ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、かつて日本のベストセラーとなったハイブリッド専用コンパクトカー、アクアの新型を取り上げる!
※こちらは「GetNavi」 2021年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】トヨタ/アクア
SPEC【Z 2WD】●全長×全幅×全高:4050×1695×1485mm●車両重量:1130kg●パワーユニット:1.5Lエンジン+モーター●エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm●エンジン最大トルク:12.2kg-m(120Nm)/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:33.6km/L
198万(税込)〜259万8000円(税込)
先代より断然洗練されたデザインに加え、走りも燃費も高水準と死角なし
安ド「殿! 殿は先代アクアのオーナーでしたね!」
永福「うむ。ディーラーで一番に予約して新車を購入し、4年半乗った」
安ド「フェラーリ乗りで有名な殿がなぜアクアに? というのは、皆に言われたと思いますが、一体なぜですか?」
永福「10年前、私は“燃費”に燃えていた。プリウスより軽くて小さいアクアは、プリウスより燃費が良いはず。つまり世界一燃費が良いはずだ! と思って買ったのだ」
安ド「で、どうでした?」
永福「4年半の平均でリッター20kmほど。プリウスよりほんのわずか下だったようだ。その点は期待外れだったが、先代アクアは見かけによらずハンドリングが非常に良かった」
安ド「そういうイメージ、ないですよね!」
永福「世間的には、すごく平凡なクルマ、というイメージだったが、クルマは見かけによらないな」
安ド「で、新型はどうですか?」
永福「まったく弱点のない、素晴らしいクルマだ」
安ド「素晴らしいですか!」
永福「何よりもまず、デザインが良くなった。キープコンセプトだが、先代のアクアより数段洗練されている」
安ド「ヌメッとしてるけど、どことなく上品ですよね」
永福「写真ではわからないかもしれないが、実物はフランス車のようなエスプリがある」
安ド「走りも良いですね! きっと遅いんだろうと思って乗ったら、加速の反応が良いので驚きました」
永福「パワープラスモードに入れると、アクセルの反応がシャープになり、日産『ノート』のように、回生ブレーキも強くなる。つまり、アクセルだけでかなり速度をコントロールできるから、ブレーキを踏む回数が減るな」
安ド「あれは楽しいですね!」
永福「運転していると楽しいが、助手席では若干クルマ酔いしてしまった」
安ド「えっ!? 自動車評論家なのにクルマ酔いですか?」
永福「実は乗り物に弱いのだ。しかし燃費はスバラシイ!」
安ド「今度こそ世界一でしょうか?」
永福「いや、新型は『ヤリスハイブリッド』に負けているが、その差はわずかだ。気合の燃費アタックを行えば、リッター40km近くいくぞ」
安ド「さすがトヨタのハイブリッドカーですね!」
永福「EVよりもエコだ。しかもAC100V給電システムが標準装備されている」
安ド「キャンプで便利そうです!」
永福「私はキャンプはしない。使うとしたら災害による停電時だ」
安ド「車内で生活するんですか?」
永福「いや、アクアの車内から延長コードを伸ばして自宅に引き込み、冷蔵庫を稼働させるのだ」
安ド「なるほど! 食料をダメにせずに済みますね!」
【GOD PARTS 1】マルチインフォメーションディスプレイ
中央にドーンと構えたインテリアの象徴
インテリアの中心には、トヨタのコンパクトカーとしては初採用となる10.5インチの大型ディスプレイが鎮座しています。同ディスプレイを中心に操作系が並べられていてクリーンな印象です。
【GOD PARTS 2】ハイブリッドシステム
ヤリスと同様のシステムながら走りには違いが見られる
ヤリスハイブリッドとほぼ同じシステムを積んでいますが、車重が少々(約40kg)重いため、燃費は若干負けています。一方で重心は低く、ヤリスより走りに安定感があります。乗り心地もアクアのほうがしなやかで上質でした。
【GOD PARTS 3】アクセサリーコンセント
非常時には電池として活躍してくれる!
いつ大災害が起きてもおかしくない国ニッポン! ということで、国内専用車となるこのアクアには、停電などの際に家庭用電気製品が使えるAC100V電源が全車標準装備されています(1500Wまで使用可能)。
【GOD PARTS 4】バイポーラ型ニッケル水素電池
新型電池の採用はモーターにも良い影響を与える
従来はニッケル水素電池でしたが、新型アクアでは、不足気味のレアメタルをあまり使わずに作れるバイポーラ型のニッケル水素電池が採用されました。これにより出力が向上し、EV走行可能速度域も拡大されています。
【GOD PARTS 5】ボディカラー
ゴールドを除けば地味で大人向けの色味ばかり
新型では全9色がラインナップ。この「プラスゴールドメタリック」を除いて、だいぶ平凡なラインナップです。「アーバンカーキ」は素敵な色でしたが、やはり地味系。ヤリスと比べると、大人向けなクルマだからでしょうか。
【GOD PARTS 6】カラーヘッドアップディスプレイ
視線を逸らさずに運転できる便利な表示
新型は先代型のようなセンターメーターではなく、オーソドックスなメーターです。フロントガラスに各種情報が映し出されるヘッドアップディスプレイもオプションで選べます。
【GOD PARTS 7】快感ペダル
アクセルを緩めると減速する、日産同様のシステム
走行モードで「POWER+」を選択すると、アクセルペダルを緩めた際に回生ブレーキの減速感が強まります。エンジンブレーキのような感覚で、日産『ノートe-POWER』のワンペダルと同様のシステムですが、ノートより減速度は弱く、マイルドな味つけです。
【GOD PARTS 8】室内スペース
先代アクアと比べて前後に広くなった
ボディサイズをほとんど変えることなく、先代モデルよりホイールベース(前後タイヤ間の距離)を拡大したことで、ヤリスよりも広い室内空間を確保しています。特にリアシートの居住空間は広めで、足元も窮屈な感じはありません。
【GOD PARTS 9】アドバンスト パーク
手足を離したまま自動で駐車スペースへ
駐車が苦手な人にうれしい駐車支援システムがオプション設定されています。かつては高級車向け機能でしたが、これはアクアが小型車のなかでも上質なモデルということでしょう。動きは素早く正確で、実用的でした。
【これぞ感動の細部だ!】リアデザイン
まるでフランス車のような上質な雰囲気
初代アクアのデザインはいま思うとダサかったのですが、新型アクアはキープコンセプトながら、格段に洗練されました。ボディサイドは抑揚が増し、スピード感が強調されています。そしてリアまわりは、張り出したフェンダーと嫌味のないリアライト形状の組み合わせが、シンプルかつ知性を感じさせる仕上がり。見れば見るほど好きになる上質な雰囲気で、まるでフランス車のような趣が感じられます。
撮影/我妻慶一
【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】