10月24日からスタートした「東京モーターショー2019」の会期も終盤です。今年は東京ビッグサイトを中心に会場を分散。会場と会場を結ぶ同線には無料のシャトルバスが使われ、お台場周辺が東京モーターショー(TMS)一色に。シャトルバスの使い勝手には課題点もあったなど、ショー以外の部分も注目されました。GetNavi Web編集部も会場へと足を運びましたので、注目すべきモデルたちを前編/後編の2回にわたりレポートします。
【おさらい】会場を分散させて開催する新たなる東京モーターショー2019
東京モーターショーはフランクフルト、パリサロン、ジュネーブ、北米と並ぶ“世界5大モーターショー”として知られ、2年に一度のスケジュールで開催。近年では新興国の発展により、以前のようなプレゼンスはないともいわれていますが、その歴史は古く1954年へと遡り、日本のモータリゼーションの発展とともに規模を拡大しながら進化を遂げてきました。
長い歴史の中で開催会場を晴海、幕張メッセ、現在の東京ビッグサイトへと移し、第46回となる今回は東京ビッグサイトを中心に、青海、MEGA WEB、シンボルプロムナード公園、TFTビル駐車場へと分散することで、お台場周辺が東京モーターショーを楽しむためのアミューズメントパークとなっています。
今回のイベントはTMSの新たな時代への挑戦となり、そのスタイルは旧態依然とした“新型モデル発表の場所“からの脱却を図り、「自動車産業を支える技術力の展示」と、それに伴う「未来への想像」を感じさせるものへと変更されていました。
今回のイベントで感じたことは、自動車メーカーが単独で造り出す技術ではなく、通信、IOT、光学技術、電子機器など未来のクルマを構築するメーカーが技術力を集結し、同じ方向を向いて自動車産業を発展させようとしている”チャンレンジスピリット”。
自動運転、安全システム、自動車を取り巻く交通情報など複雑な技術が相互を支援し、新たな世界を作り出そうとしている姿に日本の自動車産業の明るい未来を再認識できたことは、いち自動車ファンとして大きな期待を感じずにはいられません。
さぁ、小難しい話はここで終わり。広大な展示エリアへと足を向け、G編集部が注目したモデルを振り返っていきましょう。
「待たせたね、こいつが未来だ」と主張する日産ブース
日産ブースで目を引いた2つのモデル。最初はそのまま市販車に…と思わせるほどの完成度を持つ「ARIYA CONCEPT(アリア コンセプト)」。このモデルは同社が誇る、シームレスな移動体験を提供する「ニッサン インテリジェント モビリティ」を象徴する新しい電動クロスオーバーSUVです。堂々とした大型ボディにはエッジの効いたデザインを採用し、迫力と美しさに近未来を予感させます。
最先端のテクノロジーとしては、運転支援システムの「プロパイロット2.0」や「ドア ツー ドア ナビゲーション」、「スマート ルート プランナー」などをアピール。EVに次世代のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)とコネクテッドカー技術を採用することで、これまでにない新しいドライブ体験を提供。現代のライフスタイルにシームレスに溶け込む、日産の新しいデザインフィロソフィーを発信しています。
そして2台目は「IMk」と命名された、電動モーターを搭載した軽自動車規格のコンセプトモデル。このモデルは2021年に発売されると予想されている現実的なモデルです。シティコミューターとしてのサイズ感と経済性は、新たな時代の国民車になる可能性を秘めています。
夢と現実を同時に展示。新型「FIT」は5バリエーションを用意
毎回、話題を提供してくれるホンダのブースでは、2020年の販売が予定されているAIを採用した都市型コミューターの「e」や、北米で先行発売されている「アコード」を展示。そのなかで、最も大きな展示スペースを確保していたのが新型「FIT」です。そのラインナップにはライフスタイルに合わせてチョイスできる「HOME」、「CROSSTAR」、「LUXE」、「NESS」、「BASIC」の5スタイルを提案。
そのなかでも編集部が注目したのが標準モデルよりも30㎜ほど車高をアップさせたCROSSSTAR。SUVを思わせるデザインで個性を主張し、街でもアウトドアシーンでも似合う車種となっており、依然続くSUVブームの堅調さを感じさせてくれました。なお、同社の先進安全運転装備ホンダセンシングは、すべてのグレードに搭載。FITでホンダブースは、かなり盛り上がっていました。
マツダ初の量産EVモデル「MX-30」に胸キュン
今回のTMSの目玉のひとつがマツダ初となる量産EV「MX-30」です。クロスオーバーSUVスタイルはヨーロピアンなモダンさとエレガントな美しさを兼ね備え、RX-8譲りのフリースタイルドア(観音開きドア)を採用。躍動感と存在感のあるスタイルは新たな時代のマツダを感じさせてくれる仕上がりを持っています。内装にはマツダの起源となるコルク製造会社へのオマージュを込め、コルク材を使用していますよ。
同車のトピックはEVの根幹をなす「s-SKYACTIVE」と呼ばれる新開発の電動パワートレインを搭載している点でしょう。さらには、走行距離の短さを補うため、マツダ伝統のロータリーエンジンを発電機として使用するレンジエクテンダーモデルの開発も検討しているといいます。次世代を担うEVモデルとして誕生したMX-30ですが、近未来のEVモデルにロータリーエンジンの復活が、大きなアドバンテージになることは嬉しいサプライズ。
大人のスポーツワゴン新型「レヴォーグ」のアンベール!
