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2020/9/21 21:00

2代目「スズキ・ハスラー」濃厚インプレ! 初代を超える出来栄えか?

2014年の発売以来、6年間で約48万台を販売する大ヒット作となった「スズキ・ハスラー」が2代目へと進化しました。ライバルのダイハツが今年に入り「タフト」を投入。SUV+軽ワゴンのクロスオーバークラスは、今後覇権争いが激化しそうな風向きですがタフトを迎え撃つ「2代目ハスラー」の出来映えはいかに?

 

[今回紹介するクルマ]

スズキ/ハスラー

128万400円~179万800円

※試乗車:ハイブリッドX(2WD、2トーンカラー仕様車)156万2000円

※試乗車:ハイブリッドXターボ(4WD、2トーンカラー仕様車)179万800円

↑丸型2灯の特徴的なヘッドライトを筆頭とするディテールを先代から継承しつつ、外観は一層SUVらしさが強調される造形になりました

 

先代を受け継ぎつつ新鮮味もプラス!

ワゴンR級のユーティリティを実現しながらSUVらしい走破性を両立。それらをアイコニックなスタイリングでまとめた初代「ハスラー」は、軽自動車のクロスオーバー市場を活性化させる大ヒットとなりました。その現役時代における月販台数は、平均で6700~6800台。モデル末期ですら5000台水準をキープしていたと聞けば、軽ユーザーの支持がいかに絶大であったかが分かろうというもの。

 

実際、初代ハスラーがデビューした当時、すでに長野(の田舎)に居を移していた筆者も道行くハスラーの増殖ぶりに驚かされた記憶があります。また、先代ユーザーは女性が6割を占めていたそうですが、乗っている人の年齢層を幅広く感じたことも印象的。高齢とおぼしきご夫婦が、鮮やかなボディカラーの初代で颯爽と出かける姿をしばしば見かけたことは新鮮でもありました。

 

そんな人気作の後を受けて登場した2代目は、当然ながら初代のデザイン要素が色濃く引き継がれた外観に仕上げられています。軽規格、ということで3395mmの全長と1475mmの全幅は変わりませんが、ホイールベースは先代比で35mmプラスの2460mm。全高は15mm高い1680mmとなりましたが、丸目2灯のヘッドライトを筆頭に全体のイメージは先代そのまま。

 

とはいえ、決して変わり映えしないわけではありません。ルーフを後端まで延長し、ボンネットフードを高く持ち上げたシルエットはスクエアなイメージを強調。バンパーやフェンダー回りも良い意味でラギッドな造形とすることで、SUVらしさと新しさが巧みに演出されています。

 

リアピラーにクォーターウインドーを新設。2トーンカラー仕様では、ルーフだけでなくこの部分とリアウインドー下端までをボディ色と塗り分けている点も先代と大きく違うポイントです。この塗り分けは、リアクォーターやルーフなどがボディ本体と別パーツになる「ジープ・ラングラー」などに見られる手法ですが、タフなイメージの演出という点では確かに効果的です。

↑写真のボディカラーはデニムブルー×ガンメタリック。バリエーションはモノトーン5色、2トーン6色の合計11色。2トーンのルーフは、ボディカラーに応じてホワイトの組み合わせもあります

 

初代ハスラーが成功した要因として、その個性的な外観の貢献度が大であることは誰もが認めるところ。となれば、後を受ける2代目が初代のイメージを受け継ぐことは“商品”として必然でもあるわけですが、新鮮味の演出も必須。ヒット作の後継はこのあたりのさじ加減が難題で、クルマに限っても失敗例は数知れず。

 

その点、2代目ハスラーの外観は上出来といえるのでは? という印象でした。ちなみにSUVとしての機能も着実に進化していて、走破性に影響するフロントのアプローチアングル、リアのディパーチャーアングルは先代比でそれぞれ1度と4度向上した29度と50度となっています。

↑タイヤサイズは、全グレード共通で165/60R15。ホイールは「X」グレードが写真のアルミとなり、「G」グレードはスチールが標準となります

 

室内はSUVらしい力強さと華やかさを演出! 装備も充実ぶり

そんな外観と比較すると、室内はSUVらしさを強調するべく一層“攻めた”デザインになりました。インパネはメーター、オーディオ、助手席上部の収納部(アッパーボックス)にシンメトリーを意識させるカラーガーニッシュを組み合わせてタフな世界観を表現。ガーニッシュはボディカラーに応じて3色が用意され、華やかさを演出するのも容易です。シートカラーもブラックを基調としつつ、ガーニッシュと同じ3色のアクセントを揃えて遊び心がアピールされています。

↑インパネは、シンメトリーなイメージの3連カラーガーニッシュが印象的。カラーは写真のグレーイッシュホワイトのほかにバーミリオンオレンジ、デニムブルーとボディカラーに応じて組み合わせられます。収納スペースが豊富に設けられていることも魅力のひとつ

 

↑スピードメーターと組み合わせる4.2インチのディスプレイには、スズキ車初のカラー液晶を採用。走行データをはじめ、多彩な表示コンテンツが用意されています

 

↑フロントシートは、インパネのガーニッシュと同じく3色のアクセントカラーを用意。シートヒーターが標準で装備されることも嬉しいポイントです

 

元々広かった室内空間も、新世代骨格の採用やホイールベースの延長などで拡大されています。後席は着座位置が高くなったにもかかわらず頭上空間が拡大、前席も左右乗員間の距離が広くなりました。また、フロントガラス幅の拡大やリアクォーターウインドーの追加などで視界が良くなっていることも、ユーザー層が幅広い軽ワゴンとしては魅力的ポイントといえるでしょう。

