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2020/3/2 21:30

「小さい」ではなく「Tさい」のワケは?VW待望の新作コンパクトSUV「Tクロス」を徹底チェック

走りの質感はポロ、あるいはゴルフ譲りの出来映え!

さて、Tクロスの「Tさい」は秀逸なパッケージングや充実装備だけにはとどまりません。その走りも、コンパクトSUVとしてはハイレベルな仕上がりです。エンジンは、1Lの直列3気筒ターボ。すでにポロなどで好評のEA211型から派生したユニットで、最高出力と最大トルクはポロ用より21PSと25Nm上回ります。組み合わせるトランスミッションはVWお得意の7速DCT(VW呼称はDSG)で、自重1270kgのボディを動かすわけですが動力性能は必要にして十分。場面によっては軽快とすら呼べる出来映えです。3気筒という構成からイメージされる振動の類とは無縁で、吹け上がりはリミットまでスムーズ。高回転になれば特有の音は目立ち始めますが決して不快な音質ではなく、むしろ積極的に走らせる乗り手の気分を盛り上げてくれる類のもの。もはやDCTの制御も堂に入ったもので、日常域でも洗練された変速制御を披露してくれます。

↑パワーユニットは、1L直列3気筒の直噴ガソリンターボ。組み合わせるトランスミッションは、VWがDSGと呼ぶツインクラッチ2ペダルMTのDCTでギア数は7速

 

このパワートレインを搭載するボディは、基本骨格に7代目「ゴルフ」からVWの主流となっているMQBプラットフォームを採用。MQBは多様な車種に展開できることも特徴のひとつですが、ミドル級の「パサート」にも対応する基本性能を持つだけにTクロスには余裕十分という印象。カッチリと頼もしい剛性感を筆頭に、走りの質感はコンパクトクラスの域を完全に超えています。

↑最新のVWらしく、走りは質感の高さが印象的。特別スポーティな味付けが施されているわけではありませんが、そうした走らせ方をしてもしっかり応えてくれます

 

今回の試乗車は45扁平の18インチという、快適性には不利なタイヤを履くTSI 1st Plusでしたが乗り心地はサイズから想像される以上にフラット。乗用車ベースのSUVにありがちな日常域の微振動も気にならない水準で、快適なライド感を披露してくれます。それでいて、いざオンロードで積極的に操ればハンドリングも秀逸。サスペンションはフロントがストラット、リアはトレーリングアームというシンプルな作りですが、入力が大きくなる場面でもしなやかにストロークするのでスポーティに走らせたいというニーズにもしっかり応えてくれます。この種のクルマで“攻めた”走りを愉しむ人は少数派でしょうが、Tクロスには幅広い嗜好に対応できる懐の深さが備わっているわけです。

 

と、ここまでお読みいただければ「Tさい」の理由はもうおわかりのはず。「小さい」のはボディだけ。Tクロスから得られるものは、より大きなSUVと比較しても遜色がない実用性から「小」ではなく「T(ティグアンやTロックの頭文字)」なわけです。唯一、現状でケチを付けるとすれば、それは日本の同クラスで選べる4WDの設定がないことぐらい。しかし良質で長くつきあえるコンパクトSUV、という意味では間違いなくオススメの1台です。

 

SPEC【TSI 1st Plus】●全長×全幅×全高:4115×1760×1580㎜●車両重量:1270㎏●パワーユニット:999㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:116PS/5000~5500rpm●最大トルク:200Nm/2000~3500rpm●WLTCモード燃費:16.9㎞/L

 

撮影/勝村大輔

 

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