【注目の譲渡車両⑥】元近鉄路線に残る近鉄電車が徐々に減少中
◆三重県・岐阜県 養老鉄道600系・620系(元近鉄1600系など)
三重県の桑名駅から岐阜県の大垣駅を経由して揖斐駅(いびえき)まで走る養老鉄道養老線。近鉄の元路線で、さらに養老鉄道が、近鉄グループホールディングの傘下の会社ということもあり長年、近鉄の電車が使われてきた。
これまで走ってきたのが近鉄600系・620系で、さまざまな種車を元に改造され、1992(平成4)年に養老線に導入されている。養老鉄道となった2007(平成19)年以降も走り続けてきた。そんな養老鉄道に、東急の7700系15両が2019年に導入され、状況がかわりつつある。それまで600系、610系、620系と、3タイプが走っていたが、すでに610系の全編成が引退となった。
600系と620系が16両ほど残る。従来の近鉄マルーン色の車体だけでなく、オレンジ色に白線のラビットカラー、赤地に白線の車両と、車体カラーはいろいろで、元東急車とともに沿線をカラフルに彩る。東急7700系は15両で導入は終了しているが、その後に、どのような電車が導入されるのか、元近鉄車は今後どうなるのか、気になる路線となっている。
【注目の譲渡車両⑦】京阪の名物「テレビカー」が富山の“顔”に
◆富山県 富山地方鉄道10030形(元京阪3000系/初代)
富山平野を走る富山地方鉄道の複数の路線。自社発注の電車、元西武鉄道の電車、元東急電鉄の電車、といろいろな電車が走りなかなか賑やかである。
そんななか、ややふくよかな姿形で走る電車を見かける。富山地方鉄道での形式名は10030形。形式名を聞いただけでは、元の電車が何であるかは分かりにくいが、この電車は京阪電気鉄道(以降「京阪」と略)の元3000系(初代)だ。
京阪3000系は、京阪の車両史の中でも革新的な電車だった。製造されたのは1971(昭和46)年からで、大阪と京都を結ぶ特急専用車両として生まれた。大阪と京都を結ぶ路線はJR東海道本線、阪急京都線などライバルが多い。そのため乗車率を少しでも高めるべく登場した電車で、オールクロスシート、冷房を装備、後には2階建ての中間車を連結した。また編成の一部車両の車内にテレビを備えていたことから「テレビカー」とも呼ばれた。40年にわたり走り続け2013年3月に京阪の路線から引退している。
そんな京阪3000系を大量に引き取ったのが富山地方鉄道だった。1990(平成2)年から17両が移籍している。ちなみに大井川鐵道にも2両が移籍したが、こちらはすでに引退している。
京阪は線路幅が1435mm、富山地方鉄道の路線は1067mmという違いもあり、入線の際には台車を履き替えるなど改造を施している。
富山地方鉄道に多くの元3000系が移籍したこともあり、同鉄道ではよく見かける存在となっている。移籍した中で異色なのが3000系の8831号中間車で、2013年に譲渡された。この8831号中間車は、富山地方鉄道の10030形では唯一の2階建て車両だ。他の10030形は2両編成だが、この8831号車を組み込んだ編成は3両編成となり、また塗装も京阪当時の色に塗り替えられた。編成名も「ダブルデッカーエキスプレス」となり、有料特急列車に使われ走り続けている。
編成こそ、京阪当時のような長大ではないが、3両編成になろうとも、往時の姿が楽しめるのは、鉄道ファンとしてはうれしいところだ。