【注目! 2021年③】北海道では減便傾向が強まるダイヤ改正
この春のダイヤ改正では、新しく登場する特急列車がある一方で、大幅に減便される特急や、廃止される特急が現れている。特急の減便は、特に列島の南北、北海道と九州で目立つ。代表例を2つあげておこう。
◆臨時特急に降格するJR北海道の特急「大雪」
訪日外国人の大幅減少に最も苦しんでいるのがJR北海道ではないだろうか。コロナ禍となる前には、北海道内の路線は四季を通して、多くの訪日外国人で賑わっていた。ところが……。
ダイヤ改正後にはJR北海道の大半の特急が減便プラス、編成の車両数を減らすなどの対応を行う。その中で特に目立つのが、特急「大雪」の減便だ。現在は旭川駅〜網走駅間を毎日2往復している「大雪」の運行が大きく変わる。
2往復走る特急「大雪」の全列車が閑散期には、曜日運休となってしまう。具体的には4・5・10・11月の火・水・木曜が運休となる。つまり毎日運行されている定期運行の特急が臨時運行となるわけだ。ちなみに札幌駅〜網走駅間を走る特急「オホーツク」の1日2往復は、これまでと変らず毎日運行される予定だ。
◆JR九州の特急「有明」は廃止に
JR九州でも特急の減便が目立つ。JR九州のプレスリリースでは、その減便理由として、コロナ前と現行でどのぐらい利用状況が変化しているかまで明かしている。現行で、各特急の乗車率が20〜57%も減っているというのだから厳しい。今の窮状を何とか知ってもらいたいという思いなのだろう。
この春のダイヤ改正では減便でなく、列車自体が廃止される特急も現れた。福岡県内の大牟田駅〜博多駅を結ぶ特急「有明」である。
実は特急「有明」は現在、早朝に走る大牟田駅発、博多駅行きの1本しか残っていない。1本となってしまったのは、2018年春のダイヤ改正からで、その前は夜に下りが3便、朝の上りが2便走っていた。運転区間は下りが博多駅発で大牟田駅の先にある長洲駅(ながすえき)まで走っていた。また朝に走る上りは2本とも長洲駅発で、1本が博多駅行、もう1本が博多駅の一つ先の吉塚駅まで走っていた。
平行して九州新幹線が通っているが、新幹線の駅が遠い利用者にとっては、便利な通勤特急だったわけである。3年前に本数が減り、また運転区間を短くなった上に、さらに2021年には列車自体も消滅してしまう。
大牟田市街に在住する人の場合は、西鉄大牟田駅が隣接しているので、特に不便さは無いのかも知れない。だが、途中の停車駅で同特急に乗車してきた人たちにとっては痛手となりそうだ。なおダイヤ改正後は、特急「有明」の発車時間と同じ、大牟田駅発、鳥栖駅行き快速列車が運転される予定だ(平日のみ)。JR九州ではこの列車を利用、鳥栖駅で接続する特急「かもめ」への乗換えを呼びかけている。
減便される列車が多いJR九州の特急の中で、珍しく増便されるのが特急「海幸山幸」。同列車は週末を中心に宮崎駅〜南郷駅間を1往復走り、日南海岸の素晴らしさが楽しめる列車として人気となっている。多くの利用者が見込まれる日には2往復される予定だ。減便傾向が強まっているだけに、こうした増便の動きは、唯一の光ではあるが歓迎したいところだ。
【注目! 2021年④】今年初登場の新車はやや地味め?
