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2019/11/29 19:30

「電気」は面白い! 日産のテクノロジーツアーに見る最新技術の魅力とは?

電動化の優れた環境性能はこんな分野にも!

こちらは日産が6月に発表した、100%電気稼働のアイスクリーム移動販売のコンセプトカー。ベースはピュアEVの商用車として知られる「e-NV200」で、コンセプトは電気によるエコシステムの実証。アイスクリーム用の設備は、日産の第一世代EVから回収したリチウムイオン電池を再利用したバッテリーで稼働、環境負荷の少ない作りになっています。ちなみにアイスクリームは再生可能な風力と太陽光エネルギーで酪農場を経営する「Mackie’s of Scotland」の品。エコとは直接関係ありませんが、大変美味ではありました。

↑「Sky to Scoop」と名付けられたアイスクリーム移動販売のコンセプトカー。6月に行なわれた英国の「クリーン・エア・デイ」で初披露されました

 

↑このモデルは、再生可能エネルギーで酪農場を経営するアイスクリームメーカー、Mackie’s of Scotlandと提携して誕生しています

 

↑総電力量40kWhの駆動バッテリーに加え、アイスクリーム用設備にはEVから回収した電池を再利用する防水型ポータブル蓄電バッテリーの「ニッサン・エナジー・ローム」を使用します

 

普段、目に見えない地味な部分でも着実に進化

■「e-パワー」は知能化で一層の高効率化を目指す

いまや「リーフ」を筆頭とするピュアEV以上に日産の“顔”となっている「e-パワー」。構造的には内燃機関(エンジン)で発電した電力で電気モーターを駆動するシリーズ式ハイブリッドですが、次世代型では知能化技術を組み合わせることで一層の高効率化が見込めるといいます。具体的には、最新のセンシング技術で路面状況を判定。路面の粗さなどをデータベース化することでエンジンのオン/オフ制御を最適化するほか、3D高精度地図やナビ情報とリンクさせることでエネルギーマネージメントを最適化。その結果、経済性や快適性に一層の磨きがかかるとのこと。

 

■いまやスマホ用のアプリ開発まで守備範囲を拡大

2007年に設立された日産の先進技術開発センターでは、クルマ本体だけではなくスマートフォン用のアプリ開発まで行なわれています。いまやクルマを使うための「電気キー」や遠隔からの操作、といった機能までスマホが担う時代ですから当然といえば当然なのですが、もちろんサードパーティとも連携。日産のクラウドを経由して今後もさまざまな利便性を高めるコネクテッドアプリが登場するとのことです。

 

■見えない部分では地道にスリム化

写真は、おそらくオーナーですら直接目にすることはないであろうシートの中身。地味な存在ではありますが、クルマ用のシートは家庭で使われる“椅子”よりもはるかに多機能で耐久力に優れた高機能部品のひとつです。近年では(コストを含む)経済性に関わる要求案件も厳しくなっているということで、次世代の日産車に採用予定のシートフレーム(写真右側)では設計を一新。軽量化を達成しながらデザイン性や各種機能を追加する拡張性を両立しています。また、シート関連ではスライド機構のみを電動化したベーシックカー向けのロック機構も展示されていました。

 

■画期的な遮音材! その名は「音響メタマテリアル」

自然界にはない人工物質、ということで「メタマテリアル」と名付けられた日産の新しい遮音材料がこちら。周期構造(写真ではハニカム状の部分)と膜で構成された遮音材で、軽量かつ従来品より格段に優れた遮音性を発揮する点が特徴。当日はスピーカーボックスを使って従来品と音響メタマテリアルの遮音性を比較するデモも行なわれましたが、確かにその差は歴然としていました。ポイントは周期構造と膜という組み合わせそのものにあって、特に高価な原材料は必要としないそうなので、商品化(正式採用)への期待も高まります。それにしても、この音響メタマテリアルといいI2VのARアバターといい、日産のセンスは特定分野のマニア好みではあります。

 

確かに「魂」は細部にこそ宿る!

さて、実は今回のテクノロジーツアーで紹介された日産の新技術はこれだけではありませんでした。掲載の都合でそれらは割愛しましたが、中には従来品より格段に見やすいデジタルインナーミラーや消臭効果の高いシート地など、地味ではありますが実際に商品化されればユーザーの役に立ちそうなものが多数。筆者のようなマニア崩れのライターからすると、日々現場でさまざまな開発に携わるエンジニア諸氏に改めて頭が下がる思いでした。クルマの技術、というと走りに関わる派手な部分に目が行きがちですが、モノづくりの凄みとは本来目が届きにくい細部にこそ鮮明に現れるものなのかもしれません。

↑後方画像をミラーに映し出す機能。来年以降に採用される最新バージョンでは夜間などでも画像が一層クリアに進化。こうした画像関連の技術、開発は光学機器メーカーに”丸投げ”なのかと思いきや画像の質、特に「どう見せるか?」という部分の開発には自動車メーカーのエンジニアも深く関わっているのだとか

 

撮影/宮越孝政

 

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