おもしろローカル線の旅70 〜〜えちぜん鉄道三国芦原線(福井県)〜〜
訪れた土地で乗車したローカル線。その地方らしさ、路線の魅力や、細やかな人々の思いに触れたとき、乗って良かった、訪れて良かったと心から思う。えちぜん鉄道三国芦原線(みくにあわらせん)はそんな魅力発見が楽しめるローカル線。秋の一日を思う存分に楽しんだ。
*取材撮影日:2013年2月10日、2015年10月12日、2020年10月31日ほか
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【魅力発見の旅①】日中は30分間隔で運行のパターンダイヤ
はじめに、三国芦原線の概要を見ておきたい。
路線と距離 | えちぜん鉄道三国芦原線/福井口駅〜三国港駅(みくにみなとえき)25.2km *全線単線・600V直流電化 |
開業 | 1928(昭和3)年12月30日、三国芦原電鉄により福井口駅〜芦原駅(現・あわら湯のまち駅)間が開業、1929(昭和4)年1月31日、芦原駅〜三国町駅(現・三国駅)間が延伸開業 |
駅数 | 23駅(起終点駅・臨時駅を含む) |
まずは現在の三国芦原線の運行ダイヤを見ておこう。列車はおよそ30分間隔で運行されている。三国芦原線の路線は福井口駅〜三国港駅間だが、福井口駅から発車する列車はなく、すべてが福井駅発となる。列車のダイヤは特に日中が分かりやすい。
福井駅発、三国港駅行は9時〜21時まで、福井駅を毎時09分発と39分発に発車する。途中駅でも毎時決まったダイヤに変わりがない。三国駅発、福井駅行の列車も同じで、日中は毎時同じダイヤで運行されている。こうした時間が決まったダイヤをパターンダイヤと呼ぶが、利用者にとっては非常に分かりやすく便利である。
鉄道ファンとしては30分刻みというのは非常にありがたい。途中駅で写真を撮る時にも、頻繁に列車が往来するので効率的だ。撮影が終えて、次の電車に乗る時にもあまり待たずに済む。
さらに日中の列車には女性のアテンダントが乗車する。乗車券、バスや施設入館料のセット券の販売から、沿線の観光アナウンスのほか、年輩の利用者には、席かけのお手伝いまでするなど、配慮には頭が下がる思いだった。
以前にも福井市を訪れて、居酒屋で女性スタッフの細やかな配慮に驚かされたことがある。車内でも同じような光景が見られた。福井県の県民性として「地道に愚直にこなす性質」「創意工夫の精神」といった傾向が見られるとか。
分かりやすく便利なパターンダイヤ、そして女性のアテンダントの姿勢に、同鉄道らしさが見えたのだった。
【魅力発見の旅②】列車は一両単行運転が大半を占める
さてえちぜん鉄道の電車をここで紹介しておこう。
・MC6101形
えちぜん鉄道の主力車両で、基本1両で走る。元は愛知県を走る愛知環状鉄道の100系電車で、愛知環状鉄道が新型車を導入するにあたり、えちぜん鉄道が譲渡を受け、改造を施した上で利用している。車内はセミクロスシートで旅の気分を盛り上げる。なお同形車にMC6001形が2両あるが、MC6101形とほぼ同じ形で見分けがつかない。
・MC7000形
元はJR飯田線を走った119系。えちぜん鉄道では2両編成のみの運用となり、朝夕を中心に運行される。MC6101形と同じくセミクロスシート仕様だ。なお、他にMC5001形という形式もあるが、1両のみ在籍するのみで、この車両はあまりお目にかかることが無い。
・L形ki-bo(キーボ)
L形電車は超低床車両で、黄色い車体の2車体連節構造(車体の間に中間台車がある)。福井鉄道福武線との相互乗入れが可能なように導入された。2016年生まれで、えちぜん鉄道初の新造車両でもある。愛称はki-bo(キーボ)で、「キ」は黄色、「ボー」は坊やや相棒を意味する。また「キーボ」は希望にも結びつくとされている。
2車体連接車のL形や福井鉄道の乗り入れ用車両(後述)を除き、列車のほとんどが1両で走っている。気動車での1両運行は全国で見られるものの、電車の1両運行となると希少となる。
列車によっては、中高生の通学時間と重なり多少、混む列車があるものの、大半の列車は空き気味となる場合が多い。えちぜん鉄道のように30分間隔で電車を走らせるためには、この1両での運行がとても有効だと思われた。