在でいえば、工事費は150億円前後になろうか。

 

大白川駅を出た只見行き列車は右に左にカーブを切りつつ、破間川の支流、末沢川に沿って走っていく。最大勾配25‰だが、意外に快調に気動車が飛ばした。

 

包む山々と渓谷の険しさが半端ない。間もなく、六十里越トンネルへ入る。トンネル内部で登り区間が終わったらしく、気動車はひと息つきつつ、快調に走り始める。

 

↑六十里越トンネルを越えた田子倉付近で路線を写す。左上写真が六十里越トンネルの只見側出口。出たところに国道252号の田子倉休憩所(右下)がある。列車はひと時、外を走るが、スノーシェッドに覆われた先で田子倉トンネルに入る

 

トンネルに入って10分あまり。ようやくトンネルを出たものの、しばらくすると再びトンネルへ入ってしまう。大白川駅〜只見駅間で2番目に長い田子倉トンネルだ(長さ3712m)。

 

この外に出る区間、スノーシェッドに覆われたところに、2013年3月まで田子倉駅という臨時駅があった。ホームから国道252号へ階段を登って出る構造だった。付近に家はなく、乗降客もほぼなかったが、時たま登山客に利用されていた。

 

過日に田子倉付近を車で訪れたが、やや遅めの時間帯だったこともあり、トイレ付きの休憩所(登山客の利用がある)付近は無人。「熊出没注意!」という貼り紙に怖れをなして早々に引き上げた。

 

話を戻そう。2本の長いトンネルを抜け、列車は坂を快適に下っていく。車窓から民家が見え始めると、間もなく只見駅に到着した。

 

大白川駅から只見駅まで一駅の間に、要した時間は何と30分。普通列車が、隣の駅まで無停車で30分間、走り続ける例は少ない。ちなみに日本で駅間最長区間は石北本線の上川駅〜白滝駅間(37.3km)で38分かかる(新幹線を除く)。北海道以外では最長と言って良いのではないだろうか。

 

 

【只見線を探訪する後編⑧】越えると大変さが身にしみる六十里越

乗車した日とは別の日、只見線とほぼ沿って走る国道252号の県境区間を車で往復してみた。只見と大白川の間は32kmほどの距離があり、六十里越と呼ばれる峠道となっている。

 

新潟県側、福島県側、どちらから上っても、つづら折りの道が続く。峠道の運転は嫌いでない筆者も、さすがに疲れを感じる上り下り、そして急カーブの連続だった。しかも標高差が半端ない。

 

↑国道252号の六十里越は、難所そのもの。最高地点の近くから只見側を見下ろすと田子倉湖がはるか眼下に広がる。周囲を取り巻く山々も美しかったが、険しさは並みでないことがわかった

 

↑只見側にある只見湖畔から田子倉ダムを望む。写真の撮影位置の横を国道252号が通り抜けている。ここから同国道は田子倉ダムでせき止められた田子倉湖を眼下に眺めるところを登る(上写真)わけで、2枚の対比でも、いかに上り下りが厳しいかわかる

 

六十里越という名からも分かるように新潟・福島の県境越えは厳しい。ちなみに小出駅付近の標高は92m、国道252号の六十里越の最高地点は760mにもなる(旧峠のピーク地点は863m)。

険しいこともあり、例年、降雪期には県境を越える国道252号は通行止めとなる。例年11月下旬〜4月末の長い間、この国道は雪に閉ざされるのだ。

 

国道が閉ざされる期間、只見の町から新潟方面へ抜ける方法は只見線しかない。

 

 

【只見線を探訪する後編⑨】ユネスコエコパークに指定された只見

只見という町の特徴を少し見ておこう。地図を見ると、福島県の西の端に位置する。会津地方に含まれ、南会津郡の一つの町となる。とはいえ、会津地方の中心、会津若松との距離に比べて、県を越えて小出へ出るほうがはるかに近い。

 

只見ダム、田子倉ダムが建設された当時には、建設に携わる人たちが多く移り住み、人口は3万人近くまでなった。ダム建設後は人口が減少し、2018年末で4235人となっている。

 

山あいにあるために冬は降雪量が多く、年間降雪量は平均すると1294cmにもなる。要するに13m近くの雪が降るというわけだ。雪に縁がほとんど無い太平洋側の都市住まいの人間には、ちょっとぴんとこない数字だ。

 

山間部がほとんどで、人口が少ない。そのため自然はとにかく豊かである。そのためにユネスコから「生物圏保存地域=ユネスコエコパーク」に2014年に指定された。日本では屋久島・口永良部島ほか7地域が指定されている。ユネスコエコパークとは、自然環境と人間社会の調和と共生、持続可能な発展を学び、実践する地域という解説がなされている。

 

↑只見駅のホーム横には観光客を迎えるようにかかしが立つ。駅舎(左上)には只見町インフォメーションセンターが併設されている。観光パンフレットの配付のほか、只見のいろいろな土産物などの販売も行われている

 

只見駅に到着した列車は、しばらくホームに停車したのち、小出駅へと折り返していく。列車で停車時間はまちまちで、8分〜1時間12分と異なる。

 

只見駅の先、会津川口駅までは現在、不通区間となっており、代行バスが運転されている。

 

↑只見駅を折り返した小出駅行き列車。この日は新潟色と、イメージアップ新潟色と呼ばれる赤を基調にした2両で運転されていた
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