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2019/11/9 17:30

災害により寸断された「ローカル線」−−不通となっている19路線の現状をチェックする【前編】

⑦【関東の不通区間1】箱根登山鉄道の不通で観光へ大きな影響も

ここからは関東地方の不通区間を見ていこう。まずは復旧の目処が立っていない路線から。

 

神奈川県の小田原駅と箱根町の強羅駅の間を走る箱根登山鉄道。小田急ロマンスカーが乗り入れる小田原駅〜箱根湯本駅間と、急勾配が続く箱根湯本駅〜強羅駅間に分けられ、走る電車や運行スタイルも異なる。不通となっているのは箱根湯本駅〜強羅駅間のいわば“山岳区間”だ。

 

◆箱根登山鉄道 鉄道線:台風19号(10月12日)の被害

不通区間箱根湯本駅〜強羅駅間8.9km
被害状況少なくとも20か所で橋脚の流失など
復旧見込み未定

 

箱根登山鉄道が走る箱根町。台風19号が上陸した10月12日の夜までの24時間の降水量が942.5mmを記録した(気象庁の10月12日、1日の降水量の記録では922.5mm)。これまでの最多降水量は高知県魚梁瀬で記録された851.5mm(2011年7月19日)で、この記録を大幅に更新してしまったのである。ちなみに箱根町の10月1か月の平均降水量が334.3mm。1か月に降る量の3倍にも及ぶ雨が1日で降ったのだから唖然とさせられる。

 

↑写真は小涌谷駅(こわきだにえき)の近く、国道1号が通る小涌谷踏切付近で撮影したもの。国道および線路上を濁流が流れる様子がテレビで映され驚かされた。同写真の登り坂もガレキ等で埋まり、状況はかなり深刻に思われた

 

険しい箱根の山間部を走る箱根登山鉄道は深刻な打撃を受けた。20か所におよぶ橋脚などが流された。これら橋の復旧、流出した法面(のりめん)の補強などの工事が必要となり、少なくとも年内の復旧は難しいとされる。

 

同路線、実は長期間、不通となったのは、これがはじめてではない。1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災でも大きな被害を受けた。全線が復旧したのは翌年の12月28日と1年以上の月日がかかっている。この時は名所となっている早川橋梁が比較的、軽微な損傷だったことが幸いし、1年ちょっとで復旧となった。日本を代表する登山鉄道だけに、何とか復活して欲しい。

 

ちなみに箱根湯本駅までの小田急ロマンスカーは平常通りに動いている。また登山鉄道とほぼ平行に通る国道1号を走る路線バスも、平常ダイヤに加え、臨時バスも運行されている。とはいえ、週末の国道1号は混みがちに。渋滞は避けられず、鉄道不通の影響が今後も続くと思われる。

 

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⑧【関東の不通区間2】9月10月と痛手を受けた房総の小湊鐵道

この秋、たびたびの災害に襲われたのが千葉県の房総半島だった。まずは9月9日に、台風15号が襲来、その後に台風19号、さらに10月25日に「千葉県豪雨」の被害を受けた。

 

房総半島の五井駅と上総中野駅(かずさなかのえき)を結ぶ小湊鐵道もこうした災害の影響を受けた。まずは台風15号の被害を受け、9月21日に運転再開を果たした。10月12日の台風19号の被害は比較的、軽微だったため16日に運行再開している。ところが10月25日の千葉県豪雨により、深刻な被害を受けてしまった。何しろ、千葉県豪雨では平年の10月1カ月分の雨量がわずか半日で降ったのだから大変だった。

 

◆小湊鐵道 小湊鉄道線:千葉県豪雨(10月25日)の被害

不通区間上総牛久駅〜上総中野駅間22.7km
被害状況路盤流失など
復旧見込み未定

 

↑春は桜と菜の花が美しい小湊鐵道の沿線。千葉県豪雨以降、上総牛久駅〜上総中野駅間が不通となり、人気の里山トロッコも運休している。写真は上総大久保駅。列車の本数は少なかったが、美しい景色が魅力だっただけに、何とか復活して欲しいと思う

 

度重なる千葉県内の台風と豪雨災害。小湊鐵道は養老川にほぼ沿って路線が敷かれている。路線が通る市原市を流れる養老川、さらに小湊鐵道の上総三又駅近くを流れる新堀川も氾濫に見舞われた。

 

小湊鉄道線で不通となっている上総牛久駅〜上総中野駅間は、小湊鐵道の路線内でも利用者が少なく、列車の本数が減る区間だ。終点の上総中野駅では、大原駅〜上総中野駅間を結ぶ「いすみ鉄道」と接続している。長期にわたる不通は、小湊鐵道だけでなしに、いすみ鉄道の営業にも関わってくる。房総半島を縦断する貴重な路線の復活を祈りたい。

 

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