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2020/9/20 18:30

新車導入も! 「臨海鉄道」の貨物輸送と機関車に注目〈首都圏・東海・中国地方の5路線〉

〜〜工業地帯に欠かせない貨物専用線「臨海鉄道」その2〜〜

 

各地の工業地帯に敷かれている臨海鉄道の路線。大半が旅客列車の走らない路線で、貨物列車が数時間おきに走る。

 

工業地帯を走ることもあり、人の目にあまり触れることがない。いわば裏方に徹している臨海鉄道だが、私たちの暮らしに欠かせない物流の流れが息づいている。今回は首都圏と東海地方、中国地方を走る5つ臨海鉄道を紹介。路線と輸送の状況、活躍するディーゼル機関車に注目してみよう。

 

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【はじめに】緑に包まれた路線や歴史的な施設が残る路線も

今回、紹介するのは首都圏と、東海地区、岡山県の倉敷市を走る5つの臨海鉄道である。この5つの臨海鉄道は、どの鉄道も個性に富んでいる。

 

中でも神奈川臨海鉄道、京葉臨海鉄道、名古屋臨海鉄道の3つは、京浜、京葉、名古屋といった物流拠点を走る路線だけに輸送量も多い。ほかにも衣浦臨海鉄道や、水島臨海鉄道は自社の機関車がJRの路線に乗り入れている。JRの旅客路線を走ることもあり臨海鉄道の機関車が牽引する貨物列車の姿を間近に見ることができる。

 

臨海鉄道というと工業地帯の中を走るとあって、背景に見えるのは工場のみと思われがちだ。ところが路線を巡ってみると、意外に緑に包まれているところも多く、写真写りの良い路線も目立つ。さらに橋りょうなどに歴史的な施設が使われているところもある。臨海鉄道は、貨物専用線という以上の魅力が隠されているのだ。

 

そんな各路線の特徴を次に見ていこう。

↑全国に10の臨海鉄道が走る。今回は首都圏と東海地方と中国地方を走る5社の現状を見ていきたい。紹介の5社は拡大マップも掲載した

 

【注目の臨海鉄道①】臨海鉄道屈指の規模・営業実績を誇る

◆千葉県 京葉臨海鉄道:1963(昭和38)年9月開業
◆路線:臨海本線・蘇我駅〜京葉久保田駅ほか計23.8km

↑北袖駅付近を走る京葉臨海鉄道のコンテナ列車。春には桜が咲き絵になる。途中駅はあるものの多くが簡易的な信号場という趣だ

 

千葉県の京葉臨海工業地帯の造成に伴い、当時の国鉄、自治体、進出企業の共同出資により、1962(昭和37)年に日本初の臨海鉄道会社として創業した。翌年に路線が開業している。

 

現在では千葉県内の鉄道貨物のほとんどを扱い、日本屈指の規模となっている。輸送トン数の合計が202万4368トンという輸送量を誇る。ちなみに臨海鉄道2位は神奈川臨海鉄道の137万5591トンになる(鉄道統計年報平成29年度版)。

 

【路線】 路線はJR内房線の蘇我駅から京葉久保田駅までで、国道16号に沿って臨海本線が走る。さらに途中から京葉市原駅、北袖駅へ分岐する路線がある。

 

JR貨物の電気機関車で運ばれた列車は、JR蘇我駅から京葉臨海鉄道のディーゼル機関車に引き継がれ千葉貨物駅へ向かう。JR蘇我駅に到着する下りコンテナ貨車、車扱貨車すべてが、千葉貨物駅に運ばれる。

 

路線一の規模を持つ千葉貨物駅で編成し直されて臨海本線をさらに南下する。輸送はタンク輸送と、コンテナ輸送が主体となる。時には大物車を使っての、大形変圧器の輸送も行われる。

 

沿線は京葉工業地帯を走るが、千葉貨物駅から先に連なる工場の多くが、木々に囲まれて造られている。臨海鉄道の線路は国道16号にほぼ沿っているが、国道との間にも木々が植えられる。左右とも、木々が立ち並ぶ風景がこの路線特有の魅力となっている。

 

