【あるある迷惑行為⑤】20年前のワースト1位は意外にも?
なかなか興味深い内容となっている日本民営鉄道協会の調査。実は20年前の1999年度から始められた。時代を経て、かなり迷惑行為も代わって来ている。そうした変遷も念のために見ておきたい。1999年度の迷惑行為ワースト1位は……。
なんと「携帯電話の使用」で、25.9%とダントツのトップだった。「着信音がうるさい」「大きな声で、我がもの顔で話しているのが耳障り」という声があがっている。ちょうど20年前といえば、携帯電話の普及率が高まったころだろうか。普及当時は、車内で堂々と携帯電話で話す姿が見かけられたのだろう。
今ではそうした行為を目にすることが、非常に少なくなっている。時代の移り変わりとともに、電車内での携帯電話が迷惑にあたることに、多くの人が気付いたこともあるのだろう。最近では車内でのマナーモードの利用が常識のようになっている。こうしたマナーは、多くの人に理解され、少しずつ浸透していくということなのだろう。
1999年度の調査では、以降、2位「座席の座り方」(8.9%)、3位「荷物の持ち方・置き方」(7.5%)と続く。そして4位に「たばこについて」(6.6%)があげられた。「たばこについて」は「決められた場所以外で喫煙している人がいる」という声があがっている。
喫煙マナーもかなり向上しているように思われる。1999年度に4位にあげられた「たばこについて」も、2008年度以降は10位以下となり、2018年度には12位まで落ちている。愛煙家にとって辛いことながら、これも健康志向の高まりとともに、変わっていった現象なのだろう。
【あるある迷惑行為⑥】こんな表示の時にあなたはどうしますか?
ここからは調査からいったん離れて、身近な問題に目を向けていきたい。
もしかしたら自らが迷惑行為をしているかも知れない、そうした可能性がある例から。まずは下の写真を見ていただきたい。筆者が良く利用する駅の乗車位置を示す表示である。この表示の場合、どのように並べば良いのだろうか。
写真を見る限り、下に3つの三角印があるので、「ここに3列に並んでください」ということなのだろうか。ところが表示自体、大人の肩幅よりやや長いぐらいしかない。よって、大人が3列に並ぼうとすると無理がある。
この案内表示がある駅での並び方を見ていると、最初に並ぶ人の立ち位置は2通りに分かれる。この表示のちょうど中央に並ぶ人と、表示のやや右か左かに並ぶかだ。確認してみると、表示の右か左かにややずれて並ぶ人が多いように感じた。
中央に並んでしまうと、降りる人がいた場合に、邪魔になってしまう。2列ならば開いたドアの左右に分かれることができ、乗り降りがスムーズなように思える。ただし、三角の印は3つなのである。3列に並ぶのが正しいのだろうか。
鉄道会社に尋ねると、この表示は「乗車位置サイン」と呼ばれる表示で、“扉の位置はこのあたりですよ”というおよその目印とのこと。三角印は3つあるが、3列という意味ではなく、これよりも後ろに並んで下さいという意味だそうだ。
こうした明確に並び方が決まっていない場所では、大概の人が、自らのマナーの基準を持ち、その基準に従っているように思う。そしてマナーの基準に反するような並び方は、“感じ悪い”となってしまうようにも思える。迷惑行為までは行かないまでも、このあたり判断が難しいように感じた。
ちなみに、乗降客が多い駅では、タテ3列に並ぶように表示がきっちり仕切られ、さらに降りる人のために中間部を空けて。というように“完璧な”表示にしている例が目立つ。
【あるある迷惑行為⑦】気付かないうちに迷惑をかけてしまう例
ここからは筆者が見聞きして、これは迷惑行為にあたるのではないかと思える例をあげてみたい。ランキングには入らなかったものの、車両構造などの特異性から生じる問題もある。
○普通列車のクロスシートで生じた問題
関東地方では少ないものの、東海・近畿地方などを走る近郊形電車には、クロスシートが多く使われている。一部の電車では対面して腰かける4人掛けボックスシートではなく、ほとんどの座席が進行方向を向いた2人掛けクロスシート(転換クロスシート)が使われている。
ある始発駅での発車時のこと。何人かの利用者が通路側に腰かけた。途中の駅で通勤・通学客が多く乗車してきたが、何席かは窓側が空いたままだった。
普通車特有の足下が狭い構造のため、窓側に座ろうとすると通路側の人をまたぐか、足に触れつつ入らざると得ない。なかなか「座りたいのですが」とは言い出し難いのだろう。何席か空いたまま終着駅まで走ることになった。もし終着駅まで乗車するのならば、窓側が空いていれば、窓側に詰めて座るべきだったのではないだろうか、とその時に思った。
しかし、こうした構造の席は、窓側に座る難しさもある。窓側に座っていて、いざ下車しようとする時に、通路側の人が気を効かして、立ってもらえれば良い。しかし、通路側の人に立つなど配慮が得られなかった場合には、それこそ、断って足の上をまたぐ、または足に触れつつ無理やりに通路へ出なければいけない。筆者は複数の荷物を持っていたために一度、下車する時に冷や汗をかいたことがあった。
こうしたクロスシートの車両では、お互いに譲り合い、また通り難そうだなと思ったら、立って、譲りあうことも必要になるだろう。こうした構造面での問題だけでなく、最近、通常の通勤電車で見た事例を2つほど挙げておきたい。
○ドア横に立ちながら、車内中央方向を向いている例
ドアの左右両わきに立っている人は、大概が外や座席側を背にして、対面する方向を向いて立っている場合が多い。ところが、その人は、ドア横に立っているのにもかかわらず、車内の中央部方向に体を向け、対面する人をぼんやり見ていた。ドア近くに立つ人は外側を向いている人が多いから、どうしてもこの人と顔を合わせなければいけなくなる。混んでいる電車だから、その距離は近い。当然、見合う形で立つ人は具合悪く感じてしまう。
スマホを操作しているならば、まだ救いはあるだろうが。どうも若い世代に多い現象のようにも感じているのだが、これは迷惑行為まではいかないものの、面と向かった人はどうも気まずい思いをしてしまう。他人を不快にさせない立ち居振る舞いも電車内では大切なのではないのだろうか。
○ゲームに興じるために前かがみで座る例
こちらはランキングにあった、座り方が悪い一例にあたるのだろうか。ゲームに興じているせいか、座っているものの、座席の背に背中を付けず、前かがみになっている人を見かけた。前かがみになると、その姿勢のために、この1人分、前に人が立てない状態になってしまう。
こうした行為は多くの人が迷惑と感じるのではないだろうか。電車内という密室では、なかなか注意しづらく、本人に自分の行為が他人を不快にさせてしまうことがあることに、気付いてもらうしか方法はないのだろうと思う。