2020年は新しい特急形電車など、華やかな新型車両が続々と登場した。東京五輪の開催年に合わせてという動きでもあった。今年は、登場する新車には失礼ながらが、やや地味めとなっている。代表的な車両を見ておこう。
◆房総・鹿島エリア向けJR東日本E131系
千葉県内を走る内房線、外房線、成田線・鹿島線といった路線には、長い間、京浜東北線を走った209系0番台を改造、4両、6両編成にした2000番台・2100番台が使われてきた。もともと209系は「重量半分・価格半分・寿命半分」という発想で開発された。房総エリアを走る209系の車歴はすでに25年以上となる。ここまで持たせることは考えて造られてこなかったこともあり、そろそろの置き換えが予想されていた。
代わる新しい車両はE131系で、2両編成が基本となる。総合車両製作所新津事業所で順調に製造が進められていて、すでにその多くが幕張車両センターに運び込まれている。今後は試運転が進められ、ダイヤ改正とともに内房線、外房線、成田・鹿島線の一部区間で運転開始される予定だ。
さらに佐原駅〜鹿島神宮駅間ではワンマン運転が実施される。これまで209系では車掌が乗務する形での運行が行われてきたこともあり、今後はワンマン化で一層の省力化が図られることになる。
◆東京メトロ有楽町線・副都心線17000系
東京メトロ有楽町線と副都心線では7000系と10000系の2タイプが走っているが、7000系はすでに路線開業以来、約45年以上も走り続けている。この7000系の置き換え用に用意されたのが新型17000系だ。
17000系はこれまでの7000系や10000系が持つ丸いヘッドライトを踏襲、両線のゴールドとブラウンのラインカラーが車体に入る。新しい車両らしく、全車両にフリースペースを設置、車両の床面の高さを低くして、ホームとの段差を低減させるなどの工夫が盛り込まれている。
2020年度中には運行開始し、2年後の2022年度までには全21編成、180両が導入される予定となっている。
なお半蔵門線にも新型車両18000系が2021年度上半期に導入される。有楽町線・副都心線用の17000系とほぼ同じ形で、車体には半蔵門線のパープルのラインカラーが入る。こちらは8000系の置き換え用で19編成、計190両が導入される見込みだ。
【注目! 2021年⑤】JR貨物では新車がどんどんと投入される
トラック輸送から鉄道貨物輸送にシフトする流れが加速している。モーダルシフト、および国の政策として2050年にはカーボンニュートラル化を目指すとされ、鉄道貨物輸送への移行はますます強まりそうだ。
春のダイヤ改正でもそうした需要にあわせて、複数の新列車の運行が始まる。新列車は積合せ貨物という形体を取る。複数の荷主の荷物を積み合わせ輸送する新しいタイプの貨物列車で、3往復が新設される。
3往復は、大阪府の安治川口駅と岩手県の盛岡貨物ターミナル駅間(20両編成)、名古屋貨物ターミナル駅と福岡貨物ターミナル駅間(24両編成)、東京貨物ターミナル駅と広島県の東福山駅間(20両編成)が運行開始となる。それぞれ1両に12フィートのJRコンテナを5個積むことができる。
機関車の新造も活発だ。2021年に予定されている機関車は以下の通り。
EF210形式直流電気機関車が11両、DD200形式ディーゼル機関車が6両、HD300形式ハイブリッド機関車が1両、それぞれ増備される。EF210形式は、現在の増備は300番台が中心となっている。元々、300番台は山陽本線の“セノハチ”と呼ばれる急勾配区間で貨物列車の後押しをする補機用機関車として開発された。現在は、後押しとは無縁の新鶴見機関区にも増備が始まっていて、東海道・山陽線を中心に貨物列車の牽引を目にすることも多くなっている。
一方、DD200形式は、貨物駅構内の貨車の入換え、さらに本線で列車を牽くことができる万能タイプのディーゼル機関車だ。すでに石巻線ほか貨物専用線を中心に貨物輸送に従事している。
新型機関車が装備されるということは、一方で引退となる古い機関車が出てくることに。EF210形式の増備は、EF65もしくはEF66といった国鉄形、もしくはJR初期の車両の引退に、またDD200形式の増備はDE10形式の引退ということにつながりそうだ。世の中の常とはいい、華やかになる反面、そうした話題に触れる機会も多くなりそうで、古い機関車ファンにとっては、ちょっと寂しい2021年となりそうだ。