【注目の譲渡車両⑥】他社へ初めて譲渡された「E」付き電車
◆JR東日本E127系 → えちごトキめき鉄道ET127系
2015年3月の北陸新幹線金沢駅延伸に合わせて、沿って走る在来線が次々に第三セクター鉄道線への転換が行われた。新潟県を走る信越本線と北陸本線は、えちごトキめき鉄道となった。そのうち元信越本線は、直流電化区間で、転換前までは、おもに115系が走っていた。だが、えちごトキめき鉄道へは115系ではなく、新潟地区を走っていたE127系0番台が譲渡された。
E127系0番台は1995年からの製造と、115系に比べて新しい。2両編成と地方路線では使い勝手が良いことから10編成が改修された上で、えちごトキめき鉄道へ譲渡された。同社に移ってからはET127系と形式名を変更、外装も妙高の山々を描いたラッピング塗装などが行われた。
1993年以降にJR東日本が開発した車両形式には頭に「E」が付く。このEが付く車両の中では他社への初の譲渡車両となった。E127系0番台はJR東日本にも2両×2編成が残る弥彦線などで使われている。ちなみにE127系は100番台も造られ、長野地区に配置された。こちらは701系交流電車に似た正面の形をしている。
【注目の譲渡車両⑦】今や貴重となった国鉄形交直流電車
◆JR西日本413系 → あいの風とやま鉄道413系
北陸新幹線の開業時に、富山県内の北陸本線はあいの風とやま鉄道線となった。路線は倶利伽羅駅〜市振駅(いちぶりえき)間だ。列車は石川県内の金沢駅〜泊駅(富山県)間はあいの風とやま鉄道とIRいしかわ鉄道の車両が互いに乗入れる形で運転されている。
主力車両は521系だが、413系という国鉄形の電車も走っている。あいの風とやま鉄道がJR西日本から譲りうけ、走らせている電車だ。この413系、今となっては非常に珍しい電車だ。413系は交直流電車で、それまで老朽化が著しかった475系、457系といった、交直流電車の電装品、台車などを流用して造られた。登場したのは1986年で、国鉄の最晩年の車両だ。おもに北陸本線で活躍してきたが、新型521系の登場もあり、近年は、車両数が減ってきていた。
あいの風とやま鉄道には、3両×5編成が譲渡された。そのうち1編成は「一万三千尺物語」という観光列車に、また1編成は簡易改造されてイベント列車「とやま絵巻」という名で走っている。
JR西日本の金沢総合車両所に16両の413系が残っているが、これらの車両も含めて、今では貴重な国鉄形の交直流電車となっている。
【注目の譲渡車両⑧】同じ521系もカラーで印象が大きく変わる
◆JR西日本521系 → あいの風とやま鉄道521系
◆JR西日本521系 → IRいしかわ鉄道521系
北陸新幹線の金沢延伸に合わせ、三セク転換され誕生したあいの風とやま鉄道と、IRいしかわ鉄道。元北陸本線の金沢駅〜泊駅間で普通列車を走らせる。JR西日本から譲渡されたのが前述した413系に加えて、521系だった。521系交直流電車が、登場したのは2006年のこと。譲渡車両としては比較的、新しい。この521系があいの風とやま鉄道に、2両×16本32両、IRいしかわ鉄道には2両×5本10両が譲られた。
その後、あいの風とやま鉄道では521系の自社発注車両を2編成導入している。あいの風とやま鉄道の方が、圧倒的に車両の保有数が多い。これは路線の営業キロ数がIRいしかわ鉄道の17.8kmに対して、あいの風とやま鉄道が100.1kmと圧倒的に長いことにもよる。駅や沿線で出会う電車も、あいの風とやま鉄道の車両の方が多く、IRいしかわ鉄道の車両に出会う確率は少なめだ。同じ521系でも両社のカラーリングは異なっていて、この違いもまた興味深い。