路線で見ておきたい施設がある。それは橋りょうだ。路線を造る時に、他の路線で使われていた橋げたを転用して造られたものが複数あり、歴史的にも貴重な施設が見られる。例えば、千葉貨物駅に近い村田川橋りょう、こちらは東海道本線の大井川橋りょうに使われていた橋げたの一部を転用したもの。1911(明治44)年、米ブリッジ社製で、2018年に選奨土木遺産に認定された。ほか白旗川橋りょうの背丈の低い橋げたは、1918(大正7)年製の信越本線の犀川橋りょうを転用している。鉄道施設の複数が、歴史的に見ても価値があるのだ。

 

【車両】 現在の主力機関車はKD60形。臨海鉄道所有の機関車の多くが、国鉄DD13形をベースとしているが、KD60形も同様である。1号機から4号機の4両が活躍している。KD60形よりも前に造られたKD55形も残っている。

 

なお、京葉臨海鉄道からは新型機関車の導入が発表されている。そこには「老朽化した機関車を更新するために、JR貨物が開発したDD200形式の機関車をメーカーに発注し、令和3年5月に完成する予定です」(安全報告書より)とある。

 

来春には新型機関車が導入されるわけである。JR貨物のDD200形式と同じ、赤い塗装なのか、京葉臨海鉄道の伝統色の水色ベースとなるのか、気になるところだ。

↑タンク列車を牽引するKD60形1号機。右上の村田川橋りょうの橋げたは1911(明治44)年米国製で、選奨土木遺産に認定されている

 

【注目の臨海鉄道②】川崎と横浜臨海部に貨物路線を持つ

◆神奈川県 神奈川臨海鉄道:1964(昭和39)年3月開業
◆路線:浮島線・川崎貨物駅〜浮島町駅3.9km、千鳥線・川崎貨物駅〜千鳥町駅4.2km、本牧線・根岸駅〜本牧埠頭駅5.6km

↑京浜急行小島新田駅に近くの川崎貨物駅。小島新田駅前の歩道橋から見渡せる。右下は塩浜機関区でこちらも公道から見ることが可能

 

1963(昭和38)年、京浜工業地帯の鉄道貨物輸送を行うために、国鉄、神奈川県、川崎市、関係企業が出資あるいは用地提供をして第三セクター方式で設立された。現在では京葉臨海鉄道、名古屋臨海鉄道と並び、国内を代表する臨海鉄道となっている。

 

【路線】 路線は川崎市内を走る2路線と、横浜市内を走る1路線がある。川崎市内を走る浮島線は東海道本線貨物支線に接続する川崎貨物駅から浮島町(うきしまちょう)駅を結ぶ。また千鳥線は川崎貨物駅から千鳥町(ちどりちょう)駅間を走る。横浜市内を走るのが本牧線で、JR根岸線根岸駅から本牧埠頭(ほんもくふとう)駅まで走る。ほか川崎貨物駅から水江駅まで2.6kmの水江線があったが、2017年9月いっぱいで廃止されている。

 

川崎市内の路線では石油製品を扱うタンク車輸送、さらに化成品を積んだタンク・コンテナを運ぶ輸送が目立つ。珍しいのはゴミ輸送が鉄道貨物で行われていること。川崎市の一般廃棄物を運ぶ「クリーンかわさき号」で、武蔵野線梶ケ谷貨物ターミナル駅から、川崎貨物駅へ、さらに浮島線の末広駅まで輸送が行われている。輸送には専用コンテナが使われているので、結構目立つ。

↑湾岸を走る神奈川臨海鉄道だが意外に海辺らしい風景は貴重。写真は千鳥運河を渡る貨物列車。千鳥線はタンク・コンテナの輸送が目立つ

 

一方の本牧線では、20フィート、40フィートといった海上コンテナの輸送を中心に行われている。港に近く、また40フィートに対応できる鉄道貨物駅は数少ないため有効に役立てられている。

↑本牧線を走る貨物列車。大形の海上コンテナの輸送が主体となる。本牧埠頭駅付近からは横浜ベイブリッジも見える

 

【車両】 機関車はほぼ千葉臨海鉄道と同じ構成。国鉄のDD13形と同性能のDD55形が1990年代までに導入されている。臨海鉄道他社のDD55形にも同型機だが、各社各機で形や性能が微妙に異なっている。

 

2000年代に入ってDD60形が発注され、各線の主力として利用されている。ちなみに機関車の検査はすべて川崎貨物駅の構内にある塩浜機関区で行っている。自動車でいえば、車検にあたる全般検査も塩浜機関区で行う。多くの臨海鉄道がそうした検査能力を持たないため、JRなどに委託しているところが多いなかで貴重な存在となっている。

 

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