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2021/12/25 6:00

鉄道ゆく年くる年…運転再開、引退、DMV導入ほか2021年(下半期)の出来事をふり返る

〜〜2021年 鉄道のさまざまな話題を追う その2〜〜

 

2021年もあとわずか。今年の鉄道をめぐる話題を、前回に引き続きとりあげていきたい。今年は引退していく車両が目立った。その中には時代を飾った〝名物車両〟も含まれていた。大きく時代が変わる節目の年だったのかも知れない。

 

下半期を中心に起こった出来事を振り返ってみよう。

 

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【2021年の話題⑥】災害で傷ついた路線の多くが運転再開に

まずは災害で傷ついた路線の運転再開の話題から。この話題のみ上半期も含めて見ていこう。

 

◆JR東日本水郡線 3月27日・袋田駅〜常陸大子駅間の運転再開

茨城県の水戸駅と福島県の安積永盛駅(あさかながもりえき)を結ぶ水郡線(すいぐんせん)。2019(令和元)年10月12日から13日にかけて、列島を襲った台風19号によって、第六久慈川橋梁などの橋が流出し、長期にわたり不通となっていた。袋田駅〜常陸大子駅(ひたちだいごえき)間の復旧工事が完了したことにより、今年の3月27日に全線の運転再開を果たした。

 

◆上田電鉄別所線 3月28日・上田駅〜城下駅間の運転再開

↑千曲川橋梁(写真)の一部流失により約1年半にわたり運休となっていた上田電鉄別所線

 

長野県の上田駅と別所温泉駅の間を結ぶ上田電鉄別所線。水郡線と同じく2019(令和元)年の台風19号により、千曲川に架かる鉄橋と、築堤が流されてしまう。その後に城下駅〜別所温泉駅間の運転は再開されたものの、千曲川に架かる鉄橋の復旧に手間取った。約1年半の工事の末、この春に工事が完了、3月28日に全線の運転再開となった。

 

別所線も水郡線も2019(令和元)年の台風19号に苦しめられたが、その後に同台風は「令和元年東日本台風」と名前が付けられている。複数の路線の不通以外にも、北陸新幹線の長野新幹線車両センターが水没、停車していたE7系・W7系といった新幹線車両が水に浸かり廃車になるなど、東日本の鉄道インフラに大きな被害をもたらした台風でもあった。

 

◆叡山電鉄鞍馬線 9月18日・市原駅〜鞍馬駅間の運転再開

京都市内、宝ケ池駅と鞍馬駅の間を結ぶ叡山電鉄の鞍馬線。市内から鞍馬へ向かう観光路線として人気がある。この路線が2020(令和2)年7月8日の「令和2年7月豪雨」で運休となった。約1年にわたる復旧工事の末、今年の9月18日に市原駅〜鞍馬駅間の運転が再開した。名物〝もみじのトンネル〟が楽しめる秋の行楽シーズンに、ぎりぎり間に合う形となった。

↑貴船口駅近くを走る900系きらら。京都市近郊ながら沿線の風景を見ると、険しい山あいを走っていることがよく分かる

 

◆小湊鐵道 10月18日・光風台駅〜上総牛久駅間の運転再開

千葉県の五井駅と上総中野駅を結ぶ小湊鐵道が走る房総半島の内陸部は、養老川が蛇行し、複雑な地形が連なる。そのためか小湊鐵道は災害の影響を受けやすい。2019(令和元)年以来、毎年、運休と運転再開を繰り返している。今年は7月3日の豪雨で一部区間が運休となっていた。10月18日に光風台駅〜上総牛久駅間の運転再開を果たした。

 

再開がちょうど秋の行楽シーズンに重なったこともあり、新たに導入したキハ40系とキハ200系が連結して3両で走り始めたり、観光客に人気の里山トロッコ列車が、初めて五井駅発になったこともあって活況を見せている。

↑養老川を渡る里山トロッコ列車。これまで営業運転されなかった五井駅〜上総牛久駅間も走るようになり便利になった

 

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◆JR九州日南線 12月11日・青島駅〜志布志駅間の運転再開

宮崎県の南宮崎駅と鹿児島県の志布志駅の間を走る日南線。今年の9月16日に太平洋に面した小内海駅(こうちうみえき)の構内に土砂が流入し、青島駅〜志布志駅間が運休となっていた。復旧までに3か月ほど期間がかかり、12月11日に全線の運転再開が完了している。

 

九州では肥薩線など自然災害の影響で長期間、運休になったままの路線がある。毎年のように、自然災害で鉄道路線が寸断される日本列島。来年こそは穏やかな一年になることを祈りたい。

 

【2021年の話題⑦】下半期に消えていった車両

例年、春のダイヤ改正に合わせて引退となる車両が多いが、今年は下半期にも引退した車両が多かった。このような年は、あまりないように思われる。時代が求めている車両が、変わりつつあることを示すかのようだ。

 

◆京阪電気鉄道5000系

↑側面から見た5000系。白いドアはラッシュ時以外に開閉しない扉。正面(右上)の上部にひさしが付く個性的な姿でもあった

 

京阪電気鉄道の5000系が登場したのは1970(昭和45)年の暮れのことだった。7両×7編成+1両(事故車両の代替車両)が製造された。特長は5扉ということ。ラッシュ時の運行は5扉を利用、それ以外の時間帯には2扉を使わず、3扉のみ開閉するという珍しい造りの電車だった。日中、閉められた扉部分に、折り畳まれていたシートが下ってきて、座ることが可能になった。

