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2020/2/23 19:00

列島最西端を走る鉄道線「松浦鉄道」――興味深い11の真実

【松浦鉄道の真実⑨】海近くを走るものの海が意外に見えない

たびら平戸口駅を発車すると列車は東に向けて走り始める。地図上では玄界灘に沿って走る松浦鉄道だが、海岸線から離れた位置をこの先、走るため、山なかの風景がしばらく続く。

 

松浦駅を過ぎるあたりから海が少しずつ見えるようになる。松浦駅の次の駅は調川駅(つきのかわえき)。駅名標には「日本一のアジ・サバ水揚げ基地」と書き込まれる。地元の調川港はアジ・サバの水揚げが多い港なようだ。

 

車窓から最も海景色が楽しめるのは、この調川駅の隣、前浜駅と鷹島口駅(たかしまぐち)の間だ。並走する国道204号よりも海側に線路が通ることもあり玄界灘と、沖に浮かぶ、飛島や鷹島などの島影が良く望める。

↑前浜駅〜鷹島口駅間は最も海景色が楽しめる区間。海上に浮かぶ島々も良く見える

 

鷹島口駅の先、今福駅〜福島口駅間で長崎県から佐賀県へ入る。佐賀県に入った浦ノ崎駅から波瀬駅(はぜえき)間でも海景色が楽しめる。この区間は玄界灘から伊万里湾の眺めとなる。海越しに石油ガス備蓄基地や造船所のドックが見えるなど、前浜駅付近とは異なる海景色となる。

 

 

【松浦鉄道の真実⑩】JR駅より賑わう松浦鉄道の伊万里駅

海景色を楽しむうちに伊万里の平野部に入ってきた。有田川を渡り、有田駅からの路線と合流し、伊万里駅に到着する。

 

伊万里駅で、JR筑肥線の伊万里駅と接続する。接続しているのだが不思議な構造をしていた。松浦鉄道とJR筑肥線の伊万里駅は共に地上駅なのだが、線路はつながっていない。

 

松浦鉄道の伊万里駅(西駅)を出ると、目の前に伊万里大通り(県道240号線)が貫いている。この通りの向こう側にJRの伊万里駅(東駅)がある。両駅には2階があり、跨線橋(ペデストリアンデッキ)で両駅が結ばれている。2階へのエレベータがあるものの、目の前に駅があるのだから、横断歩道で結んでも良いように感じた。

↑松浦鉄道の伊万里駅。2面のホームがあり、おもに2番線がたびら平戸口・佐世保方面行き。3番線(左側)が有田行きの列車が発着する

 

↑おしゃれな造りの伊万里駅。西駅(左側)が松浦鉄道の駅で、デッキで結ばれた東駅(南側)がJR筑肥線の駅となっている

 

道路一つ隔てたJRと松浦鉄道の伊万里駅だが、松浦鉄道の駅の方がより賑やかだ。列車の発着本数も極端に異なる。有田方面へは30分〜1時間おき、佐世保方面へもほぼ1時間おきに列車が発車する。一方のJR筑肥線の列車は西唐津駅行(もしくは唐津駅行)が日に9往復のみである。

 

博多駅から伊万里駅までは、JR佐世保線+松浦鉄道経由の方が、圧倒的に便利なこともあり、この賑わいの差にもはっきり現れていた。

 

 

【松浦鉄道の真実⑪】大正初期の建築!鄙びた趣が魅力の蔵宿駅

松浦鉄道の伊万里駅は行き止まり式の駅である。たびら平戸口駅方面から乗車、伊万里駅で乗り換えて有田駅へ向かう時は、同じ区間を再び戻るようにして走り出す。

 

有田駅行の列車はたびら平戸口駅方面への線路と途中で分かれ、左にカーブして南西へ向かう。有田川と出会い、ひたすら川に沿って進んでいく。松浦鉄道が通る右岸(東側)は腰岳の山麓ということもあり、人家は少ない。緑に包まれた車窓風景が続く。

 

腰岳の山麓から平野部に出ると磁器の生産地、有田町へ入る。最初の駅が夫婦石駅(めおといしえき)だ。有田町内に入ったこともあり、沿線には大小の工場や工房が多く見られるようになる。

↑大正期に建てられた駅舎が残る蔵宿駅。写真は2013年夏に訪れた時のもの。現在、駅舎の形は変らずだがホームが改修されている

 

有田駅までは列車の本数も多い。そこで途中駅で降りてみてはいかがだろう。中でも蔵宿駅(ぞうしゅくえき)がお勧めだ。駅舎は1913(大正2)年に建築されたとされる。貴重な国鉄時代の面影を残す駅である。

 

蔵宿駅を発車すると左にカーブ。伊万里から平行して走ってきた国道202号から離れ、有田町の中心部へ向かう。三代橋駅(みだいばしえき)の先で、JR佐世保線と合流する。JRの線路に沿って1kmほど走れば有田駅に到着する。

↑JR佐世保線の特急停車駅・有田。松浦鉄道の列車はJR佐世保線のホームに併設された3番線から発着する(左上)

 

有田といえば磁器生産の発祥の地とされている。有田町内でも特に磁器工房が多いのは、有田駅の隣、JR佐世保線の上有田駅(普通列車のみ停車)の近く。明治期に建ったともされる駅舎から老舗工房が連なる皿山通りなどの見どころも近い。時間に余裕がある時には、ぜひともお勧めしたいエリアである。

 

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