【TRAINに迫る⑥】北海道をどのような編成で走るのだろう?
さて、ここからはやや“鉄分”が濃くなる。鉄道好きが、つい注目したくなるポイントを見ていこう。まず、北海道で「ザ・ロイヤルエクスプレス」は、どのような編成で走るのだろうか。
「ザ・ロイヤルエクスプレス」は電車ながら、道内を自走することができない。直流電車のため、交流電化された道内の路線を走ることができないのだ。さらに走る予定の区間は非電化区間が多い。
そこで道内ではディーゼル機関車にひかれて走る。通常は8両編成だが、列車の長さを考慮して5両編成に組み直される。乗客の利用できるのは下の写真の4両だ。内訳は1号車が展望車、5号車と6号車がダイニングカー、8号車がライブラリーとなる。
ほかに4号車・キッチンカーが連結される。この4号車は車両すべてが厨房という割り切った造りの車両だ。
【TRAINに迫る⑦】道内では機関車と電源車「ゆうマニ」を連結
北海道で走る「ザ・ロイヤルエクスプレス」は、下の水戸岡鋭治氏のイラストのような編成となる。牽引するのはJR北海道のDE10形(もしくはDE15形)ディーゼル機関車だ。黄色いカラーで特別塗装されたDE10形を2両連結した重連スタイルで列車を牽引する。
“北海道クルーズトレイン”はそれこそ絵になりそうだ。さらに白い車両が連結されているが、さてこの車両は?
こちらは電源車だ。「ザ・ロイヤルエクスプレス」は道内でパンタグラフをあげずに走るために架線から電気を得ることができない。そのために電源車を連結して、この電源車から電気の供給を受けるのだ。
電源車として使われる車両の経歴がおもしろい。形式名はマニ50形。荷物車として造られた。車両の中間部に荷物積み下ろし用の扉が付く。荷物車は主に客車列車に連結され、鉄道荷物輸送で活躍した。1986(昭和61)年に鉄道荷物輸送が廃止され、全国の荷物車は、ほとんどが姿を消していった。
使われるマニ50形2186号車は、JR東日本のジョイフルトレイン「リゾートエクスプレスゆう」用に、電源車として改造された車両だ。「リゾートエクスプレスゆう」に連結されて走ったことから、鉄道ファンから「ゆうマニ」というかわいらしい愛称が付けられていた。
「リゾートエクスプレスゆう」が廃車されて以降、使われることが無くなっていたこともあり、今回のクルーズ列車用に、JR東日本から東急へ譲渡された。これから車体色などの変更が行われていくのだろう。1月末現在、東急の長津田車両工場に入場している姿が確認された。
【TRAINに迫る⑧】いつごろ北海道へ運ばれるのだろう?
「ザ・ロイヤルエクスプレス」は例年7月中ごろまでは伊豆急行線を走る。しかし、真夏は走る機会に恵まれなかった。夏の海水浴シーズンともなると、伊豆急行線では臨時列車が多く運転される。いわば“かき入れ時”だ。ダイヤに余裕がない。そのため、真夏は車両基地に停められていることが多かった。こうした夏期の有効活用という意味合いも北海道クルーズにはある。
さて、鉄道ファンにとって非常に気になるポイントは、いつごろ車両が北海道へ運ばれるのか、だろう。同プロジェクトの推進役の東急・松田高広さんへ聞いてみた。
「7月21日がロイヤルエクスプレスの誕生した日なので、それまではこちらにいることになります。7月下旬に運ばれて、あちらで試運転が行われることになるかと思います。詳細はこれからつめていきますが……」とのこと。スタッフもこの時期に北海道へ出かけてということになるそうだ。
大手私鉄の名物車両が、遠く北海道へ出向き、クルーズ列車として走ることはこれまでなかった。まさに画期的な催しである。東急、JR北海道はもちろん、JR東日本、JR貨物の4社連携でプランが進められている。
振り返れば北海道の鉄道網は年々、廃線区間が増え、厳しい状況に直面している。とはいえ、北海道の鉄路には、本州以南の鉄路にはない魅力に満ちている。1年限りの“イベント”で「ザ・ロイヤルエクスレス」の運行を終わらせるのは惜しい。せひ例年恒例の北海道クルーズとなることを望みたい。
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