【進むLRT事業⑧】宇都宮市の郊外に出るとLRV専用区間へ入る
駅から約3.5km。急に左右に水田が広がるようになる。LRTの路線はこのあたりから鬼怒通りを遠ざかり南へ。そして専用区間を走る。
この先、国道4号の新バイパス道沿いには車両基地が造られる予定だ。水田を左右に見ながら爽やかな気分でLRTの予定線を歩く。このあたりになると、重機が使われる工事箇所に出会うようになった。
国道4号のバイパス路を越えると、さらに郊外の趣が増していく。とともに見渡すかぎり水田、そして点在する農家といった光景が広がる。まもなく、南北に連なる土手が見えてきた。
【進むLRT事業⑨】鬼怒川橋りょうの工事は渇水期に限定される
この土手は宇都宮市の郊外を南北に流れる鬼怒川の堤防だ。この鬼怒川を長さ643mの橋りょうで渡る。同LRT事業でもっとも手間がかかる工事地域となる。さらに厄介なのは、鬼怒川での工事が渇水期(11月〜翌5月)しか進められないこと。増水期の工事は危険なため、認められていないのだ。
訪れた日は、渇水期で、流れは細く穏やかなものだった。ところが荒れるとこの川は怖い。それこそ鬼が怒る川になる。鬼怒川は明治後期に行われた改修前までは、毎年のように洪水に襲われていた。それほど水の増減に差がある。2015年9月に下流の常総市で大規模な洪水が起ったことは記憶に新しい。
鬼怒川橋りょうの工事は2018年7月2日に始められた。同工事は路線内でもっとも時間がかかる。とはいえ2021年8月には完了となる予定だ。
これが鬼怒川にかかる橋となるのか、と納得。頑丈な造りで、かなり雨でも電車の運転に支障がなさそうだなと納得させられたのだった。
今回は、歩いて回ったこともあり、鬼怒川の堤防にて“現地視察”を終了にした。次回に行く時は、もう新線ができあがったころかなと思いつつ、来た道を戻った。
工事は現在、見てきたように橋りょう工事のほか、道路改良工事や擁壁などの高架構造物の工事を主体に進められている。今後は、レールの敷設、停留場の整備などの工事を進める予定とされている。
【進むLRT事業⑩】ペーパークラフト&シールを頂きました!
駅へ戻る途中、ひと休みがてら商業施設「ベルモール」に立ち寄る。この1階にはLRT事業の全容を紹介する「交通未来都市うつのみやオープンスクエア」が開設されている。
コーナー内では、パネルや映像でLRT事業を紹介。LRTの模型車両が走るジオラマがあり、VR(バーチャルリアルティ)によるLRTの疑似体験が楽しめる。開館時間は10〜19時、無休だ。興味のある方はぜひとも立ち寄ってみたい。
さて帰ろうとしたら。こちらをどうぞ、と“お土産”をいただいた。中には車両が描かれたファイル、そして170分の1のペーパークラフト、さらにシール! みなおしゃれで、実用性があり、とてもトクした気持ちになったのだった。
【進むLRT事業⑪】将来は宇都宮駅西側への延伸を目指す
JR宇都宮駅に戻ってきたら、夕方になっていた。念のため駅の東口から西口にまわってみる。やはり西口は賑やかな印象だ。
2022年に開業するのは東口から芳賀町までだが、将来は、JR線を越えて西側方面へ路線を延伸する計画がある。路線は東武宇都宮駅に近い池上町の交差点、さらに西の「桜通り十文字付近(国道119号)」を含め、先への延伸を図る。
今のところ「桜通り十文字付近」「護国神社付近」「宇都宮環状線付近」「東北自動車道付近」「大谷観光地付近」の5つの案について整備区間の検討が行われている。本年度中には「LRTの整備区間」について決定される予定だとされる。
最後に今回のLRTがなぜ1067mmという線路幅を採用しているのだろうか。
既存の鉄道路線と同一軌間としたことで、将来的には、鉄道路線への乗り入れも模索しているのだという。西へ路線を延長していくことは将来、東武宇都宮線や、JR日光線への乗り入れも可能ならば、というわけだ。
すでに福井県では併用軌道区間のある福井鉄道と、えちぜん鉄道間の相互乗り入れが実現している。宇都宮の新しいLRT計画も、今後は、同じように大きく羽ばたく“夢”を秘めていたのである。