【別所線で発見⑪】和装の制服に袴姿の観光駅長が出迎える
ひと駅前の八木沢駅から乗車。終点の別所温泉駅を目指す。ここから電車は坂を上り始める。平坦だった塩田平が終わり、傾斜地を登りはじめた。
八木沢駅からの登り坂は40パーミル。1000mの間に40m上がるという急坂だ。かつて使われた旧型車両はこの坂でスピードが出せず、ゆっくりゆっくりと登っていったそうだ。
そして別所温泉駅へ電車が到着した。ここでうれしいお出迎えがある。和装の制服に袴を着た女性の観光駅長が乗客を出迎える。
和装制服に袴といえば……。そう! 八木沢駅の駅名標にあった「八木沢まい」ではないか。鉄道むすめシリーズのホームページによると、八木沢まいの肩書きは別所温泉観光協会・別所温泉駅駅長なのだそう。「家は地元の温泉旅館」で、「『まるまど』からの景色が大好き」とある……。なるほどねえ。
鉄道むすめというキャラクターと、現実の世界が、この駅でリンクしていたわけだ。現実に存在する駅長さんは、2人の観光駅長さんが交代で勤務、日中(窓口業務は9〜17時)には乗客の送り迎えをしているので、上田電鉄を乗車した時の、お楽しみとしていただきたい。
さて肝心の別所温泉だが。別所温泉駅から別所温泉の中心へは徒歩で10分ほどのところにある。ただし、温泉へはやや登り道が続く。
このような観光地の駅に訪れ、常に感じることは駅から歩こうという人が非常に少ないこと。筆者が訪れたのは真夏ということもあったのだが、徒歩10分という距離を歩く人はまれ。旅館の送迎バスに乗り込む姿が多く見られた。
クルマで目的地に向かうことは確かに楽ではある(筆者ももちろんだ)。とはいえ、見落としてしまうことも多いように感じる。歩いてこそ、電車に乗ってこそ発見できることが多い。それこそ、これが旅の醍醐味。見落としてしまうということは、非常に惜しいように思えるのだが、いかがだろう。
【ギャラリー】