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2020/9/6 19:00

希少車両が多い東海・関西出身の「譲渡車両」の11選!

【注目の譲渡車両⑩】変貌ぶりに驚かされる和歌山電鐵の電車

◆和歌山県 和歌山電鐵2270系(元南海22000系)

↑和歌山電鐵の「たま電車」。貴志駅の初代名物駅長のたまにちなんだ車両で、車体全体にたまのイラスト、正面がたまの顔となっている

 

和歌山駅〜貴志駅間を結ぶ貴志川線(きしがわせん)を運営する和歌山電鐵。岡山市を走る岡山電気軌道の子会社であり、両備グループの一員である。2006(平成18)年4月から、南海電気鉄道の貴志川線を引き継いで電車の運行を行う。

 

すでに14年の年月がたち、ネコ駅長、さらに「たま電車」「おもちゃ電車」などユニークな電車を走らせていることなど、全国にその名前が広まり、訪れる人が絶えない。ここでは、南海からの譲渡車両を中心に見ていきたい。

 

和歌山電鐵の2270系は元南海の22000系である。22000系は南海の高野線の混雑を緩和するための増結用車両として1969(昭和44)年に誕生した。高野線の看板電車は「ズームカー」と呼ばれたが、先輩格の21000系(大井川鐵道の章で紹介)に対して、混雑区間の増結用の車両ということで、「通勤ズーム」、さらに丸みがやや薄れたので「角ズーム」と呼ばれた。

 

南海は長く電車を使い続ける傾向があることもあり、同系統は今も、2200系や2230系に改造され、南海の路線で走っている。ちなみに高野線を走る観光列車2200系「天空」も22000系を改造した電車だ。

↑地元・和歌山の特産「南高梅」から作られる梅干しをモチーフに生まれた「うめ星電車」。和歌山電鐵運行開始10周年を記念して走り始めた

 

和歌山電鐵には同22000系の2両×6編成が、路線の引き継ぎに合わせて譲渡された。そして水戸岡鋭治氏のデザインにより刷新された。1編成ごとに外観や車内の設備を変更し、「たま電車」、「おもちゃ電車」、「うめ星電車」、「いちご電車」などに生まれ変わっている。

 

電車をここまで思いきったリニューアルさせる、いわば水戸岡ワールド全開の電車たち。やはり地方の路線を存続させるためには、こうした思いきった策が必要であることを、今さらながら示してくれた成功例と言って良いだろう。

 

【注目の譲渡車両⑪】元名古屋の地下鉄電車が讃岐路を走る

◆香川県 高松琴平鉄道600形(名古屋市交通局250形・700形など)

↑志度線の600形が瀬戸内海沿いを走る。元の車両が地下鉄用の中間車を改造されたこともあり、平坦な正面の形をしている

 

最後にちょっと珍しい譲渡車両が四国を走るので見ておこう。高松琴平電気鉄道(以下「琴電」と略)は高松を中心に、琴平線、長尾線、志度線(しどせん)の3路線を走らせている。この琴電に、他所であまり見かけない電車が走っている。

 

琴電の主力の電車といえば、主に元京浜急行電鉄の電車が多い。1070形(元京急6000形)、1080形(元京急1000形)、1200形(元京急700形)、1300形(元京急1000形)などといった具合だ。さらに元京王電鉄の5000系(初代)が1100形として走る。

 

琴平線、長尾線、志度線に正面が平坦で、車体の長さが他の電車よりも短い電車が走っている。この電車はどこからやってきた電車なのだろうか。この電車は琴電600形で、元名古屋市交通局(名古屋市営地下鉄)の250形などだ。

 

名古屋市営地下鉄の東山線を走っていた電車で、1965(昭和40)年の登場時には、それまで東山線を走っていた100形、200形の中間増備車として64両が製造された。100形、200形に比べて後から造られたこともあり、この中間車を活かそうと、生まれたのが250形だった。250形は地下鉄車両としては異色の中間車に運転台を付けた電車だった。

 

そのために正面が平坦な形となっている。250形は1983(昭和58)年から18両が改造を受け、東山線を走った。1999(平成11)年まで使われた後、琴電に譲渡されている。

↑車体の長さが15mと短い長尾線の600形。各扉に乗降用のステップがついているところが長尾線、琴平線を走る600形の特徴

 

名古屋市営地下鉄250形はサードレールから電気を取り入れる方式の電車だったために、琴電に移籍するにあたって、パンタグラフを取り付け、さらに冷房装置を付けるなどの改造工事が行われている。ほか名古屋市営地下鉄の700形・1600形・1700形・1800形・1900形の同形タイプの電車も運転台を取り付けられて、琴電600形となった。ちなみに名古屋市営地下鉄の東山線と、琴電の路線の線路幅は同じ1435mmで琴電用に改造は必要なものの、共通点があったこともこの電車が譲渡された一つの要因となったようだ。

 

琴平線や長尾線を走る電車の大半は車体の長さが18mの車両だ。しかし、600形のみ車体の長さが15.5mと短い。同路線を走る電車の中ではかなり特異な存在となっている。

 

◆香川県 高松琴平鉄道700形(名古屋市交通局300形・1200形)

↑志度線を走る700形。600形と比べると丸い姿で、地下鉄を走った当時の姿を色濃く残す。前照灯の形状といいレトロ感満点の電車だ

 

志度線には平坦な600形が正面に比べて、丸い顔立ちをしている電車も走っている。こちらは700形で、名古屋市交通局の300形と1200形が種車となっている。

 

300形は250形と同じく東山線を走った電車で、1200形は名城線・名港線を走っていた。この先頭車が琴電用に改造されて使われている。丸みを帯びた独特な姿で、琴電に入線するにあたって冷房装置を取り付けるために、名古屋時代に比べると、前頭部がやや削られた状態になっている。それでもかなり丸みを帯びたレトロな形状の電車で、当節あまり見かけない趣のある顔立ちとなっている。

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