新しいライフスタイルにおける日常の移動手段として、世界的に人気が高まっているe-Bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)。いわゆるママチャリタイプの電動アシスト自転車と比べて軽量なだけでなく、専用のドライブユニット(モーター)を搭載しており、バッテリーも大容量で長距離サイクリングにも対応できるのが特徴です。アシストがあるので坂道も楽に登れますし、距離のある通勤にも適しています。そんなe-Bikeの中から、通勤から週末のサイクリングまで対応する3モデルに試乗し、それぞれの特徴を比較してみました。
【今回比較した3モデルはコチラ】
その1
初めてe-Bikeにチャレンジする人におすすめ!
ベネリ
MANTUS(マンタス) 27 TRK
15万6000円(税込)
2021年11月初旬から発売がスタートした、イタリアブランド・ベネリの電動アシスト自転車「MANTUS 27 TRK」。サイズは全長1800×全幅580mm。27インチタイヤ、ディスクブレーキ、フロントサスペンションをはじめ、快適な乗り心地を実現する車体構成と、ベネリのe-Bikeならではの36V250Wモーター、10.4Ahの大容量バッテリーによるパワフルな走りを楽しめるクロスバイクです。
その2
五輪先導車の技術をフィードバック!
パナソニック
XU1
25万1000円(税込)
パナソニックの「XU1」は東京2020 夏季オリンピック、ケイリン先導車の開発で培ったデータをフィードバックし、フレームやフロントフォークのジオメトリーなどを見直したことで従来車種より低重心化を実現。これにより安定感のあるハンドリングを確保すると共に跨ぎやすさも高まり、走行フィーリングが向上したモデルです。サイズは全長1840×全幅590mm。
その3
ママチャリっぽく見えてクロスバイク並みに速い!
トレック
Verve+ 2 Lowstep
29万5900円(税込)
トレックはアメリカの総合自転車メーカー。その新作モデル「Verve+ 2 Lowstep」は、もっと外に出てバイクに乗る気にさせる電動クロスバイクです。BOSCH製ペダルアシストシステムが、日々のサイクリング、通勤、フィットネスをサポート。さらに安定性に優れたワイドなタイヤ、前後のライトなど、快適さと安全性を重視したパーツを搭載しています。好みに合わせて、クロスバイクタイプの「Verve+ 2」とスタイルを選べるのも魅力。
<比較ポイントはこちら>
【比較ポイントA】ドライブユニット
今回、紹介する3モデルはそれぞれクロスバイクタイプのe-Bikeですが(Verve+ 2 Lowstepのみフレームの低いタイプですが、同価格でクロスバイクタイプの「Verve+ 2」も選べます)、価格には結構開きがあります。この価格差は、基本的に採用されているパーツによるものです。特にe-Bikeの心臓部であるドライブユニット(モーター)は、3車3様。MANTUS 27 TRKはAKM製、XU1はパナソニックの自社製、Verve+ 2 LowstepはBOSCH製です。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【比較ポイントB】バッテリー
バッテリーもe-Bikeにとっては重要なパーツ。容量によってアシスト走行できる距離が変わるほか、車体への収め方によってデザインにも関わる部分です。MANTUS 27 TRKはフレーム内部に収納するインチューブタイプ、XU1はフレームに沿わせるように装着するセミインテグレーテッドタイプ、Verve+ 2 Lowstepは外付けタイプとなっています。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【比較ポイントC】ディスプレイ
ディスプレイも3車3様です。MANTUS 27 TRKは、LED表示のみのシンプルなタイプでコストを抑えています。XU1はハンドル中央部に装備されますが、サイズは小ぶりです。Verve+ 2 Lowstepは、大きめのディスプレイをハンドル中央部に搭載。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【チェックポイントD】ホイール径
