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2020/6/14 19:05

今も各地で働き続ける「譲渡車両」に迫る〈元JR気動車の場合〉

【注目の譲渡車両③】第3のご奉公先という古参の気動車が走る

◆キハ20形(JR西日本→水島臨海鉄道→ひたちなか海浜鉄道)

↑2019年秋に塗装し直されたばかりのキハ205。週末に勝田駅〜阿字ケ浦駅を1〜2往復するのみと貴重な運行なため注目度が高い

 

いすみ鉄道とともに譲渡車両を活かしているのが、茨城県を走るひたちなか海浜鉄道だ。ひたちなか海浜鉄道で注目を集めるのがキハ20系20形(同社での形式名はキハ205)だ。このキハ20系、ローカル線の無煙化に貢献した車両で、製造されたのは1957年〜1966年。1126両と大量の車両が造られた。

 

ひたちなか海浜鉄道のキハ20は、国鉄とJR西日本、JR四国から、岡山を走る水島臨海鉄道に譲渡された13両のうちの1両で、水島臨海鉄道時代に冷房装置が取り付けられた。1996(平成8)年にひたちなか海浜鉄道の前身、茨城交通に移籍し、それが現在の会社に引き継がれた。ちなみにキハ20形の現役車両は、現在では同社の1両のみで、貴重な存在となっている。半世紀以上、鉄路を走り続ける姿は、それこそ走り続ける“歴史の証人”と言って良いだろう。

 

キハ205は、2019年に塗り替えられ、きれいな姿で路線を走る。運行は週末(必ず走るとは限らない)に数往復といった非常に限られていることもあり、貴重な走行日に、同線を訪れる人が目立っている。

 

◆キハ11形(JR東海・東海開発事業→ひたちなか海浜鉄道)

↑ひたちなか海浜鉄道のキハ11形。写真のキハ11-6はJR東海の関連会社にあたる東海交通事業の城北線を走っていた気動車だ

 

ちなみにひたちなか海浜鉄道では、ほかにもJR東海と関連会社からの譲渡車両が使われている。キハ11形3両で、1両はJR東海から、残り2両は、JR東海の関連会社、東海交通事業の車両だった。東海交通事業は名古屋市近郊を走る城北線を運行する会社で、非電化の路線のため、このキハ11形が使われていた。

 

【注目の譲渡車両④】残るのはここだけ! 水島臨海鉄道の気動車

◆キハ30形・37形・38形(JR東日本→水島臨海鉄道)

↑国鉄標準色のキハ38形と水島臨海色のキハ37形が連結された朝の列車。同社でもこうした色の異なる車両の連結風景は珍しい

 

JR東日本の気動車を導入して生かしているのが、岡山県を走る水島臨海鉄道だ。同路線はJR貨物の資本が入ることもあり、JRグループと関わりが強い。現在も貨物列車がJR山陽本線との相互乗入れを行っている。同社は古くからJRの譲渡車両を多く導入してきた。

 

現在、主力車両にはMRT300形を使用しているが、ほかに国鉄形のキハ30形を1両、キハ37形を3両、キハ38形1両を所有している。この5両は、すべてJR東日本の久留里線を走っていた車両だ。久留里線では2013年に新型車両を導入したが、余剰となった気動車を、水島臨海鉄道が譲り受けた。

↑キハ30形は、1961年〜1966年に造られた。正面は装飾のない平坦な姿で、当時の国鉄の車両づくりの傾向がうかがえる

 

キハ37形とキハ38形は、国鉄時代に新造された車両で、造られた車両数が少ない。キハ37形は5両、キハ38形は7両のみ造られた。元々少なかったこともあるが、現在、残る車両は水島臨海鉄道の計4両のみ。

 

一方のキハ30形は各地の通勤・通学用に使われた車両で、この車両も稼働できる車両は水島臨海鉄道の1両のみとなっている。同社ではキハ37形とキハ38形は、朝夕の利用者が多い時間帯に運用、一方、キハ30形は主にイベント開催日の列車などに使われている。

 

いずれの形式も貴重な車両だけに、末長く走り続けてほしいものである。

 

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