ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、ドイツのニュルブルクリンク北コースで、量産FF車最速記録を更新したメガーヌR.S.を掘り下げる!
※こちらは「GetNavi」 2020年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
【PROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】ルノー/メガーヌ R.S.
SPEC【トロフィー MT】●全長×全幅×全高:4410×1875×1435mm ●車両重量:1450kg ●パワーユニット:1.8L直列4気筒ターボエンジン ●最高出力:300PS(221kW)/6000rpm ●最大トルク:400Nm/3200rpm ●WLTCモード燃費:13.4km/l
448万1000円〜499万円
ルノーのエンジニアが日本の道路事情に合わせてチューニング
安ド「殿! このクルマ、最高ですね!」
永福「安ドは速いクルマが好きだな」
安ド「300馬力のパワーと、ターボエンジンのぶっといトルクを味わいながら、滑るように走れました!」
永福「滑るようにとは、乗り心地のことか?」
安ド「そうです! このスポーツ性とコンフォート性のバランスは素晴らしいと思います!」
永福「確かに、車名にトロフィーと付くハイパフォーマンス仕様にしては、乗り心地は悪くない」
安ド「ですよね!」
永福「日本には熱狂的なマニアが多く、メガーヌのR.S.に限っては、世界で何番目かによく売れている国だそうだ」
安ド「そうなんですか!」
永福「スポーツカー熱は冷め切っているように見えるが、実は日本は、スポーツカーマニアが非常に多い国なのだ」
安ド「良かったです!」
永福「わざわざルノーのエンジニアが来日し、入念に日本の道路事情を調査して、それに合わせたサスペンションチューニングをしたという」
安ド「そうなんですか!」
永福「具体的には、首都高のジョイント。ああいうものは欧州にはないので、通過した時の乗り心地に特に配慮したそうだ」
安ド「マジですか!」
永福「なぜ欧州にああいうものがないかというと、地震が少ないからだ」
安ド「あれは地震対策なんですか!」
永福「大地震の際、橋げたが分割されていたほうが、力を逃がしやすいのだ」
安ド「さすが、殿は首都高研究家ですからね!」
永福「話がそれた。私はやはり、こういうクルマはMTに限ると思ったぞ」
安ド「やっぱりMTは楽しいですね!」
永福「2年前のR.S.日本導入時はATしか設定がなく、なんだかあんまり楽しくなかったのだ」
安ド「そうなんですね!」
永福「あの時は『MTを出す予定はない』と聞いたが、その後ルノーは考えを変えたらしい」
安ド「良かったです!」
永福「こういうクルマはラクして速く走りたいわけではない。存在そのものが趣味なのだから、やることは多いほうがいい」
安ド「デザインもカッコいいですよね! フォグランプとかフロント中央、ルノーのエンブレム下のトロフィーデカールの位置とか、細かいところまで凝ってます!」
永福「神は細部に宿る、だな」
安ド「5ドアなので、実用性もあります!」
永福「限定車の『トロフィーR』だと、5ドアなのに後席がないぞ」
安ド「えっ! なぜっすか!?」
永福「軽くするためだ」
安ド「僕は後席アリがいいです!」
【GOD PARTS 1】スポーツエキゾーストマフラー
切り替えて楽しめる迫力のスポーツサウンド
マフラーには「アクティブバルブ」をR.S.モデル史上初搭載。これはサウンド切り替え機能で、スポーツモードにすれば、エンジンパフォーマンスを向上させながら、迫力のサウンドも楽しめます。パンパン鳴ってちょっとヤンチャですが(笑)。
【GOD PARTS 2】R.S.ビジョン
クルマ好きなら気になるチェッカーフラッグ型
フォグランプのデザインはチェッカーフラッグ型で、カーマニアの気持ちを高ぶらせてくれます。ちなみに「R.S.」は「ルノー・スポール」の略で、ルノーがこれまでレース活動で培ってきた知見が注ぎ込まれたモデルであることを示しています。
【GOD PARTS 3】インパネ
赤いステッチがドライバーの気持ちを高める
ステアリングやシートなど、各部に赤いステッチが施されているのはR.S.専用で、いかにもスポーティな雰囲気です。さらにカーナビの設定がないところもストイックで、運転に集中したいマニア向けのポイントではないでしょうか。
【GOD PARTS 4】5ドアボディ
ドアが左右2枚ずつ増えて使い勝手が良くなった
先代型メガーヌの「R.S.」は、3ドア、つまりボディ左右のドアが1枚ずつでした。しかし今回は5ドアです。この結果、使い勝手や利便性が向上しました。もちろん肝心のスタイルもスポーティ感を損なうことなく、きれいにまとめられています。
【GOD PARTS 5】エアアウトレット
空気の排出口が前にも後ろにも存在?
前後のフェンダー(タイヤの周囲を取り囲むボディのふくらみ)には、それぞれ後方にエアアウトレット(空気の排出口)が備わっています。ただよく見ると、フロントは穴が開いていますが、リアは穴がふさがっていてハリボテのようです。
【GOD PARTS 6】1.8Lターボエンジン
元から強力なエンジンをさらにパワーアップ!
ベースの「R.S.」がすでに279馬力なのに、「トロフィー」は専用チューニングが施され、300馬力にまで向上されています。組み合わせられるトランスミッションに6速MTの設定があることもうれしいですし、フィーリングも優れていて扱いやすいです!
【GOD PARTS 7】走行モード
ボタンひとつでよりハードなマシンに
ディスプレイ下に設置されている「R.S.ドライブ」ボタンを押せば、スポーツモードやレースモードへと切り替えられます。トランスミッションや車両制御装置、ステアリングなどのプログラムが変更され、走りがよりハードに変わります。
【GOD PARTS 8】ハンズフリーカードキー
ビックリするほど軽くてちょっと厚めのカードキー
現代のトレンドでもあるカードキーが採用されていますが、実際に持ってみるとかなり軽くてビックリします。カード型にしては少し厚みがあるので、ポケットに入れているとかさばりそうです。裏側に施錠/解錠ボタンが付いています。
【GOD PARTS 9】バケットシート
老舗が作った特製シートは触り心地も良し
バケットシート界の老舗ブランド「RECARO(レカロ)」社の特製シートがトロフィー専用装備として搭載されています。表面生地も、高級素材の代表的な存在であるアルカンタラが使用され、スウェードのような柔らかな感触を味わえます。
【これぞ感動の細部だ!】足まわり
硬めでも乗り心地は悪くないベストセッティング
乗ってすぐに感じられる、サスペンション設計の素晴らしさは感涙モノです。スポーツモデルらしく硬めですが、乗り心地は決して悪くありません。きっとカーマニアなら「快適!」と絶賛することでしょう。もちろん、サーキットでは素晴らしいコーナリング性能を引き出してくれます。さらに後輪操舵機能「4コントロール」も搭載されていて、小回り性能と安定性を両立しています。