ドライバーにとってはクルマを操る空間。同乗者にとってはくつろぐ空間。ここまでしっかりと区分けされているクルマは、ほかにない。デザインが秀逸に、インテリアは上質に、そして運転支援技術が進化したいまこそ、セダン復権のときが来ました!
セダンの人気が凋落しているといいます。荷物が乗らない、おじさん臭い。セダンを選ばない理由の一例ですが、セダンほど操る楽しみと人が快適に乗れる要素を兼ね備えたクルマは、ほかにはありません。
その理由は、低重心にあります。低重心だからこそ、カーブでも直線でも安定してクルマを操ることができるのです。セダンの流れるようなシルエットにより、走行時の空気抵抗も小さく、風切り音も気にならないほど。その静粛性は、同乗者にとっても快適な空間となります。
また、新型スカイラインに「ハンズオフ運転支援機能」が搭載されたように、先進の技術はセダンから導入されることが多いです。楽しく、快適に、そして安全に乗れるクルマ。いまこそ、セダンの良さを再発見すべきです。
セダンほど多様性をもったクルマは、ほかにない
トヨタ/クラウン
460万6200円〜718万7400円
日本専売モデルでありながら、世界一過酷なテストドライビングコースと言われるドイツ・ニュルブルクリンクサーキットで徹底的に走りを磨かれた最新モデル。トヨタの意気込みが熱く感じられます。力強さを感じるデザインも魅力。
SPEC【RS Advance】●全長×全幅×全高:4910×1800×1455mm●車両重量:1730kg●トランク容量:431ℓ(リアオートエアコンなしの場合)●パワーユニット:1998cc DOHC直列4気筒ガソリンターボエンジン●最高出力:180kW(245PS)●最大トルク:350Nm(35.7kgf・m)●WLTCモード燃費:12.4km/ℓ
【クラウンに見るセダン復権の理由1】先進技術がいち早く搭載される!
いまのトレンドは、安全な運転をサポートする「運転支援技術」と、通信でいつでもつながる「コネクティッド」。各社のセダンにはいち早く導入されています。車線キープのサポートまでしてくれる技術や、緊急時に自動通報してくれるシステムもあります。
【クラウンに見るセダン復権の理由2】流麗なデザインはセダンの特権!
車高が高いSUVが人気ですが、低重心なセダンのデザインは他のタイプにはない魅力。最近ではルーフからトランクにかけて流れるようなシルエットを描くモデルも多い。「セダンってカクカクした凸形のクルマ」の発想は、もう古いです。
【クラウンに見るセダン復権の理由3】すべての席が“プレミアムシート”!
ドライバーやパッセンジャーシートはもちろんですが、リアシートに注目。背もたれと座面の角度が“座ったときに自然な姿勢”になるように工夫されているのがセダンです。ソファにくつろいで座る感覚で腰かけられるのが魅力。
【クラウンに見るセダン復権の理由4】人と荷物がしっかり分けられる!
ミニバンやSUVは天井が高く、いろいろなモノを載せやすい。その反面、車内にいつまでも置きっぱなしの荷物が増えるのも事実。しかも、外から丸見え。居住空間と荷室をしっかり分けられます。それもセダンの魅力。
まだある! セダンならではの魅力
細部まで作り込まれた内装
セダンのインテリアには、各メーカーとも手を抜きません。クラウンのカップホルダーは、使用時のみ存在が明らかになります。ボタンを押すと、ゆっくりとカバーが戻るのもニクイ。
走るオーディオルームとなる!
「クラウン・スーパーライブサウンドシステム」は、合計10個のスピーカーと8チャンネルのオーディオアンプを搭載。まさに“走るオーディオルーム”です。
【Introduction】
これを知れば、アナタは瞬く間にセダン通!セダンのウンチク学
セダンはオヤジっぽいと言われて何年が経つでしょうか。ところがいまや隠れたヒット車でもあり、20代後半のユーザーも多くいるのです。そんなセダンのウンチクをちょっと紹介。
【ウンチク1】セダンの起源は何と“椅子”だった
その昔、クルマの主流といえばエンジンを乗せる箱、人を乗せる箱、荷物を載せる箱の3ボックスで構成される4枚ドアのセダンでした。ちなみにセダンはラテン語で「腰掛ける」という意味のsedoが語源といわれています。写真は17世紀ごろの南イタリアの乗りかごで、日本でいうならば時代劇などでエッホエッホとカゴかきが人を運ぶ「カゴ」と同じでした。
【ウンチク2】世界最高級セダンのお値段は5000万円超え!
