【注目ポイント⑥】交差点の安全な通過方法「多段階停止」を経験
座学で学んだ後に、参加者は交差点の安全な走り方である「多段階停止」の実地講習を受ける。クルマが通る左右に人工的な壁を立て、停止位置の横にカメラを据え付けた。
一時停止線で、ぴたりと停まるというのは、意外に難しい。線からかなり前に出てしまったり、まだ線までかなりの距離があったり。クルマのフロント、下部分はドライバーからは完全な死角となる。またクルマによってフロント部分の長さが異なる。停止線がどのぐらいに来るのか読みづらい。そこでこの講習では、ビデオカメラで写した映像を、タブレット端末で参加者に見せて、実際に止まった時に愛車の前面がどのぐらいの位置まで来ているのか、その感覚をつかんでもらった。
一時停車した後は、じわじわとクルマを前に進めて、他の通行者から見える位置に停まる。簡単なようでいて、意外に難しい。細かなアクセルワークとブレーキが必要になる。
参加者の片山佳子さんは、多段階停止に関して、「一時停止する大切さということが、改めて頭の中で整理でき、さらに意識付けができて有意義だったように思います」と話すのだった。
【注目ポイント⑦】思い切りマイカーのブレーキペダルを踏む!
走行講習の最後は「急制動体験」だ。危険を察知した時にいかに、安全に素早くクルマを止めることができるか、非常に大切な操作となる。ふだんは急ブレーキなど、かけることはないだろう。この講習を受ければ、自分のクルマはどのぐらいの距離で停めることができるのか、また、どのように停まるのか知ることができる。
まずは走行に入る前に、エンジンをかけずに、急ブレーキをかける練習を繰り返す。アクセルペダルに置いた足を、ブレーキに載せて、思いっきり踏み込む。これを数回、繰り返し、急ブレーキ操作の擬似体験を行う。
善養寺チーフインストラクターは急ブレーキを「ペダルをけっとばすという意識で」と解説した。
急ブレーキをかける路面の左右には、スピードを測るセンサーが設置された。時速40kmで走ってきたドライバーは、目の前の信号機が赤になったと同時にブレーキペダルを思いっきり踏み込む。路面には水をたっぷり巻かれていた。タイヤの一部分のみが摩耗してしまうことを防ぐためだ。
時速40kmは近くで見ていると意外に速く感じた。前面の信号機が赤になるのに合わせてブレーキをかける。記録しているスタッフが走行時のスピードと、停まるまでにかかった距離を読み上げる。大半の人が10〜15mぐらいでストップする。
現在のクルマの多くがABS(アンチロックブレーキシステム)という、急ブレーキをかけた時に、タイヤがロックすることを防ぐ装置が付けられている。そのため、急ブレーキといっても、それほど不思議な止まり方はしないが、やや古めの一部のクルマのみ、キーッという音を立てて停まる姿が目を引いた。
参加者の1人、渡辺厚さん(60歳)は、今もブレーキパッドを自分で取り換えてしまうぐらいの大のクルマ好き。そうした渡辺さん、「この急ブレーキ操作を楽しみに来ました」と話す。普通の道で急ブレーキをかけると、後続のクルマに追突される可能性がある。この講習会ならば“安心して”急ブレーキをかけることができる。体験した後に渡辺さんは「思いっきり踏むことができておもしろかった。逆に4輪車でのスラローム走行というのは難しいと感じましたね。バイクで行うスラロームならば得意なのですが」と話すのだった。
一方、久富文隆さんは「急ブレーキは難しかったなぁ。足が引っかかってしまって」とやや落ち込み気味だった。外からは大きな失敗に見えなかったが、本人は気にしている様子だった。「これまで慣れで運転してきたと感じました。やはり運転が上手になるために、いろいろなことを練習したほうが良い、と感じましたね」と語る。
感想は参加者によりまちまちだったが、自分が乗る愛車のブレーキがどれほど効くものなのか、知っておくことは、いざという時に非常に役立つだろうと感じた。