乗り物
クルマ
2019/9/20 18:27

「プロパイロット 2.0」の実力は? 日産新型スカイラインを全方位こってりインプレ!

さかのぼれば初代のデビューは実に1957年(昭和32年)という日産伝統の銘柄、スカイラインが大幅にアップデートされました。その中身は13代目(!)のビッグマイナーチェンジと呼べるものですが、注目はなんといっても自動運転時代を予感させる先進的な運転支援システム、「プロパイロット 2.0」が搭載されたことでしょう。

 

【今回紹介するクルマ】

日産/スカイライン
※試乗車:GTタイプSP(ハイブリッド)2WD/GTタイプP(ガソリン)

価格:427万4640円~604万8000円(税込)※消費税8%

↑「Vモーショングリル」を採用したフロントマスクは、インフィニティQ50とは異なるスカイラインのオリジナルデザインになりました

 

【フォトギャラリー(GetNavi webサイトにてご覧になれます)】

 

外観は日本市場向けのオリジナルデザインに! よりスカイラインらしさがアップ

“スカイライン”という名前は、特にベテランのクルマ好きには特別な重みがあるに違いありません。それは全盛期の歴代モデルに「ハコスカ」、「ケンメリ」といった愛称が付けられ親しまれたことからも明らか。スカイラインの歴史をいちいち振り返ると1冊の本になってしまうのでここでは割愛しますが、その時期に完成した「スポーティなハコ(セダン)」というキャラクターは基本的に現在まで受け継がれています。

 

そこにプレミアム性をプラスしたい、という作り手の意図が明確に反映されるようになったのは、スカイラインが日産の海外向けプレミアムブランドであるインフィニティでも売られるようになったあたりから。13代目(以下、便宜上先代とします)では、ついにインフィニティのエンブレムがそのまま装着され販売されるに至ります。とはいえ、日本におけるスカイラインは日産のイメージリーダー的存在であり、なおかつこの名前に特別な思い入れを持つマニア層も根強かっただけに、インフィニティとの“ダブルネーム”状態に対する評価(と実際の効果)はあまり芳しいものではありませんでした。

そこで今回の新型では、“日産の”スカイラインに回帰。エクステリアは、日本仕様オリジナルとなりました。フロントマスクには、近年の日産デザインに共通する「Vモーショングリル」を採用。ボディサイズは全長(マイナス5㎜)を除き変わっていませんが、先代よりスポーティな面持ちになりました。また、断絶期間もありましたがテールライトも4代目(ケンメリ)から受け継がれてきた丸目4灯式を採用。スカイラインとしてわかりやすいリアビューに仕上げられています。

↑リアコンビランプは、歴代スカイラインのアイコンでもあった丸目4灯のデザインを採用しています。グレードは高性能な400Rを含めるとガソリンが4種でハイブリッドは3種

 

なお、後述しますがパワーユニットも新型では変更されました。ハイブリッドとガソリンの2本立て、という構成こそ変わりませんが後者についてはメルセデス・ベンツを擁するダイムラーから供給を受けていた2L4気筒ターボから、日産製3L V6ツインターボにスイッチ。304PSと405PSという2種類のスペックがグレードに応じて使い分けられています。

↑ハイブリッド、ガソリンを問わずホイールは上級グレードの「タイプSP」が19インチを装着します。タイヤは全車ランフラット

平穏そのものなハンズオフ走行! 「2.0」の完成度はハイレベル

とはいえ、この新型スカイラインにおける最大のトピックは、やはり日産車で初めてプロパイロット 2.0がハイブリッド仕様に搭載されたことでしょう。2.0のゆえんは、高速道路の複数車線で手厚い運転支援が受けられるようになったことに求められます。その代表格がハンズオフ機能。3D高精度地図データが整備された高速道路に限られるなど、使用するには一定条件のクリアが必須ですがステアリングから手を離したままの走行が可能になりました。

 

また、2.0ではカーブの大きさに応じた自動減速や標識の速度表示に対応した車速の自動調整、停止後約30秒以内なら自動で追従走行を再開する機能(従来型プロパイロットは3秒)が追加。さらにハンズオフとの併用はできませんが、ステアリングによる車線変更支援(自動操舵)まで搭載されています。つまり、従来のプロパイロットを含めたこれまでのアクティブクルーズコントロールと比較すると、2.0には格段に自動運転に近い能力が与えられているわけです。

↑ハンズオフでの走行は安楽そのもの。ステアリングから手を離していることへの不安は一切感じませんでした

 

もちろん、現状だと決して自動運転とはいえません。高速道路でも対面通行区間や分岐・合流が多い地点、トンネル、工事区間などの走行時やワイパーの作動状態によってはハンズオフが機能しませんし、制限速度が70㎞/h未満の場所や低速走行時(60㎞/h未満)は車線変更支援も得られません。しかし、走行中の“手放し”が許される機能が市販車に初搭載されたという1点だけでも大きな進歩であることは間違いないでしょう。

 

では、実際に使ってみるとどうなのでしょう? 今回は短時間ながら高速道路で試乗する機会が設けられていたのですが、その出来映えは新時代を予感させるに十分なものでした。事前にナビゲーションで目的地設定をしておけば、ステアリング右にあるスイッチ操作だけでハンズオフから車線変更支援まで体感可能です。当然といえば当然ですが、ハンズオフ走行時でもクルマは車線内の中央を正確にキープ。フラつくことはもちろん、路面状況に応じて行なわれているはずの細かな舵角修正すら意識させません。今回は80㎞/hに速度制限されたルートだっただけに、遅いクルマを追い越す際に使用する車線変更支援を試す機会はほとんどありませんでしたが操舵制御も穏やか。これならハンズオフ併用でも問題ないのでは? と思わせるほど自然なアシストを披露してくれました。

