【鉄道貨物の秘密⑪】後押し専用の電気機関車もそろそろ引退か?
最後は機関車の話題に触れておこう。貨物用機関車は貨車を牽くために使われる。これは常識のこと、だと思う。
ところが、日本で唯一、電気機関車を後ろに連結し、列車の後押しを行う箇所がある。後押しするのは山陽本線の広島貨物ターミナル駅から西条駅までの区間だ。
このうち勾配が厳しいのは瀬野駅〜八本松駅(はちほんまつえき)の10.6km間の通称“セノハチ”と呼ばれる。最急22.6パーミル(1000m走るうちに22.6mのぼる)の勾配が連続している。電車ならば22.6パーミルという勾配は造作ないのだが、総重量1300t、コンテナ貨車が最大26両も連ねた列車となると、この急勾配は厳しい勾配となる。
そこでこの区間のみ後押しする機関車が連結される。しかも通常の電気機関車ではなしに、後押し専用という機関車まで用意されている。後押し専用の機関車はEF67形式直流電気機関車だ。
現在、残るEF67はEF65を改造した100番台で、連結する側の連結器のみ緩衝器がついている。そのため、連結器の装着部が厚くなっている。EF67の後継機としてすでにEF210形式直流電気機関車300番台(以降「EF210・300番台」と表記)が多く導入されたこともあり、EF67の活躍の場は徐々に狭められつつある。
EF67は現在、稼働している車両は3両のみ。山陽本線の貨物列車はその多くが早朝に、同区間を抜けることもあり、EF67の後押し作業も朝7時台に終了してしまう。なかなか見る機会は少ない貴重な光景となっている。
後継のEF210・300番台は、貨物列車の牽引も可能にした万能タイプ。今後、EF210・300番台が増強されるに従い、EF67の活躍の機会が減っていくことになる。鉄道ファンとしては残念なことだが、ここの数年のうちに、後押し専用機関車のEF67は消滅していく可能性が高いと見ていいだろう。