洋上のロールスロイス、砂漠のロールスロイス……、●●のロールスロイスというくらいジャンルを超えて最上級品の代名詞となっている英国のロールスロイス。そのサルーンモデル、ファントムは5460万円から。ボディ色やシート生地、インパネの素材などあらゆるパーツは顧客のどんな要望にも応えます。一流ホテル同様、ロールスはノーと言いません。
【ウンチク3】セダンの呼び方、いろいろあります
エンジンルームと居室とトランクルームが分かれたクルマ。これがセダンの定義ですが、その呼び方は世界共通ではありません。サルーン、リムジーネ、クアトロポルテ……。何となくそのお国柄を表す呼び方に感じるのが興味深いところです。
アメリカ | セダン Sedan | 最も親しまれている名称。蒸気機関車でいうD51のような代名詞的存在。SUVに押され気味な感はありますが、安定した人気を誇ります。 |
イギリス | サルーン Saloon | サルーンという響きにときめいたアナタは英国車党? ジャガーのスポーティーサルーン、と言われたらニヤけてしまうはず。 |
ドイツ | リムジーネ Limousine | ドイツらしい音の響き。ヤナセの会長を務めた故・梁瀬次郎の愛車、メルセデス・ベンツ600リムジーネはクルマ好きには有名な1台。 |
フランス | ベルリーヌ Berlione | フランスらしい呼称。そういえば、1960年代にプジョーで車名に使われていたなぁ、と思ったあなたはかなりのフラ車通。 |
イタリア | クアトロポルテ Quattroporte | 4つの扉の意味というまんまセダンやん的なツッコミはさておき、マセラティのフラッグシップモデルにも同様の車名が与えられています。 |
【ウンチク4】やはり長いセダンの歴史。ロングセラーモデルが生まれたのはいつ?
今年で47年
メルセデス・ベンツ/Sクラス (1972〜)
1972年登場のW116型を初代のSクラスとするならば、現行のW222型は6代目となります。お抱えの運転手がいながらもオーナー自らが運転する、オーナードライバーにも人気があります。
今年で44年
BMW/3シリーズ (1975〜)
ミドルセダンのベンチマーク的モデルが3シリーズ。日本ではバブル期に「六本木のカローラ」と揶揄された2代目からが有名かもしれません。初代は1975年に登場し、現行モデルで7代目。
今年で47年
ホンダ/シビック (1972〜)
世界一厳しい環境法とされたアメリカの大気浄化法である「マスキー法」を最初にクリアしたのが初代シビック。現行モデルは10代目です。本気で走りを楽しみたい人向けのタイプRも健在。
今年で43年
ホンダ/アコード (1976〜)
レジェンドの登場までフラッグシップを務めたのがアコード。現行モデルはハイブリッドのみの2グレード展開です。フルモデルチェンジ版の10代目は、2020年初頭に日本導入が決定。
今年で62年
日産/スカイライン (1957〜)
日産自動車で数少ない、デビュー当初の名前を継続するのがスカイライン。1957年の登場から14代を数えます。現行モデルは、ファンにビンビンと刺さる400Rのネーミングも復活しました。
今年で64年
トヨタ/クラウン (1955〜)
日本製セダンの老舗。1955年の登場以来、半世紀以上の歴史を誇ります。現行モデルで15代目。ちなみに、開発担当者は15代目つながりで有田焼の柿右衛門さんに話を聞きにいったという逸話も。
【ウンチク5】「教習車はセダン」の理由とは?
答えは、教習車に求められる要素を満たす条件がセダンに多かったから。日本メーカーならトヨタカローラ アクシオ、マツダ アクセラ(現MAZDA3)、ホンダ グレイスが代表格です。教習車とひと目でわかる教官用の補助サイドミラーやコーナーポールが付く代わりに、フロントタイヤ前の空力パーツが付いていない(段差で擦ってしまうため)、据え切りが多いため、パワステの機能を一部カットしているという相違点があります。
【ウンチク6】新車価格で300万円切りの「リムジン」があった!
コロナというと(いまや知っている人は少ないけれど)、トヨタで言うカローラのひとつ上のモデル。そのコロナの販売店であるトヨペット店で、累計販売台数1000万台を記念して限定販売されたメーカー純正の「リムジン」仕様。その名もスーパールーミーです。いまやスーパーカーを見るよりもレア度が高い1台。クラウンで作らなかったところがミソ?
【ウンチク7】ジムニーやハスラーだけじゃない! スズキにも「セダン」があった
軽自動車の雄、スズキ。実は同社もセダンをかつて作っていたのです。しかも堂々たる3ナンバーサイズのセダンを。それが2015年まで生産された「キザシ」です。「エスクード」ゆずりの2.4ℓエンジンを搭載するなど、ゆとりある動力性能とパワーシートなどの豪華装備も用意されていました。警察の捜査車両としても活躍し、別の意味でも存在感があります。
文/海野大介、上岡 篤(本誌) 写真/熊谷義久
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