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2019/12/29 19:30

新線開業、災害、デビューそして、引退ーー2019年の「鉄道」を9つのテーマで徹底的に振り返る

 

【注目!2019年⑦】画期的なスタイルの特急車両が登場した

2019年は新車両の誕生ラッシュの年でもあった。全部を紹介し切れないので、ここでは代表的な車両を紹介しておきたい。まずはそのユニークな姿で、かなりの驚きを持って迎えられた車両から。

 

西武鉄道の特急車両として誕生した001系。長年、レッドアローという愛称で呼ばれてきた西武特急だが、新型001系は「Laview(ラビュー)」と愛称も一新された。

↑西武池袋線の特急「ちちぶ」や「むさし」として運用される001系ラビュー。側面のガラス窓が大きいのが特徴で、秩父路の自然を楽しみながらの旅が楽しめると好評に

 

鉄道車両のデザインといえば、男性デザイナーにより進められるケースが多い。一方、同車両は建築家の妹島和世(せじまかずよ)氏が中心になってデザインワークが進められた。誕生した車両は、これまでに無い独特の先頭車のスタイルとともに、側面の窓の大きさが、画期的だった。西武001系は3月1日から運用開始、すでに6編成目が走り始めている。

 

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【注目!2019年⑧】多くの新車・新列車の中で注目したいのは

鉄道車両は製造されてから30年前後というサイクルで新車両と入れ替わるケースが目立つ。2019年から2020年は、国鉄が分割民営化されJRグループとなって、32年め。JR発足時に導入した新車両も、ちょうど切り替え時期を迎えることもあって、新型車両の導入、そして親しまれてきた車両が引退というケースが目立った。私鉄でも、同様なケースが多く、そして西武鉄道001系のように、鉄道会社のイメージを変えようと新車導入を行う例が見られた。

 

多くの新車・新列車の中から目立った新車の例をピックアップした。

 

◆JR四国2700系(2019年8月6日運用開始)

↑高徳線の特急「うずしお」に運用される2700系気動車。最高時速は130kmでカーブ区間が多い土讃線の特急「南風」や、土佐くろしお鉄道に乗入れる特急「あしずり」などの特急列車に使われている

 

JR四国の路線はカーブ区間が多い。そうした路線に合わせて開発されたのが、特急列車用の2000系気動車だった。2000系はJR四国と鉄道総合技術研究所が共同で開発した車両で、制御付自然振り子式という気動車としては世界初の技術を採用した。この2000系が誕生したのが1987年こと。走り始めてから30年以上となる。そのため2000系の置き換え用として製造されたのが、特急列車用の新車2700系である。

 

JR四国には2700系の前に導入された2600系気動車という新型特急形気動車があった。しかし、土讃線などカーブが連続する路線での、高速運転が難しいという問題が生じた。そこで再設計されたのが、この2700系だった。この夏から導入され、早くも土讃線や、高徳線などの特急列車として活躍している。

 

◆京成電鉄3100形(2019年10月26日運用開始)

↑京成押上線の四ツ木駅〜京成立石駅間を走る新型3100形。京成では初となるオレンジ色の帯が入る。既存の3050形にもオレンジの帯に模様替えした車両が走り初めている

 

3100形は16年ぶりに京成電鉄の導入した新型車両。京成の自社線、京成成田空港線から、都営浅草線、京浜急行空港線を乗入れ用に造られた。そのため車両の長さ18mで乗降用ドアが3扉という都営浅草線および京浜急行線に合わせたサイズで造られている。

 

車両のラインカラーは京成では初のオレンジとした。これは京成本線の列車と間違えないように、誤乗車を防ぐための工夫としている。京成=ブルー&レッドというイメージを一新、ざん新な雰囲気を生み出している。なお、新京成電鉄でも2019年暮れに新型80000形が導入された。京成3100形と新京成80000形は共同設計されたもので、色は異なるものの、同形車両となっている。

 

◆西日本鉄道「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」(2019年3月23日運転開始)

↑西日本鉄道が導入した新観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。主に金・土・日・祝日に走る観光列車で、車内では沿線・筑後地方の食材を使って作る料理が提供される

 

この春に西日本鉄道に新観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」が登場した。路線が通る福岡県筑後地方の食材を生かした「できたての温かく美味しい料理」が車内で提供される。

 

車両は新型車両ではなく、既存の6050形が改造された。側面の窓など、かなり凝った造りに改造され、西鉄の意気込みが伝わるような車両に仕上がっている。同列車は西鉄福岡(天神)駅から太宰府駅への行程が「ブランチの旅」で約40分間、西鉄福岡(天神)駅から大牟田駅への往路が「ランチの旅」で、復路は「ディナーの旅」として、それぞれ約2時間半かけ、食事がゆっくりと楽しめる。

 

◆阿佐海岸鉄道DMV(2019年10月5日公開)

↑10月の公開時にはグリーン、ブルー、レッドの3種類のDMVが公開された。鉄道車両に比べて維持費が格段と安くなる。鉄道路線の維持に苦しんでいる地方路線にとって、今後のDMVの成否が注目されている

 

これまでの鉄道の概念を変えそうな阿佐海岸鉄道の車両がこの秋に公開された。阿佐海岸鉄道は徳島県の海部駅(かいふえき)〜高知県の甲浦駅(かんのうらえき)を結ぶ阿佐東線8.5kmで列車を運行させている。

 

同鉄道では、2020年度を目処に、DMV(デュアルモードビークル)の運用を始める予定だ。DMVとして使われる車両はベースがマイクロバス。線路を走る時には、前輪のゴムタイヤの前に線路走行用の鉄輪が出てくる。路線を走る時は、「鉄道モード」で、終点の駅に到着したら、鉄輪をたたみアクセス路を下りて、一般道を使い目的地へ向かう。

 

既存の鉄道車両と、このDMVは併存して運用することは不可。よって阿佐海岸鉄道を走る車両は2020年度のシステム導入以降はDMVのみとなる。利用者が少ない地方鉄道ならではの特徴を、逆に利用した運行方法。すでに京都鉄道博物館で同DMVが展示されるなど、注目を集めている。

 

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