おもしろローカル線の旅54〈特別編〉 〜〜阿佐海岸鉄道(徳島県・高知県)〜〜
四国の東南部、太平洋に沿って阿佐海岸鉄道という鉄道路線が走っている。駅はわずかに3つ。路線の距離は8.5kmと短い。
この小さな鉄道会社がにわかに注目を集めている。世界初の線路を走るバス・DMV(デュアル・モード・ビークル)を導入したからだ。赤緑青と3色揃う新車のお披露目イベントも開かれた。同路線は今、どのように変わっていこうとしているのか。同地域が抱える実情とともに、DMVの未来に迫ってみた。
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【DMV導入へ①】阿佐海岸鉄道とはどのような鉄道なのだろう
DMVの話題に触れる前に、阿佐海岸鉄道(あさかいがんてつどう)の概要を見ておきたい。
路線と距離 | 阿佐海岸鉄道・阿佐東線(あさとうせん)/海部駅(かいふえき)〜甲浦駅(かんのうらえき)8.5km |
開業 | 1992(平成4)年3月26日、海部駅〜甲浦駅間が開業 |
駅数 | 3駅(起終点駅を含む) |
阿佐海岸鉄道の路線は、牟岐線(むぎせん)の牟岐駅(徳島県)と、後免駅(ごめんえき/高知県)を結ぶ国鉄阿佐線の一部区間として計画された。
1970年代に日本鉄道建設公団が建設を始めたものの、1980年の国鉄再建法施行により、工事が凍結されてしまう。すでに大半の工事が完了していたことから、その後に、新たに創設された阿佐海岸鉄道が同区間を引き継いで、阿佐東線を開業させた。
ちなみに高知県側の後免駅〜奈半利駅(なはりえき)間は土佐くろしお鉄道に引き継がれ、同社のごめん・なはり線として開業している。国鉄阿佐線として計画された奈半利駅〜室戸〜甲浦駅の区間は結局、着工されずに鉄道が走らない空白区間となっている。
阿佐海岸鉄道は同線が走る徳島県と高知県、そして地元の海陽町、東洋町などが出資する第三セクター方式の鉄道として運営されている。
所有する車両は2両、ASA-100形とASA-300形の2形式で、現在は自社線のみ往復しているが、今年の3月15日までは、JR牟岐駅まで乗り入れる列車が、朝のみ2往復運転されていた。
路線は高架区間、盛り土区間、トンネルが多く、平行する道路と平面交差する箇所はない。トンネルが途切れる区間では、車窓から太平洋の眺めが楽しめる。