デッドスペースを生まない荷室の使い勝手はトップレベルの出来映え
一方、ユーティリティに関しては緻密なパッケージングの恩恵で輸入車、国産車を問わずトップクラスといえる水準にあります。その筆頭に挙げられるのが、多彩に使えるラゲッジスペース。全高が1.8~1.9m級となる国産ミニバンと比較すれば高さ方向はさほどでもありませんが、床面の広さは掛け値なし。3列目シート使用時でも、容量は300L(VDA方式。ドイツ自動車工業会の計測法)が確保。3列目を畳むとそれは711L(同上)まで拡大します。この段階でも本格派のステーションワゴンを大幅に上回る広さですが、2列目まで完全に畳んだ際の容量は実に2297L(同上)。2、3列目の5人分のシートはそれぞれが独立して畳める上、すべて床下に収まるので荷室形状はスクエア。デッドスペースはありません。
また、助手席シートバックを水平近くまで畳めるので、実質的な荷室長は最大で2.95mにもなります。シャランのカタログにはサーフボードを収めた写真が載せられていますが、そんな大ぶりな遊び道具を運ぶ使い方も容易なわけです。ちなみに、各シートを折り畳む操作はシンプルそのもの。昔のドイツ車はこうした操作に細々とした“ルール”があったものですが、いまやユーザーへの気配りはそれを得意としてきた国産勢に勝るとも劣らない水準にあります。
ミニバンとしての広さはサイズ相応。安全装備は最新モデルと同等レベル
ミニバン本来の、「ピープルムーバー」としての機能も申し分ありません。荷室同様、車高が極端には高くないので天地方向の広さは見ためからイメージされる通り。3列目シートへのアクセス性もあまり褒められたものではありませんが、絶対的な空間はフル7シーターと呼んで差し支えない水準にあります。事実、身長178cmで典型的日本人体型の筆者でも、2列目の前後スライド機構を調整すればストレスなく3列目に座っていられます。また、その際の2列目も足下の空間は十二分。近年はSUVでも3列シートで多人数乗車が可能なモデルが増えていますが、実質5+2名のそれらとは比較にならない広さが確保されているわけです。また、2列目までの乗降性は背の高い国産ミニバンを凌ぐので同乗者が小さな子どもやお年寄りの場合はむしろシャランの方が使いやすい可能性もあります。
欧州デビューが2010年、ということでインテリアの仕立ては最新のVWと比較すれば若干保守的というか古臭さが感じられる部分も出てきました。とはいえ質感自体はハイレベル。飾り気こそありませんが、装備内容も充実しています。日本仕様のTDIは上級グレードの「ハイライン」ということでスマホと連携できるナビゲーションシステムは標準で備わりますし、運転支援システムも全車速追従機能付きのACC(アダプティブクルーズコントロール)やレーンキープアシストが備わるなど、最新モデルと同等の充実度となっています。