ホイール径や変速ギア、ブレーキなども、自転車としての走行性能に関わるパーツ。この部分も車種ごとにチェックしておきましょう。XU1とVerve+ 2 Lowstepのホイール径は、700Cと呼ばれるロードバイクなどに装備されるものと同じ規格。タイヤはそれぞれ太めのものが装着されています。MANTUS 27 TRKは27インチという一般の自転車に採用されるもの。タイヤ外径にはそれほど違いはありませんが、タイヤやチューブを交換する際には27インチのほうが安く済む傾向にありますが、あまりスポーツ向けのタイヤが選べないというデメリットもあります。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【チェックポイントE】変速ギア/ブレーキ
変速ギアは3モデルともリアのみで、フロントには装備していません。これは近年のe-Bikeに共通する傾向。変速パーツは3モデルともシマノ製ですが、グレードや変速段数はそれぞれ異なります。一方、ブレーキは3モデルとも制動力が高いディスクを採用していますがMANTUS 27 TRKは機械式で、それ以外の2モデルは油圧式という違いがあります。一般的に、油圧式ディスクブレーキは少ない力でブレーキを効かせることができるメリットがあり、一方の機械式デュスクブレーキは車両価格が抑えられるメリットがあります。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【チェックポイントF】走行フィーリング
実際に乗ってみても、各車の特徴が感じられます。e-Bikeは法規によってアシストできる力は人がペダルを踏んだ力の2倍まで、時速10kmから徐々にアシストが弱まり、時速24kmでゼロになります。そこまで規定されていると大きな差はなさそうですが、走行フィーリングには結構違いがあります。
一般の電動アシスト自転車に比べると、e-Bike向けのドライブユニットは出だしからパワーの出方がスムーズという特性がありますが、なかでもパナソニックとBOSCHのユニットは低速からパワフルな乗り味。パナソニックのほうがやや出足が鋭く、BOSCHのほうが回転を上げていったときにスムーズな印象です。MANTUS 27 TRKに搭載されるAKM製ユニットは、パワフルさでは前の2モデルに一歩譲りますが、e-Bikeらしいスムーズなアシストが味わえます。
ブレーキの違いについては触れましたが、機械式と油圧式の差異だけでなくレバー形状による違いも感じました。唯一、機械式を装備するMANTUS 27 TRKはレバーも4本の指で操作するタイプで、一般の自転車から乗り換えた人にも操作しやすそう。逆にスポーツタイプに乗り慣れた人は2本の指で操作するタイプのほうが握りやすいと感じるでしょう。
【その1】ベネリ「MANTUS(マンタス) 27 TRK」
【その2】パナソニック「XU1」
【その3】トレック「Verve+ 2 Lowstep」
【今回のまとめ】
3モデルを乗り比べてみましたが、最も価格が安いMANTUS 27 TRKは随所に一般自転車のパーツを採用し、コストを抑えながら初めてスポーツタイプの自転車に乗る人にも乗りやすく仕上がっています。これからe-Bikeに乗り始めようという人におすすめできます。
XU1は五輪ケイリン競技の先導車からフィードバックされたフレーム設計を採用しているだけあり、スピードを出した際の安定感は抜群。通勤などの日常使いから、休日の長距離ツーリングなどにも対応できます。乗っていると遠くに出掛けたくなる乗り味です。
Verve+ 2 Lowstepはローステップのフレーム形状ですが、BOSCHユニットを採用していることもあって、クロスバイクタイプと遜色ない走行性能。ハンドルやサドルの調整幅も大きく、幅広い体格に対応するので、夫婦で共用する使い方にも対応できそう。
e-Bikeは行動範囲を飛躍的に広げてくれる乗り物ですが、価格は決して安くないので、使い方や好みに合わせて適した車種を選びたいところ。この記事が参考になれば幸いですが、まだ乗ったことがない人は、一度試乗してみることをおすすめします。乗ってみれば、その車種が1つの基準になりますし、確実に新たな世界が開けるはずです。
撮影/松川 忍
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