出かけた先で気軽に移動手段が得られる電動モビリティのシェアリングサービスに注目が集まっている中、「e-SHARE石垣」では一足早く2018年から沖縄県・石垣島で電動スクーターのレンタルサービスをスタートさせています。現在は電動キックボードも含めた電動モビリティのレンタルサービスも提供中。今回はレンタルサービスの中心として展開している電動スクーター「Gogoro(ゴゴロ)」の試乗レポートをお届けします。
台湾で人気の電動スクーター「Gogoro」を日本で唯一体感できる
Gogoroとは一体どんな電動スクーターなのでしょうか。この電動バイクは台湾製で、2015年に台湾国内で発売して以降、順調な販売実績を続けています。近年では台湾の新車販売で10%近いシェアを占めるまでになっているほど。人気のポイントは電動車で最大の課題であるバッテリー問題を、バッテリーパックの定額制シェアサービスによって解決したことにあります。
Gogoroは2本のカートリッジ式バッテリーを使って走行しますが、航続距離はフルチャージで100キロ程度。実用距離では70~80キロ程度となりますが、このバッテリーを交換できるステーションを台湾国内の約1200か所以上設置し、定額制シェアサービスとして契約者はここでいつでも交換できるようにしたのです。交換に要する時間は最短6秒! このサービスを活用すればGogoroによる台湾一周も不可能ではありません。そんな気軽さと便利さが台湾で人気を呼んだのです。
そのバッテリーのシェアシステムを活かしながらGogoroのレンタルサービス「GO SHARE(ゴーシェア)」を展開しているのが「e-SHARE石垣」です。石垣島内には5か所のバッテリーステーションを用意し、レンタル利用者はいつでも無料でバッテリー交換をできるようにしています。石垣島は「ユーグレナ石垣港離島ターミナル」から島内最北端の「平久保崎灯台」までの距離は片道40キロ強ありますが、このサービスを利用することで途中立ち寄っても航続距離を心配することなく走行できるわけです。
レンタルできるのは原付50ccと二人乗りができる125ccの2タイプ
「e-SHARE石垣」で貸し出ししているGogoroは、一人乗り用50ccタイプ(原付一種)と、二人乗り用125ccタイプ(原付二種)の2種類です。両者とも車体そのものは同じものですが、50ccタイプのモーター出力を0.6kW以下にすることで原付一種の扱いとしています。料金は3時間まで、50ccタイプが3500円、125ccタイプが4500円。4〜24時間で50ccタイプが4500円、125ccタイプが6000円。以後、24時間ごとにそれぞれ2000円、3000円が加算されます。(※いずれもヘルメット・レインコート・電池交換費用・車両保険と免責保証料を除いた「保険料金」含む)
貸出場所は「ユーグレナ石垣港離島ターミナル」と「南ぬ島石垣空港近くのレンタカーステーション」の2か所で、石垣島空港ではなんと市街地ホテルまでの荷物配送も無料で行ってくれるとのこと(諸条件あり)。空港に着いた後、スクーターでの移動では荷物の運搬が心配になりますが、これなら安心です。なお、Gogoroは利用当日でも借りられますが、到着時刻に合わせて希望の車両に乗りたいならあらかじめWebサイトで予約しておくことをおすすめしているとのことでした。
さて、今回は「ユーグレナ石垣港離島ターミナル」で50ccタイプを3時間だけ(3500円)借りることにしました。ターミナル内には離島へ行く乗船券売り場が並びますが、e-SHARE石垣のカウンターは向かって左側の安栄観光の一角にあります。カウンターで免許証を提示して必要事項を記入し、料金を支払えば手続き完了です。島内にあるバッテリーステーションの場所も案内してくれます。使い方については、駐車場でバッテリー交換方法を含めてレクチャーをしてくれるので、初めて使う人でも心配は要らないでしょう。
貸し出し時はバッテリーがほぼ満タン状態で、メーター内で表示される推定可能走行距離は約97.5kmとなっていました。本当はバッテリーが切れるギリギリまで走ってみたかったのですが、時間の関係で最も近い観光地でステーションもある川平湾(かびらわん)までの往復を体験することにしました。
想像以上にパワフルな走り。バッテリー交換もアッという間に終了
