【初DMVの旅④】DMVが走る路線をたどった
阿佐海岸鉄道のDMV車両は、どのようなルートで運行されているのか、全線をたどってみよう。
◆阿波海南文化村
北は徳島県海陽町の「阿波海南文化村」から出発する。「阿波海南文化村」は地元で発掘された大里古墳の復元などを展示、また「海陽町立博物館」も併設されている。海陽町の文化交流施設といって良いだろう。この文化村前にしゃれた待合スペースが設けられた。ここではバスモードとして走る区間なので、やや大きめのバス停という趣だ。
バスモードで走る区間の〝停留所〟それぞれには、サーフボードの形をした〝バス停の表示〟が立ち、そこに時刻などが掲示されている。
DMV車両はこのバス停を発車、約1.0km先にある、阿波海南駅へ向かう。
◆阿波海南駅
〝バス〟は約4分で阿波海南駅に到着。国道55号を走った車両は、阿波海南駅前で右折して駅構内に進入し、駅舎横に作られたアプローチ道路を登って〝駅〟に到着する。元はこの駅の一つ先の海部駅がJR牟岐線との接続駅だったのだが、DMV導入後は阿波海南駅が接続駅とされた。その理由としては、アプローチ道路が造りやすかったことがあげられるだろう。隣の海部駅は高架駅で、アプローチ道路を造るとなると大規模な工事が必要となる。反面、阿波海南駅は地上駅で、国道沿いにあり、DMV車両が線路に入りやすい構造だった。
元は阿波海南駅〜海部駅間はJR四国の線路だったのだが、DMV導入のために同区間が阿波海南鉄道に編入されたのは、こうした駅の構造による。
阿波海南駅の駅横に設けられたアプローチ道路を登ったDMV車両は、駅舎に隣接する下り列車の乗り場に到着する。造りはバス停そのもの。サーフボードの形をしたバス停の表示が立つ。ここで乗客が乗降し、そのあと、「モードインターチェンジ」に進入する。「モードインターチェンジ」の様子は次回の【後編】で詳しく紹介したい。
この阿波海南駅のモードインターチェンジ区間の横には、広々した撮影スポットも設けられている。また駅の隣接地には駐車場スペースも新たに設けられた。観光客を強く意識して施設が設けられているのだろう。
ちなみにJR牟岐線の線路と、阿波海南鉄道の線路は同じ軌間幅1067mmだが、線路はつながっておらず、同駅ホームの先に牟岐線の車止めが設けられている。
◆阿佐海岸鉄道 阿佐東線
DMV車両は阿佐海南駅でモードチェンジしてバスから鉄道区間へ入る。阿佐海岸鉄道の路線は、DMVが走る前は海部駅〜甲浦駅を結ぶ8.5km区間だったが、阿波海南駅〜海部駅間が、阿佐海岸鉄道の路線に組み込まれたため、現在は10kmとなっている。
阿波海南駅から次の海部駅までは1.4km、海部川をわたればほどなく海部駅に到着する。海部駅〜宍喰駅間が6.1kmと同路線では一番、駅と駅が離れた区間だ。この間は地形が険しくトンネルが15本もある。トンネル間は海が望める区間だ。
なお、既存の海部駅と宍喰駅のホームは改造され、DMV車両に合うように低床用のホームが設けられた。
宍喰駅から鉄道区間の終点、甲浦までは2.5km。この駅の間で車両は徳島県から高知県へ入る。鉄道区間10kmをモードチェンジの〝作業〟も含め21分で走る。
鉄道区間に〝列車〟が入るときは、下りのみ、上りのみの運行という走り方をしている。ちなみに線路上に複数の〝列車〟が走る場合には、下り、上りともに前の〝列車〟の12分後に、次の〝後続列車〟が走るという運行方法をとっている。よって途中駅で列車交換は行われない。
運賃は5kmまで210円だったものが、200円とやや割安となった。〜7.0kmは250円が300円に、〜9km区間280円が400円と、距離が長くなるほど割高になる。鉄道区間10kmを乗ると500円となる。金額は車内で精算しやすいように100円単位とした。なお〝列車〟の走行区間、阿波文化村〜道の駅宍喰温泉を乗車すると800円かかる。
◆甲浦駅
鉄道区間の終点となる甲浦駅。筆者はこれまで3度ほど駅を訪ねたことがあるが、この駅の造りも大きく変更された。阿佐海岸鉄道の4駅中、最も形が変わった駅と言ってよいだろう。
この駅には鉄道モードからバスモードに変更するモードインターチェンジが設けられている。元駅は高架橋にあったので、地上の道へ降りるアプローチ道路が設けられた。
甲浦駅の駅舎はリニューアルされてきれいになり、駅舎内に売店も設けられた。駅近くに店がないところだけに非常に便利だ。
今回のDMV導入と合わせて、駅にはシェアサイクルも用意されるようになった。スマホを利用してのレンタルが可能で、沿線に複数のベースが設けられているので〝列車〟+サイクリングという楽しみ方もできそうだ。
【初DMVの旅⑤】DMVの強みを生かしてその先まで走る
甲浦駅を終点とせずDMV車両の利点を生かして、先のポイントまで走るようになった。全〝列車〟が地元の観光拠点まで走る。どのようなポイントまで走るのか見ておこう。
◆海の駅東洋町
甲浦駅から約1.2km、走行時間3分ほどで次の「海の駅東洋町」へ到着する。この駅は甲浦駅と同じ高知県東洋町に位置する。東洋町は高知県の最東端にある町で、太平洋に面している。「海の駅東洋町」も施設名どおり海に面していて、停留所から海が望める。
海の駅では東洋町で水揚げされた鮮魚や加工された干物、農産物も販売されている。高知県の東の玄関口でもあり、県内の土産物も販売されている。地元のぽんかんを使った「ぽんかんソフト」が名物だ。
この停留所が終点ではない。ほとんどの〝列車〟は終点となる「道の駅宍喰温泉」へ向かう。また土・日・祝日には1日に1往復のみだが、「海の駅東洋町」から室戸市へ向かう〝列車〟もある。この室戸市へ向かう〝列車〟に関しては【後編】で詳しく触れたい。
◆道の駅宍喰温泉
今回のDMV導入では「道の駅宍喰温泉」が南側の終点とされた。海の駅東洋町から約3.5km、5分で到着する。
この路線ルートの興味深いところなのだが、甲浦駅、「海の駅東洋町」は、高知県の東洋町にある。ところが終点となる「道の駅宍喰温泉」は徳島県海陽町で、〝列車〟の起点の「阿南海南文化村」も徳島県海陽町だ。〝列車〟は一度、高知県東洋町へ入り、また海陽町に戻るルートとなっているのだ。
「道の駅宍喰温泉」は国道55号沿線で拠点となっている規模の大きな道の駅施設だ。道の駅には観光案内所、売店、海陽町の産品直売所のほか、ホテル、日帰り温泉施設が設けられている。同エリアの人気観光施設となっている。
次週の【後編】ではモードインターチェンジでの車両の動きや、乗車した時の模様、さらに土・日・祝日のみ運行される室戸市側の受け入れの模様などをお届けしたい。