【注目の譲渡車両③】第3のご奉公先という古参の気動車が走る
◆キハ20形(JR西日本→水島臨海鉄道→ひたちなか海浜鉄道)
いすみ鉄道とともに譲渡車両を活かしているのが、茨城県を走るひたちなか海浜鉄道だ。ひたちなか海浜鉄道で注目を集めるのがキハ20系20形(同社での形式名はキハ205)だ。このキハ20系、ローカル線の無煙化に貢献した車両で、製造されたのは1957年〜1966年。1126両と大量の車両が造られた。
ひたちなか海浜鉄道のキハ20は、国鉄とJR西日本、JR四国から、岡山を走る水島臨海鉄道に譲渡された13両のうちの1両で、水島臨海鉄道時代に冷房装置が取り付けられた。1996(平成8)年にひたちなか海浜鉄道の前身、茨城交通に移籍し、それが現在の会社に引き継がれた。ちなみにキハ20形の現役車両は、現在では同社の1両のみで、貴重な存在となっている。半世紀以上、鉄路を走り続ける姿は、それこそ走り続ける“歴史の証人”と言って良いだろう。
キハ205は、2019年に塗り替えられ、きれいな姿で路線を走る。運行は週末(必ず走るとは限らない)に数往復といった非常に限られていることもあり、貴重な走行日に、同線を訪れる人が目立っている。
◆キハ11形(JR東海・東海開発事業→ひたちなか海浜鉄道)
ちなみにひたちなか海浜鉄道では、ほかにもJR東海と関連会社からの譲渡車両が使われている。キハ11形3両で、1両はJR東海から、残り2両は、JR東海の関連会社、東海交通事業の車両だった。東海交通事業は名古屋市近郊を走る城北線を運行する会社で、非電化の路線のため、このキハ11形が使われていた。
【注目の譲渡車両④】残るのはここだけ! 水島臨海鉄道の気動車
◆キハ30形・37形・38形(JR東日本→水島臨海鉄道)
JR東日本の気動車を導入して生かしているのが、岡山県を走る水島臨海鉄道だ。同路線はJR貨物の資本が入ることもあり、JRグループと関わりが強い。現在も貨物列車がJR山陽本線との相互乗入れを行っている。同社は古くからJRの譲渡車両を多く導入してきた。
現在、主力車両にはMRT300形を使用しているが、ほかに国鉄形のキハ30形を1両、キハ37形を3両、キハ38形1両を所有している。この5両は、すべてJR東日本の久留里線を走っていた車両だ。久留里線では2013年に新型車両を導入したが、余剰となった気動車を、水島臨海鉄道が譲り受けた。
キハ37形とキハ38形は、国鉄時代に新造された車両で、造られた車両数が少ない。キハ37形は5両、キハ38形は7両のみ造られた。元々少なかったこともあるが、現在、残る車両は水島臨海鉄道の計4両のみ。
一方のキハ30形は各地の通勤・通学用に使われた車両で、この車両も稼働できる車両は水島臨海鉄道の1両のみとなっている。同社ではキハ37形とキハ38形は、朝夕の利用者が多い時間帯に運用、一方、キハ30形は主にイベント開催日の列車などに使われている。
いずれの形式も貴重な車両だけに、末長く走り続けてほしいものである。