最大トルクはガソリン仕様の1.6倍、経済性も一枚上手
新採用となったクリーンディーゼルは、2.2Lの直列4気筒ターボ。その最高出力は145PS/3500rpmで、最大トルクは380Nm/2000rpmを発揮します。1.5Lターボのガソリン仕様はそれぞれ150PS/5500rpmと240Nm/2000~3500rpmですから、出力こそ5PS低い一方でトルクは実に1.6倍も強力になります。また、それらを低い回転域で発生するのもディーゼルならでは。普通の乗用車と比較するとSUVは車重がかさむので、この特性は日常域での力強さに大きく貢献する長所となります。
また「クリーン」というコピー通り排ガス対策も万全。たとえばNOx(窒素酸化物)低減には、現状の市販車で最も高い効果を発揮する尿素SCRシステムが採用されています。そして、経済性はディーゼルに対する期待値通りに秀逸です。JC08モード燃費は、14.0㎞/L(4WD)と15.0㎞/L(2WD)のガソリン仕様に対して15.2㎞/Lをマーク。今回は燃費計測を行なう機会がありませんでしたが、おそらくエンジン負荷の少ない高速道路を淡々と流すような走らせ方なら20㎞/Lの大台にのせることも決して難しいことではないでしょう。
これに組み合わせるトランスミッションは、軽量かつ高効率な8速のトルクコンバーター式AT。近年、多段化されたATはプレミアムなモデルを中心としたトレンドになっていますが、総減速比のワイド化と各ギアの減速比が接近することで加速の力強さや燃費向上に貢献。さらには走りの質感アップにも期待が持てます。
なお、ガソリン仕様の駆動方式はFFと4WDの2本立てですがディーゼル仕様は前述の通り4WDのみ。システムは三菱自慢の「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」で、走行条件に応じて前後左右の駆動配分をリアルタイムに最適化。優れた悪路走破性に加え、ハンドリング性能の底上げにも大きく貢献しています。このクラスのSUVで本格的なオフロード走行に挑むユーザーは皆無に近いはずですが、エクリプス クロスには4WD作りに豊富なノウハウを持つ三菱の作らしい性能が与えられているわけです。
外観がクーペテイストでもユーティリティはSUV水準をキープ
新規追加のディーゼル仕様とはいえ、グレード構成がまったく同じなので室内の仕立ては基本的にガソリン仕様と変わりません。唯一、明確に異なるのは回転の上限が異なるタコメーターのスケール程度です。
実は、スタイリング重視のクーペ風SUVながらエクリプス クロスはSUVとしての機能が損なわれていない点も魅力のひとつ。この種のモデルでは低くなったルーフのしわ寄せで後席の着座位置が不自然に低かったり、あるいは荷室が不当に狭いというケースもしばしば見られるのですが、エクリプス クロスについてはそうした不都合がありません。200㎜のスライド機構が備わる後席はサイズ相応の広さが確保され、自然な姿勢で座ることが可能。荷室容量も後席使用時で最大448L(VDA測定値)が確保され、SUVをそれらしく使いたいというニーズにも対応できます。タッチパッドコントローラーを備えたインパネ回りはクーペらしい華やかさを意識したデザインですが、クルマとしての機能はSUV基準となっているわけです。