〜〜首都圏を走った私鉄電車のその後2〜〜
首都圏や京阪神を走っていた当時の“高性能電車”の多くが、各地の私鉄路線に移り、第2の人生をおくっている。大手私鉄の「譲渡車両」2回目は、元西武鉄道の電車を紹介した。
西武鉄道のグループ会社へ移籍する電車が多いのは当然ながら、他にも複数の会社へ移籍して、今も多くが第一線を走る。そんな電車たちの“第二の人生”を写真を中心にお届けしよう。
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【注目の譲渡車両①】グループ会社の近江鉄道は全車が元西武電車
◆近江鉄道(滋賀県)800系・820系
大手私鉄の電車の中で各地の鉄道会社へ譲渡されることが多いのが東急、さらに西武鉄道の電車だ。まずは西武鉄道のグループ会社、近江鉄道と伊豆箱根鉄道の譲渡車両の現状から見ていこう。
近江鉄道は西武鉄道のグループ会社ということもあり、古くから西武の譲渡車両を多く使ってきた。現在、すべてが元西武の車両である。
なかでも主力として活躍するのが800系と820系。元は西武の401系だった。401系は高度成長期、デザインよりも、車両数を増やすことに専念した西武鉄道らしく、凝らずに正面を平坦にしたデザインが特徴となっている。
近江鉄道へ移ってからは、正面がそのままの車両は820系に、独自の3枚窓に改造された車両が800系となった。820系のほうが、西武の元401系の姿を色濃く残しているものの、車体の四隅のスソ部分が当時の車両運行上の問題からカットされているところが西武当時とは異なっている。401系が西武で生まれたのは1964(昭和39)年のこと。1991(平成3)年から1997(平成9)に近江鉄道にやってきてすでに四半世紀と、かなり年季が入った電車となっている。
◆近江鉄道(滋賀県)100形
次は近江鉄道の100形。元は西武鉄道の新101系もしくは301系を改造した電車である。西武の新101系、301系は、西武鉄道の車両のなかでは長寿車両で、現在も多摩湖線や西武多摩川線などを走り続けている。
さらに各社へ譲渡される車両数が多く、今も各地で活躍している。全長20mと長めながら片側3扉車で、部品類に事欠かず、地方の鉄道会社として使い勝手が良い電車となっている。100形は2両×5編成と編成数も多く、同社の主力車両として沿線で出会う機会が多い。
◆近江鉄道(滋賀県)900形
100形と同じく西武の新101系がベースで、100形よりも半年ばかり早く2013年6月に登場した。2両×1編成のみが900形に改造され、当初はダークブルーの淡海号として走り始めた。その後に、虹たび号、あかね号と愛称を変更、塗装もそのつど変更されている。
◆近江鉄道(滋賀県)300形
2020年8月から走り始めたのが300形。こちらは元西武の3000系である。3000系は西武池袋線系統で初の省エネルギータイプの車両として1983(昭和58)年から1987(昭和62)年にかけて導入された。その後、2010年代に入り、混雑緩和を図るため西武池袋線や西武新宿線といった本線用の車両の4ドア化が進められ、他車両よりも早めの2014年に西武を引退している。そして一部が近江鉄道に譲渡され、長年、高宮駅の構内に停められていた。その車両がこのほど改造され、300形として“新車デビュー”した。
姿形は新101系と似た正面のガラス窓が2枚だ。だが、3000系は同じ2枚窓でも中央にある柱部分の出っ張りが無く、窓周辺と同じ濃い色に塗られていること。そのため柱部分が目立たなくなっている。また近江鉄道初の界磁チョッパ制御方式が使われている。
近江300形の車体色は濃い水色一色で100形と似ているが、正面の2枚窓部分の全体がブラックとなり、より引き締まった顔立ちとなっている。