【蘇る東京の風景⑦】東京の玄関口も新橋駅から東京駅へ移動
駅が話題になったので、東京の代表的な駅の絵葉書を2枚ピックアップした。
1枚は新橋駅の明治時代の様子である。日本初の鉄道路線が新橋駅と横浜・桜木町駅間を1872(明治5)年に開業した。当時の姿が絵葉書として残り、煉瓦建ての重厚な建物だったことが分かる。
新橋駅は1914(大正3)年に東京駅が開業に合わせて汐留駅と名をあらため、同時に貨物駅となっている。その後、古い駅舎一帯は国の史跡に指定され、現在は開業当時の駅舎が再現され「旧新橋停車場 鉄道歴史展示室(入場無料)」として当時の資料などが展示されている。
旧新橋駅に代わり東京の玄関口となったのが東京駅だった。国が駅づくりを推し進め帝国議会で議決されたほど、当時の政府が力を入れた駅づくりだった。いわば国家プロジェクトとして造られた駅だった。東京駅は1914(大正3)年12月20日に開業した。辰野金吾が設計した3階建てレンガ造りの建物が見事だった。内外からの注目度も高まり、多くの絵葉書が発行されている。
太平洋戦争中に空襲により被災し、その後、復興したものの、当初の形とは異なっていた。2012年には「復原工事」が完了している。大正期に建ったころの姿と見比べてみると、ほぼ誕生したころの姿に復元されていることが分かる。
【蘇る東京の風景⑧】ここはどこ?場所を推理するのも楽しみに
さて鉄道絵葉書を複数紹介してきたが、最後に車両を写した絵葉書を見てみよう。下記の絵葉書では電車とSLが牽引する列車の姿が確認できる。
しかし、同絵葉書には場所などの解説がない。車両を紹介する絵葉書には、このように場所や説明を省いたものが結構ある。どこの何の絵葉書なのかが分からない。そのために場所の面影や写る車両で推測するしかない。
例として上げた撮影地不明の絵葉書。この同じ場所で撮影した写真を、「日本国有鉄道百年写真史」の中で見つけた。そして現在の京浜東北線の大森駅〜蒲田駅間であることが分かった。同区間は1914(大正3)年に京浜間の電化工事が完成したが、その後の写真だったのだ。
写り込む電車は形から見ると鉄道省が製造したデハ6340系と思われる。とはいえ、カラー印刷が普及しはじめたころの絵葉書は偽色とも言えるような色付けをしていることがあり、絵葉書の色がそのまま本物とは言いきれないようだ。同車両は記録としてモノクロ写真しか探すことができず、色がこんなオレンジ色に近かったのか、さらに疑問が涌いてきた。
【絵葉書の基礎知識】刷られた年代の見方と、購入ノウハウ
さて、絵葉書を手に入れたものの、どの年代のものか分からない場合がある。どのようにしたら刷られた年代が分かるのだろうか。
絵葉書は郵便物として投函されていれば消印が捺されているので、絵葉書自体は、その日付よりも前に刷られたものということがわかる。だが、消印がない場合に、年代を読むのはどうしたら良いのだろう。
簡単な方法がある。絵が刷られた側とは反対の裏面を見れば良い。ここには宛名を書くスペースがある。このスペースの大小でおよその時代が分かる。一面に、宛名を書き、通信文を書き込むスペースがないものが最も古い。宛名しか書けないもので、この形の葉書が1907(明治40)年4月までに使われていた。
次に古いのが通信文用のスペースがはがき面の3分の1大のもので、これは1907(明治40)年4月〜1918(大正7)年3月に刷られたものだ。
1918年4月以降は、通信文スペースがはがき面の半分まで大きくなっている。このスペースの違いでほぼ、古さが分かる。
ところで絵葉書の横書きの解説は、古いものは、多くが右から左へ記されている。現在とは正反対だ。これが、現代風に左から右へ印刷するようになったのは、いつのことからなのだろう。左から右へのルールが決められたのは1942(昭和17)年のことだった。当時の文部省によりこの“決まり”が制定されていた。だが、一般に浸透していくのは太平洋戦争後のことで、左から右へ解説文がある絵葉書は、だいたいが、戦後のものと見て良い。
さらに、戦後は裏面の「郵便はがき」の文字も左から右へと印刷されるようになる。戦前までは右から左へ印刷され、1933(昭和8)年までは「郵
最後に、絵葉書の入手方法に触れておこう。
絵葉書は切手収集の一つのアイテム、エンタイヤとして見られていることもあり、切手やコインの販売会などで取引されることが多い。こうした催しは四季折々に開かれているが、新型感染症の影響で、催しの開催も自粛されているのが現状だ。
一方で、ヤフーオークションなどで取引されるケースが増えている。ちなみヤフオクであれば、カテゴリは「アンティーク、コレクション」の中の「印刷物」。そこに「絵はがき、ポストカード」とあり、「鉄道」絵葉書も数多く出されている。金額は1000円程度から、高いものは5000円以上と幅がある。残る枚数が少ない“珍品”は高価になりがちだ。
興味のある方は覗いてみてはいかがだろう。
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