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2019/12/22 18:00

波穏やかな大村湾を眺めて走るローカル線 「JR大村線」10の秘密

【大村線の秘密⑨】途中から付かず離れず走る高架路線は?

大村線は、千綿駅からもしばらくの間、大村湾に沿って列車は走る。海の景色が変らずに素晴らしい。

 

大村湾が迫る区間、進行方向、左手の山側は残念ながら傾斜地が続き、大村線の列車からはあまり良く展望できない。しかし実は、千綿駅から松原駅にかけて、山の上には江ノ串の棚田と呼ばれる見事な棚田が広がる。ここから見下ろす大村線の風景も名物となっている。次回は、棚田を見下ろす場所から、ぜひ大村線の写真を撮りたいと思った。

↑大村線の松原駅から諌早駅までの区間、ほぼ平行して九州新幹線西九州ルートが延びている。同路線の武雄温泉駅〜新鳥栖駅間が、今も運行方法が確定しないのが、気掛かりなところだ

 

松原駅を発車してしばらく、左手に建設中の高架路線が見えてくる。大村線は手前の彼杵駅(そのぎえき)付近から長崎自動車道とほぼ平行して走る。この高速道路が時々、車窓からも見えるが、この高架橋と異なるものだ。

 

次の竹松駅までの間には、大村線の線路に隣接して車両基地らしき箇所も確認できる。ここが建設中の九州新幹線西九州ルートの、武雄温泉駅〜長崎駅間(2022年度暫定開業の予定)で、車窓から見えるのは、嬉野温泉駅〜新大村駅(いずれも仮称)間の高架橋となる。

 

一部には架線柱も建ち、だいぶ工事が進んでいるように見える。一世紀以上前に、大村線は長崎への幹線ルートとして建設された。長崎自動車道も、九州新幹線の西九州ルートも大村線に沿うように造られている。大村線は残念ながら、やや遠回りしているため、幹線の座は別ルートに譲ったが、明治期の人たちにやはり先見の明があったというということなのかも知れない。

 

 

【大村線の秘密⑩】築100年を越え、趣深い大村駅の駅舎

九州新幹線の西九州ルートが見え始めると、大村線の車窓の景色を一転し、沿線には民家が多くなる。そして列車は大村市の市内へ入った。

 

大村市の玄関口が大村駅だ。大村駅の駅舎、古風な造りだ。駅が開業したのは1898(明治31)年1月20日だが、当時の駅舎はシロアリにより被害を受けて解体。現在の駅舎は1918(大正7)年8月に建て替えられたものだ。建て替えたとは言ってもすでに築100年。今もきれいな姿に維持されている。

↑今から約100年前に建てられた駅舎が残る大村駅。白ワク格子の窓や、白地の壁にピンクの支柱、軒先が張り出した姿は、当時の最先端のデザインだったのだろう

 

大村駅は長崎空港が近く、大村駅前から路線バスも運行されるため、乗降客が多く、賑わいをみせている。

 

大村駅から諌早駅までは、あと2駅。次の岩松駅近くで、大村湾の眺めとお別れ、あとは内陸部を走る。進行方向、左手に長崎本線が見えれば、間もなく諌早駅へ到着する。早岐駅から諌早駅まで通して乗車すれば、約1時間。風光明媚な大村線の旅は終わる。

↑2018年8月に橋上駅となった諌早駅。この駅で、長崎本線の特急「かもめ」や、島原鉄道に乗り継ぐことができる(左写真)

 

JR九州の駅は、大村駅のような古い駅が、大事にされる一方で、諌早駅のように、ターミナル駅が新しい橋上駅に変更される例も目立つ。諌早駅の場合は、やはり九州新幹線西九州ルートの開業に合わせての模様替えなのだろう。

 

島原鉄道の駅入口も新しくなり、ちょっとびっくりさせられた。ちなみに同線の諌早駅には10月1日から諌早(雲仙・島原口)と“副駅名”が付けられている。

 

なお大村線を走る列車はほとんどが諌早駅の先、長崎駅まで走る。佐世保駅〜長崎駅間を直通運転する列車が大半で、大村線内のみを走る列車はごくわずかしかない。大村線はローカル線ながら、長崎市と佐世保市という県内の都市間輸送という大切な役割を担っているわけだ。

↑長崎本線旧線の東園駅(ひがしそのえき)〜大草駅間を走るキハ66系。この区間でも大村湾の景色が楽しめる。大村線の列車は大半が長崎駅まで直通運転される。旧線と新線を走る2通りの列車があるが、日中は新線を通る列車が多い

 

ちなみに諌早駅〜長崎駅間を走る長崎本線は喜々津駅〜浦上駅間は2ルートがある。海側を走る路線が長崎本線の旧線(長与支線)で、山側を走る路線は長崎本線の新線とされる。海側を走る路線は大村線と同じく九州鉄道が線路を敷設、新線は1972(昭和47)年と、近年になってから造られたルートだ。

 

大村線から長崎駅へ直通する列車は、両路線を走る列車があるが、もっと車窓を楽しみたい時には旧線を走る列車への乗車がお勧めだ。旧線は非電化で、喜々津駅から大草駅までの2駅間、再び大村湾の眺めが楽しめる。

 

時間に余裕がある時には、ぜひ長崎本線の旧線を走る列車に乗って、大村湾の違う角度から眺めて旅を終わらせたい。

 

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