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2021/2/24 20:45

2021年すでに消えた&これから消えていく? 気になる車両を追った【前編】

〜〜2021年に消滅が予定されている車両特集その1〜〜

 

春は別れとともに出会いの季節でもある。鉄道の世界でも同じ。3月のダイヤ改正をきっかけに、古い車両が消えていき、また新しい車両が登場する。今年はJR・私鉄ともに、そうした移り変わりが多くなりそう気配だ。

 

中には時代を彩った車両や、鉄道輸送を大きく変えた車両も含まれる。すでに引退した車両も含め、消えていく、また消えていきそうな車両の姿を追った。

 

【はじめに】混乱を避けるため最終運転日も非公開が多くなった

この1〜2年、複数の車両が引退していった。その大半がセレモニーもなしに表舞台を去っている。

 

やはり2018年秋に行われた東京メトロ千代田線の6000系電車の「さよなら列車」の激しい混雑と混乱が、大きく影響しているようだ。鉄道会社として“さよなら運転”は、長年走ってきた車両の最後のはなむけとして、またファン向けの“大切なイベント”だった。ところが残念なことに、この「さよなら列車」の運転ではマイナス効果に結びついてしまった。

 

昨今、こうした悪しき例が各地で見られるようになり、時に過熱しがちとなっている。ましてコロナ禍であり、無用なファン集中を避けたいということもあり、運行終了日も公開されること無く、静かに消えていく車両が多くなっている。こうした傾向は、筆者も鉄道ファンの一人として非常に残念であり、悲しいことととらえている。

 

そうした傾向が強まるなか、2021年の春に去っていく車両が目立っている。各社のすでに消えた&消えそうな“気になる車両”を見ていこう。

 

◆注目を浴びる「JR東日本185系」だが完全引退はまだ先に

2021年に消えていきそうな車両。まず首都圏ではJR東日本の185系を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。国鉄形特急電車として注目を浴びることも多い。

 

185系は国鉄時代から特急「踊り子」などに使われ、東海道本線を彩ってきた車両である。さらに通勤用快速列車や、臨時列車として活用され、多くの通勤客や旅行客を運んできた。この春に185系は特急「踊り子」、そして湘南ライナー、おはようライナー、ホームライナーなどの役目を終える。

↑富士山を背景に伊豆箱根鉄道駿豆線を走り続けてきた185系特急「踊り子」。3月13日以降は「踊り子」すべてがE257系に変更される

 

これで引退なの? と思われそうだが、今回の動きは定期運用が終了するところまで。しばらくは臨時列車用や団体列車用として働きそうだ。実際の引退は2022年度という情報もあり、この時に本当の引退となりそうだ。

 

ここからは2021年に消えた、もしくは消えていくことが決まっている車両、さらに消えていきそうな車両を見ていこう。

 

【消える車両その①】御召列車としても走った近鉄“鉄路の名優”

◆近畿日本鉄道12200系電車

↑近鉄名古屋線を走る12200系。後ろに22000系を連結する。後継車両は塗装が更新されたが、12200系のみ近鉄伝統の特急色で走った

 

大手私鉄の中で最も長い路線距離を誇る近畿日本鉄道(以下「近鉄」と略)。大阪と名古屋を結ぶ名阪特急を代表に、各路線に多くの特急列車を走らせてきた。最新の80000系「ひのとり」をはじめ、50000系「しまかぜ」など、特急形電車らしい華やかさと共に、機能性を合わせてもつ電車を多く開発し、活用してきた会社である。

 

近鉄の特急形電車は実に多彩で、なじみのない人にはちょっと分かりにくいかも知れない。2021年春に引退していく車両は12200系だ。1967(昭和42)年に登場した12000系の後継増備車として1969(昭和44)年に誕生した。8年にわたり製造され、近鉄の特急電車の中では最大の168両が製造された。

 

初期の車両はスナックコーナーを備えたことから“新スナックカー”という愛称も付けられていた。当初から120km/hの最高速度に対応、4両化、2両化され、さまざまな区間を走る特急列車として活用された。

 