Gogoroの電源は、まず丸形のワイヤレス式スマートキーで電源をオンにし、次に左ブレーキを握りながら中央インパネ部分にある「Go」ボタンを少し長めに押すと走行モードに切り替わります。右手側がスロットルで左右にはブレーキレバーがあり、ウインカーやハザードなども一般的なスクーターなどと同じです。一方で左のハンドル裏には後退用のスロットレバーがありました。駐車時などバックしたいときに便利です。あとは一般的なスクーターと同じで、右側の回転式スロットルを回すと走り出します。
インパネは液晶表示で中央部分に速度が大きく表示され、走行可能の目安となる残距離や2個のバッテリー残量も一目でわかるようになっています。ちなみにサイドスタンドを降ろして駐車すると5分で自動的に電源が切れる仕組みです。便利な機能ではありますが、注意すべきはスマートキーをカバンに入れたままうっかり収納スペースに入れないことです。そのまま5分後にはシートが自動ロックされて、電源も入れられないという悲しい事態を招きかねないからです。スマートキーはカバンに入れずに首からぶら下げて使うようにしましょう。
走り出してみるとそのパワフルさは想像以上でした。基本が125ccクラスと同じ車体を使っていることを実感するような力強い走りです。体重が80kgほどある筆者ですが、石垣島の上り坂でも速度を落とすことは一切なく、それどころか、法定速度で走っていてもそれをラクに上回りそうなほどの力強さ。しかもモーターらしい低速のトルクが発進時の加速力をさらに助けます。川平湾までストレスはまったく感じずに走ることができました。また、ウインカーは交差点を曲がれば自動的にオフされますし、低速走行時は周囲に車両の存在を知らせる通報音も発します。街乗りでもかなり使いやすい設計となっているようでした。
バッテリーの交換は、Gogoroから2本のバッテリーを順に取り出して充電ステーションの空いている部分にセットします。するとステーションで充電が完了している別のバッテリーを即座にポップアップされるので、それをGogoroにセットします。電動車でありがちな充電時間を気にすることなく、バッテリーパックを交換するだけで満充電になるのです。電動バイクということでガソリン代を気にせず走れ、駐車場の心配もほぼゼロ。この使い勝手を知ったら、電動スクーターってこんなに便利だったの? と誰もが思うことでしょう。
離島民の生活の足としても根付く電動スクーター「Gogoro」
最後に、Gogoroの石垣島ならではの利用のされ方をe-SHARE石垣のスタッフに聞きしました。それは離島に住んでいる方の利用率がレンタル全体の3割ほど占めているということです。離島では船便によって日用品などの品物が運ばれるために購入価格は高めとなりがちです。そこで離島に住んでいる人は定期的に石垣島を訪れ、その時の足として電動スクーターを利用するのだそうです。ガソリンを入れる必要もなく、用事だけを済まして離島ターミナルへ戻る。その便利さが人気を呼んでいる理由とのことです。
ただ、疑問に思ったのは、スクーターでは買い物できる量が限られてしまうのではないかということ。すると石垣島には、それに対応するシステムができていました。スーパーなどでは購入したものを離島ターミナルまで運ぶサービスが提供されているんだそうです。こうして石垣島では、電動スクーターは離島の方々の生活にもしっかりと根付いているんですね。ちなみに少し前までは、石垣島の在住者に対してGogoroの販売を行い、バッテリーの定額利用サービスを提供していたそうです(現在は休止中)。
南の島の風を身体で感じながら電動スクーターで石垣島の海岸線を走るのは本当に爽快! 125ccタイプなら2人での乗車もできますから、パートナーとの一緒の行動にも最適です。電動スクーターGogoroは島内観光用の新たな足として、多くの方におすすめできるサービス。
日本国内では他にも、瀬戸内海に浮かぶ「豊島」にてホンダの電動バイクレンタル事業を展開中です。ガソリンを入れることがない電動モビリティのシェアリングは、利便性と環境面から考えても離島などで確実に広がっていくことでしょう。
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