【弥彦線の秘密⑦】燕三条駅でも直接ちょう架式が確認できる
到着した燕三条駅は、見て回るとなかなかおもしろい駅だ。まずは弥彦線特有の直接ちょう架式の架線が駅中で見ることができる。
新幹線の路線と接続する在来線で、この架線方式が使われているのは、全国でもここのみではないのだろうか。北側の地上部に弥彦線のホームがある。階段をあがった階上が燕三条駅の構内となるが、仕切る改札口などはなく、ICカード用の簡易Suica改札機があるのみだ。
ちょうど弥彦線の階段を上がり、新幹線の改札口までの間に「燕三条Wing」という観光物産センターがある。ここでは地元製の包丁、食器、カトラリー、ノミなどの道具類など、金物製品をずらり展示、販売されている。見ていてとても興味がそそられる観光物産センターだった。
観光物産センターの「燕三条Wing」と、新幹線の改札口の間にはコンパクトな赤い鳥居が立てられる。もちろん弥彦線の沿線に彌彦神社(大鳥居を含め)があることをPRする意味を込めて設けられたのであろう。
だが、実際に弥彦線に乗ってみると、同路線を使って彌彦神社を参拝する人はきわめて少ないことがわかる。せっかく設けられた構内の鳥居も、PR効果を発揮していないようだった。参拝客が乗らない理由は後述したい。
燕三条駅構内でも見かけられた直接ちょう架式の架線の構造。弥彦線に乗っていても、どうも気になってしまう。確認したところ、郊外区間などにこの方式が多く使わる一方で、カーブや鉄橋、行き違い可能な駅などではシンプルカテナリ式となっていた。
もし弥彦線で直接ちょう架式の区間を見たい、撮りたいという場合には、燕駅〜吉田駅間といった郊外に出て、田園が広がる区間を訪れた方が賢明かも知れない。
【弥彦線の秘密⑧】燕駅から走った新潟交通電車線の跡をたどる
新潟県内には東三条駅から旧越後長沢駅間のように、かつて路線があったものの現在は廃線になっているところが多い。
弥彦線の燕駅は地元、燕市の表玄関にあたる駅。かつては他社線が乗り入れ、接続駅として賑わいを見せていた。他社線とは新潟交通電車線のこと(開業当時は新潟電鉄線)。新潟交通電車線は燕駅と白山前駅36.1kmを結んだ私鉄路線。白山前駅とは新潟市内にあった駅で、越後線の白山駅近くに設けられていた。
燕市と新潟市内を直接に結んだ新潟交通電車線。燕市民にとって全通当初(1933年)は便利な路線だったと思われる。ところが、1960年代以降からは電車や駅の老朽化、新潟市内の路線が一部、道路上を走る軌道線で騒音が問題視されるなど、様々な問題が重なり、客離れが著しかった。燕駅近郊区間は1993年7月いっぱいまで、残った区間も1999年で4月4日に廃止された。
この新潟交通電車線、燕駅近くにも路線の足跡が残されている。地図では、燕駅の西側に元鉄道路線らしいゆるやかにカーブする道が確認できた。
気になったので、燕駅の周辺を少し歩いてみた。すると。
弥彦線の線路から、徐々に離れて右に大きくカーブする道。車が通るこの道こそ、新潟交通電車線が走った跡そのものだった。カーブの造りが、車道として整備されたカーブ道とは異なる印象。民家もこのカーブに沿うように建っているものの、道側に家の入口がないというような光景も見られた。
カーブが終わる付近からは、一部が遊歩道、そして公園となっていた。民家が途切れ、田園が広がるあたりからは、歩道が一直線に先に延びていた。
新潟交通電車線は沿線住民から「電鉄」と呼ばれ親しまれたとされる。走っていた当時に訪れ、乗ってみたかったものである。