近鉄の特急電車の優れたところは、利用客の増減に合わせて、列車の編成車両数を変えられるところである。多客期には4両、6両、8両といった具合に車両編成を増やす。閑散期には4両、2両と編成車両数を減らす。こうしたフレキシブルな運転が可能なように、新旧や形式にかかわりなく、車両を連結させて走ることができるように造られている。

 

◆すでに定期運用は終了、残るは3月に団体列車用に運行か

この12200系が一番輝いたのは御召列車として使われたことでないだろうか。さらにエリザベス2世が訪日された際に乗車されるなど、私鉄特急として輝かしい歴史を持つ。

 

そんな12200系も平成に入りリニューアルされ使われ続けてきたものの、生まれからすでに半世紀がたつ。すでに定期運用は2月12日(引退日は非公開だった)に終了している。3月23日に団体向けの企画列車が予定されていて、この時がおそらく本当の最後の走行になりそうだ。 “鉄路の名優”が静かに去っていく。

 

【消える車両その②】先頭にパンタグラフを持つ名鉄の「特別車」

◆名古屋鉄道1700系電車

↑先頭車の前にパンタグラフを付けた名鉄1700系。白地に赤のラインと、おしゃれな姿で人気の車両だった

 

名古屋鉄道(以下「名鉄」と略)の特急形電車は他の私鉄特急とは異なった特徴を持つ。空港アクセス特急「ミュースカイ」を除き、特急形電車は、豊橋駅側に「特別車」2両を連結する。この2両の「特別車」のみ有料の指定席料金を払う仕組みだ。もともと全車特別車だったのだが、有効な列車運用を、として2008(平成20)年から取り入れたシステムだった。

 

1700系はこのシステム変更のために、旧1600系を改造した形式だ。3両編成の2両を利用、新造した2300系4両と組み合わせ6両編成とした。よって、豊橋側の2両が1700系、岐阜側の4両が2300系と、異なる形式を組み合わせ走った。

 

外見も異なっていて、特別車側の1700系は前後2扉仕様、側面窓が横に広がる。一方の岐阜側2300系は3扉の普通車という異種の組み合わせで走る。とはいっても、違和感のない組み合わせで、特に新塗装に変更したのちは、白地に赤のライン、先頭の排障器や額の部分に赤というスタイルが目立っていた。

 

先頭車の頭にパンタグラフがあるので、撮影はしづらい車両だったものの、迫力があって筆者としては好きな車両でもあった。

 

◆1月に撮影会を開催。すでに2月で定期運用が終了

1700系は2両×4編成が使われていた。1600系として生まれたのが1999(平成11)年のこと。2008(平成20)年に改造されてからまだ10数年と短い。ところが、車両数の少ない特異な形式ということもあったせいなのか、車両が生まれて20年足らずながら、引退となってしまった。

 

なお、1700系と編成を組んでいた2300系には新たに「特別車」用の2200系30番台が新造され、前後が同じ顔形の2200系6両編成となり走り始めている。

 

1月には最後の撮影会が車両基地で開かれ、運転終了日は発表されることもなく2月10日で運用を終えている。コロナ禍のさなかということもあり、ちょっと悲しいお別れとなった。

 

【消える車両その③】乗降をスムーズに!5扉車の京阪の名物電車

◆京阪電気鉄道5000系

↑5扉というユニークな姿の京阪5000系。日中は3扉のみの開け閉めで運行した。正面もひさしが付く形で個性的な姿をしている

 

京阪電気鉄道(以下「京阪」と略)の5000系は5扉という通勤形電車。ラッシュ時の混雑緩和、そして乗降時間の短縮のために1970(昭和45)登場した。まさに大量輸送時代の申し子でもあった。

 

京阪のホームページにある車両紹介コーナーでは「閑散時間帯は2扉を閉め切り、格納していた座席を復して、座席定員を増やすという離れ業と可能としました」と解説している。こうした扉の数に注目されがちな車両だったが、京阪初のアルミ合金製車体を採用するなど画期的な通勤形電車でもあった。

 