↑後席は座る人の体格や荷物に応じたアレンジが可能なスライド機構付き。一番後方にセットすれば、余裕の足元スペースが捻出できます

 

↑シートバック背面には操作用ストラップが設けられ、後席のスライドが荷室側からでも可能です。荷室の床面と後席背面は汚れや水分を拭き取りやすい素材を採用。荷室左右には販売店アクセサリー用のユーティリティナット(合計6か所)に加え、電源ソケットも装備されています

 

↑後席を完全に畳めば、最大1140㎜の床面長となるスクエアな荷室が出現。床下には小物の収納に便利なラゲッジアンダーボックスも装備されています

 

最新モデルらしく、運転支援システムも充実しています。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などがセットになった、「スズキ セーフティ サポート」は全車標準(ベースグレードのみ非装着車を設定)。新型ハスラーのパワーユニットは先代と同じく自然吸気とターボの2本立てですが、後者では全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線逸脱抑制機能がスズキの軽自動車で初採用されました。

 

また、対応するナビゲーションシステムと組み合わせればクルマを真上から俯瞰したような画像を映し出せる全方位モニターの装備も可能です(オプション)。

↑ターボ車には、スズキの軽自動車で初めて全車速追従機能付きのACC(アダプティブクルーズコントロール)が装備。同じくターボ車では運転支援機能のひとつとして車線逸脱抑制機能も標準で備わります(自然吸気は警報のみ)

 

このほか、SUVとしては先代から引き続いて4WD仕様に滑りやすい下り坂などで威力を発揮するヒルディセントコントロールを搭載。新型では、さらに雪道やアイスバーン路面での発進をサポートするスノーモードも新採用されました。新型ハスラーのボディは前述の通り秀逸な対地アングルを実現。最低地上高も180mmが確保されていますから、ジムニーが本領を発揮するような場所に踏み入れるのでもなければ悪路の走破性も十二分といえるでしょう。

↑4WDに装備されるヒルディセントコントロールやグリップコントロール、新機能となったスノーモードの操作はインパネ中央のスイッチを押すだけ

 

新開発の自然吸気エンジン採用。走りのパフォーマンスも進化!

新型ハスラーが搭載するパワーユニットは、前述の通り自然吸気とターボの2種。前者は、燃焼室形状をロングストローク化して燃料噴射インジェクターも気筒当たりでデュアル化。さらにクールドEGRを組み合わせるなどして、全方位的に高効率化された新開発ユニットが奢られました。

 

組み合わせるトランスミッションはどちらもCVTですが、こちらも先代より軽量化や高効率化を実現した新開発品となります。また、近年のスズキ車は電気モーター(ISG)が発進や低速時に駆動をサポートするマイルドHVがデフォになっていますが、新型ハスラーでは先代よりISGの出力が向上。容量こそ変わりませんが、リチウムイオンバッテリーの充放電効率を向上させたことでHV車としての機能が向上しています。

↑自然吸気エンジンはロングストローク化や燃焼室形状のコンパクト化、スズキの軽では初採用となるデュアルインジェクター(気筒当たり)やクールドEGRなどで一層の高効率化を実現。燃費は先代比で約7~8%向上したとのこと

 

↑ターボ仕様のエンジンは、新開発CVTなどとの組み合わせによって燃費性能が先代より約3~5%向上。ロングドライブを筆頭に、幅広い用途に使いたいユーザーにオススメ

 

その走りは、新型車らしく着実な進化を実感できる出来栄えでした。先代も軽ワゴンとしてはなんら不満のないパフォーマンスでしたが、新型ではアクセル操作に対する反応が一層リニアになり静粛性も向上。絶対的な動力性能で選ぶならターボ仕様ですが、日常的な使用環境なら自然吸気でも必要にして十分な動力性能です。

 

新世代プラットフォームのハーテクトや環状骨格構造のボディ、スズキ車で初となった構造用接着剤の採用などの効果か、走りの質感が向上していることも新型の魅力。フロントがストラット、リアはトーションビーム(4WDはI.T.L.=アイソレーテッド・トレーリング・リンク)というサスペションも、先代よりオンロード志向のセッティングとしたことで特に日常域では自然な身のこなしを実現しています。SUVとのクロスオーバーとはいえ、ハスラーは日常のアシという用途が主体の軽ワゴンのニーズに応えるクルマですから、新型の味付けは理にかなったものといえるでしょう。

↑写真は4WDのターボ仕様。絶対的な動力性能は自然吸気でも必要にして十分ですが、ターボなら余裕をもってSUVらしく使うことが可能です。ボディの剛性感や静粛性など、新型は走りの質感が向上していることも魅力的です

 

このように、先代が築いたキャラクターを継承しつつ軽クロスオーバー資質が着実に底上げされた新型ハスラー。とりあえず、ダイハツ・タフトを迎撃する備えは万全といえるのではないでしょうか。

 

SPEC【ハスラー・ハイブリッドX(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1680㎜●車両重量:820㎏●パワーユニット:657㏄直列3気筒DOHC●最高出力:49[2.6]PS/6500[1500]rpm●最大トルク:58[40]Nm/5000[100] rpm●WLTCモード燃費:25㎞/L

 

SPEC【ハスラー・ハイブリッドXターボ(4WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1680㎜●車両重量:880㎏●パワーユニット:658㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:64[3.1]PS/6000[1000]rpm●最大トルク:98[50]Nm/3000[100]rpm●WLTCモード燃費:20.8㎞/L

 

撮影/宮越孝政

 

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