スバルのスポーツワゴンとして不動人気を誇る「レヴォーグ」に、新型モデルが登場するとの情報が錯綜。そして、今回のTMSにて遂に世界に先駆けてアンベールが行われることになりました。
ステージ上に鎮座するレヴォーグのプロトタイプは、スバルが提唱するグランドツーリングの意志を継承し、シャープさと美しさを高次元で融合させています。決して奇をてらったデザインではないですが、フロントフード上のエアバルジや5角形のフェンダーアーチ、コの字型にデザインされたコンビネーションランプ、幅が狭く極端に切れ上がったサイドウインドウエリアなど見る者に斬新な印象を与えるとともに躍動感に溢れたエッジの効いたラインで構成されています。
パワートレインには第4世代へと進化を遂げた新開発の1.8L水平対向ターボエンジン(直噴ターボ)を、スバル・グローバル・プラットホーム×フルインナーフレームに搭載。先進安全システムには新世代のアイサイトが採用され、より高度な運転支援と安全運転を約束します。ちなみに、この新型レヴォーグは2020年の後半から販売が予定されています。
三菱自動車の“本気”は近未来への挑戦!
未来へのチャレンジとして出展された「MI-TECH CONCEPT」は、未来を描く映画に登場しそうなゴリゴリのSUVザインが与えられていました。その内容はスタイルに勝るとも劣らないもので、ガソリンだけでなく軽油や灯油、アルコール燃料にも対応するガスタービンエンジンを搭載。クリーンな排出ガスを誇り、自然環境にも優しいものとなります。
また、前輪後輪に2基のモーターを備える「デュアルモーターAYC」をそれぞれに採用し、車両運動統合制御システム「S-AWD」で走りをコントロール。「光と風を感じながら大地を駆け抜ける電動SUV」というマイテックコンセプトを具現化した三菱の“本気”を感じさせるコンセプトモデルでした。
そして、三菱自動車のブースで注目を集めていた「K-WAGON CONCEPT」は、新型スーパーハイト軽ワゴンとしてのコンセプトではあるものの、その完成度は市販化への秒読み段階であることが理解できました。同モデルは「ekスペース カスタム」として市販化されることが濃厚と噂され、人気を博しているekクロスの兄弟モデルになることは間違いない。
また、編集部的に気なったモデルが「エンゲルバーグ」。2019年のジュネーブショーに出展されたコンセプトモデルですが、今や三菱のアイデンティティである“D5顔“が与えられ、パワーユニットには2.4Lのガソリンエンジンを搭載。ツインモーター4WDのPHV(プラグ イン ハイブリッド)を組み合わせています。この個性的なクロスオーバーSUVは次期アウトランダーとして発売されることが濃厚です。
待ちに待った“次期ハスラー”がTMSでお披露目!
スズキ自動車のブースではスイッチを押すことでクーペとワゴンにスタイルを変えるトランスフォーマーのようなコンセプトカー「ワクスポ」を展示。同車はパーソナルコンパクトPHEV。インテリアはワゴン時木目調のシンプルなデザイン、クーペ時はインパネ全体がディスプレイになり、多くの車両情報が表示されます。
ライフスタイルに合わせて、モノやサービスを取捨選択できるようになっている現在。同社は小さなクルマを時代の変化に合わせて、使いやすさ、うれしさ、楽しさ、ワクワクのある毎日を提供しようと車両開発しています。
そして、フルモデルチェンジが施された「ハスラー」が公開されました。基本コンセプトは受け継がれているものの、その内容は全て刷新されているといいます。また、TMSにはライフスタイルに合わせたアウトドアスタイルや女性ユーザーを意識したポップな装飾を施したモデルも同時に展示。“遊べる軽”の進化モデルの登場に大きく期待したいです。写真はアウトドアスタイル。
日本の自動車文化の集大成に狂喜乱舞するべし!
ここまでは前編として、TMSに登場した日本を代表する6メーカーに絞ってお届けしましたが、その内容はいかがだったでしょうか? 未来へのアプローチとして自動車メーカーは努力と研究を積み重ねていることがお分かりいただけたと思います。化石燃料からハイブリッド、そしてEVへと変革を求められる時代の狭間で進化を遂げるクルマたち。その進化の過程を楽しむのも自動車ファンならでは醍醐味でもあります。次はTMSレポートの後編として、日本、そして輸入車メーカーにスポットを当ててお届けします。ご期待あれ! ビュンビュビューン!
撮影/中田悟、野田楊枝郎
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