↑ハンズオフ走行が可能な場合、メーター中央のディスプレイはステアリングなどのアイコンがブルーで表示。ステアリングを握る必がある場合はこれがグリーンに変化します

 

唯一、気になった点を挙げるなら標識の制限速度表示に忠実過ぎることでしょうか。これも当然の話ではあるのですが、たとえば制限速度が極端に変わる状況だと律儀に反応して急激に速度を落とすので、何が起きたかとハッとさせられる場面がありました。また、なまじ完成度が高いだけに遵法精神の高い速度設定にもどかしさを感じる場面もあります。もちろん、作り手の立場としてはこれもまた当然の措置ですが、ユーザーの立場で考えるともう少し融通が効く設定の方がありがたみが実感しやすいでしょう。

 

ちなみに、プロパイロット2.0の作動時は車内の赤外線カメラがドライバーの顔の向き、目の開閉状態などを常時チェック。よそ見の時間が長いと警告を発するなど、安全対策は入念に施されているので動画サイトで話題になった某アメリカ車のような問題は起こり得ません。

↑インパネ中央には赤外線カメラの「ドライバーモニター」を装備。常時、ドライバーの顔の向きや目の動きなどがチェックされています

装備面ではコネクテッド機能が最新レベルに

さて、プロパイロット2.0以外の機能ですが室内回りはそれの導入に合わせてヘッドアップディスプレイが採用されたりディスプレイがリデザインされた程度。基本的な仕立ては先代と大きくは変わりません。とはいえ、最新モデルらしくコネクテッド機能は充実。全車標準となる「ニッサン・コネクト」ナビゲーションシステムはOTA自動地図更新やスマホと連携した目的地案内などを採用。さらに「ドコモ・イン・カー・コネクト」に加入すれば車内をWi-Fi環境にすることもできます。データ通信量に制限はなく、接続可能な機器の台数は最大7台となっているので使い勝手は十二分といえるでしょう。

↑インパネ回りの仕立ては、基本的に先代モデルと変わりません。ただし、メーターについてはプロパイロット2.0の採用に合わせてデザインが変更。ヘッドアップディスプレイも採用されました

 

↑ミドル級のセダン、ということで前後席の空間は必要にして十分な広さです。シート表皮は中堅グレード以上で本革が標準となります

 

↑ハイブリッド車の荷室容量は385L

 

↑ガソリン車の荷室容量は510L。リアセンターアームレストに通じるトランクスルーも装備されます

ガソリンは軽快で、ハイブリッドは重厚。走りのキャラはパワートレイン次第

新型では、走りに関わる部分も着実に進化しています。前述の通り、ガソリン仕様のエンジンは晴れて日産オリジナルの3L V6ツインターボにスイッチ。このユニットは標準的な304PS仕様に加え、新グレードの「400R」用ではスカイライン史上最強となる405PSを発揮します。また、シャシー回りではスカイラインへの搭載が世界初となった完全バイワイヤーステアリングのDAS(ダイレクトアダプティブステアリング)が熟成されたほか、ガソリンの上級グレードでは電子制御ダンパーのインテリジェントダイナミックサスペンションも新採用されています。

↑日本市場では、スカイラインが初搭載となる3LのV6ツインターボ。グレードに応じて2つのスペックを使い分けますが高効率な点も特徴のひとつ

 

↑ハイブリッドのシステム自体は基本的に従来通り。3.5LのV6ガソリンエンジン+電気モーターという組み合わせになります

 

今回は304PSユニットを搭載した中堅グレードのガソリン仕様とハイブリッドに試乗しましたが、いずれもDASの操舵感や制御が従来よりナチュラルになっていることが確認。また、電制ダンパーこそ装着していませんでしたがガソリン仕様は軽快といえる身のこなしも魅力のひとつ。プレミアムセダンだと思うと質感の面で多少気になる部分もありましたが、スポーティという意味ではスカイラインらしい仕上がりといえます。

↑ガソリンの試乗車は304PS仕様の中堅グレードでしたが、適度に軽快なドライブフィールが好印象。動力性能にも不足はありません

 

一方、ハイブリッドは重厚なライド感や静粛性の高さでプレミアム性が上手に演出されていましたが、スポーツテイストという意味ではガソリン仕様が上回るという印象。もはや輸入セダンと同等となる価格設定を思うと、どの仕様でもプレミアム性とスポーツ性を両立させて欲しいところですが、とりあえずマニア的にはハードとソフトの両面でスカイラインらしさが戻ってきたことを歓迎すべきなのでしょう。

↑ハイブリッドの走りは、良くも悪くも重厚感が印象的です。静粛性が高いのでクルージングは快適ですが、コーナーでは重さを感じることもありました

 

SPEC【GTタイプSP(ハイブリッド)2WD】●全長×全幅×全高:4810×1820×1440㎜●車両重量:1840㎏●パワーユニット:3498㏄/V型6気筒DOHC+電気モーター●最高出力:306[68]PS/6800rpm●最大トルク:350[290]N•m/5000rpm●JC08モード燃費:14.4㎞/L
※[ ]内は電気モーター

SPEC【GTタイプP(ガソリン)】●全長×全幅×全高:4810×1820×1440㎜●車両重量:1710㎏●パワーユニット:2997㏄/V型6気筒DOHCツインターボ●最高出力:304PS/6400rpm●最大トルク:400N•m/1600~5200rpm●WLTCモード燃費:10.0㎞/L

 

撮影/宮越孝政

 

【フォトギャラリー(GetNavi webサイトにてご覧になれます)】