◆5扉での運用は2月で終了。6月ごろに運行終了か

保有車両は7両×4編成、計28両と少なめながら、50年にわたり走り続けてきた。すでに1月末で5扉の利用を終了、他の車両と同じ3扉のみの利用での運行に変更されている。京阪では13000系の導入が増えているが、5000系も新型13000系が増備される6月ごろに運行終了となりそうだ。5000系も現在の状況が続くと、運用終了日が発表されずに静かに消えていくことになるのだろうか。

 

【消える車両その④】113系を交直流電車化した七尾線用赤色電車

◆JR西日本415系電車

↑能登半島名産の輪島塗をイメージした赤色で塗られた415系。車体の姿は元となった113系そのままの姿をほぼ維持している

 

ここからは引退するJRの車両を見ていこう。まずは北陸、石川県を走る七尾線の電車から。七尾線とは言うものの、七尾線の電車は全列車が金沢駅まで乗り入れる。そのため金沢駅〜津幡駅(つばたえき)間は旧北陸本線、現在のIRいしかわ鉄道線を走る。

 

ここを走る普通列車用の電車には赤色の415系と、413系(後述)が長年、使われてきた。415系と413系は共に交直両用の電車だ。七尾線が電化されたのは1991(平成3)年のこと。この七尾線は直流方式で電化された。乗り入れる旧北陸本線は交流電化区間のために、交直流電車が必要とされた。

 

七尾線用に新たな交直流電車を新造することを避けたいJR西日本では、次のような方法で対応する。まずは北陸本線用の交直流特急形電車485系を、北近畿向けの特急に転出させるにあたって不要になった交流用の機器を取り外した。そして近郊形電車の113系に取り付けるという荒療治を行ったのである。こうして415系の800番台の11編成33両が生まれたのだった。

 

◆3月のダイヤ改正で新製の512系と入換えが完了

七尾線を走る415系は113系だったころも含めると40年〜50年といった経歴を持つ車両で老朽化が進んでいた。JR西日本では2020年10月から七尾線用に新造した521系100番台を投入。同車両はワンマン運転時に利用が可能な車載型ICOCA改札機を搭載している。

 

この改札機に交通系ICカードをタッチすれば精算可能で、2021年3月のダイヤ改正から正式に導入される。この新型改札機の導入もあり、旧形の415系、413系は引退となる。改造される前の113系は、今もJR西日本管内では走り続けている。改造された車両の方が早い引退となった。

 

【消える車両その⑤】七尾線には2扉の赤色電車も走っている

◆JR西日本413系電車

↑七尾線を走る413系。415系と正面の形はほぼ同じだが、上部の行先表示が埋められ、扉が2ドアという違いがある

 

七尾線には413系という電車も走っている。車体は415系と同じ赤色、正面は415系とほぼ同じで見分けがつきにくいが、行先表示部分が鉄板で埋められ、また乗降扉が2つということで別形式の413系と分かる。

 

この413系の生い立ちも興味深い。生まれは1986(昭和61)年のこと。当時、財政難に陥っていた国鉄は新造の電車を造ることが難しく、そこで既存の交直両用の急行形電車の部品を多く流用して413系という交直両用の近郊形電車を造った。

 

そうした廃車の部品の流用したこともあって、413系の新製車両数は少なく31両のみ。そして北陸地区に投入された。ちなみに、717系という交流専用の兄弟車両が東北地区と九州向け用に生み出されたが、こちらはすでに全車が引退している。

 

◆あいの風とやま鉄道に同形の車両がわずかに残るのみに

JR西日本の413系は16両とすでに減っていた(2020年4月1日現在/2編成はクハ455形と連結。こちらを含めれば計18両となる)。すべて金沢総合車両所への配置だったが、2021年3月のダイヤ改正で七尾線は521系となり、また北陸本線金沢駅〜小松駅間での運用がわずかに残っていたが、すべてこちらも521系に代わる予定となっている。

 

残りはあいの風とやま鉄道に譲渡された車両のみとなるが、こちらは観光列車に改造された編成もあり、もうしばらくは走り続けることになりそうだ。

 

※まだまだあります2021年に消えそうな車両。ここで紹介した以外の車両は【後編】に続きます。

 

※3月1日注記:名古屋鉄道の記述に関して誤りがありましたので訂正致しました。