 

ラッシュ時の乗降をより効率化するための策だったのだが、乗車位置が他の車両と異なること。また、今後導入が進むホームドアのドア位置が合わないことなど、問題が生じていた。すでに今年の1月29日からは3扉のみを使っての運行となったことで、中の2扉が不要となってしまった。半世紀にわたり活躍したものの9月4日で運用が終了した。

 

◆JR東日本485系 ジパング

↑岩手県内を観光列車「ジパング平泉」として走っていたころの485系「ジパング」。黒の車体がおしゃれだった

 

国鉄からJRになって団体向け列車用に多くの「ジョイフルトレイン」が生み出された。とくにJR東日本では、余剰となっていた交直両用電車485系を改造して、多種類のジョイフルトレインが用意された。

 

「ジパング」もジョイフルトレインの一列車で、いわてデスティネーションキャンペーンに合わせて2012(平成24)年に誕生した。盛岡県内を観光列車「ジパング平泉」として9年にわたり走り続けていたが、今年の10月10日に運転された団体専用列車「ありがとうジパング」を最後に引退となった。

 

485系はすでにオリジナル車両が消滅している。団体旅行の人気も下火となり、ジョイフルトレイン自体が急速に姿を消しつつある。「ジパング」が引退して、485系を改造したジョイフルトレインも、今や「華」と「リゾートやまどり」のみとなった。あと何年走り続けるのか微妙な状況になりつつある。

 

◆JR東日本 E4系

↑3月12日からはラストランロゴのラッピングがE4系の先頭車に付けられて走った

 

今年の下半期、もっとも注目を集めた引退車両は何といってもE4系であろう。E4系は1997(平成9)年の暮れに運用を開始した。総2階建ての新幹線電車で、同じ2階建てのE1系が好評だったことから、その後継車両として登場した。8両編成だが、2編成が連なる16両で走る列車は、世界の高速列車の中で最大の乗客を運ぶ列車として注目を浴びた。定員数を増やすため、自由席は横に3席+3席が並ぶ構造で、現在のように密を避ける時代となると、ややきつく感じた造りとなっていた。

 

登場当時は増える輸送量をさばく上で役立ったE4系だったが、最高時速240kmと、高速化する新幹線の中ではスピードの遅さが弱みとなっていた。2012(平成24)年には東北新幹線の定期運用から退き、上越新幹線の運用のみとなった。

 

上越新幹線にも新たにE7系の投入が始まり、2020年度中の引退が予告されていたが、2019(令和元)年の台風19号により、長野新幹線車両センターに停車していたE7系・W7系の多くが水没し、廃車となったために車両が足りなくなってしまう。そのためE4系の延命措置がとられて、予定よりも引退が遅れていた。そんなE4系も10月17日の「サンキューMaxとき」が最後の運行となった。2階から見る眺めが今後は楽しめなくなる。一抹の寂しさを覚える鉄道ファンも多いのではないだろうか。

 

◆札幌市交通局M100形

↑西4丁目付近を走るM100形。筆者もちょうど10月31日、札幌市内にいたこともあり、最後の走行を目にすることができた

 

札幌市内を走る札幌市電。2015(平成27)年12月20日に、それまで終着の停留所だった西4丁目とすすきのが結ばれ、路線が延伸されるとともに、周回できるループ路線となり便利になっている。このループ化により利用者数も増え、以前より路線が活気づいたように感じる。

 

そんな札幌市電で長年親しまれてきた名物車両がこの秋に消えていった。M100形という電車で、1961(昭和36)年に誕生。レトロな深緑(ダークグリーン)とデザートイエローと呼ぶ2色の塗り分けで走った。

 

この電車が珍しいのは、付随車を連結して走った時期があったこと。定員を増やして効率良く乗客を運ぼうという試みだった。「親子電車」と名付けられ親しまれたが、付随車のトレーラーは1971(昭和46)年とかなり前に廃車となり、その後は1両のみでの運行となっていた。

 

引退する前日、運悪く乗用車との衝突事故が起き、ラストとなる走行が危ぶまれたが、緊急に修理が行われ、最後となった10月31日は午後のみ走った。別れを惜しむ人たちが沿線に集まり、賑わいを見せたのだった。

 

◆新京成電鉄 8000形

↑8000形最後の編成となった8512編成。ピンク塗装の車両が大半となった同路線で、貴重なリバイバル塗装の車両だった

 

千葉県内を走る新京成電鉄。ほとんどの車両がピンクベースの塗装となり、より洗練されたイメージに代わりつつある。ひと時代前の新京成電鉄の主力車両である8000形は、正面中央に支柱がある独特の風貌とカラーで、どことなくユーモラスさがただよう見た目から「くぬぎ山の狸」と呼ばれ親しまれてきた。1978(昭和53)年から1985(昭和60)年にかけて6両×9編成が製造された。すでに製造から35年以上の時が過ぎ、最古参となっていた。

 

ここ数年、少しずつ車両が減っていき、最後に残ったリバイバルカラーの8512編成も11月1日をもって運用から離脱し、姿を消したのだった。

 

◆近畿日本鉄道 12200系

↑12200系を先頭に走る近鉄特急。後継車両との連結運転も可能な造りで、需要の変動に応えられる近鉄特急らしい電車でもあった

 

近畿日本鉄道(以下「近鉄」と略)の特急車両はバラエティに富み、各路線で多くの特急列車が走っている。その中でも166両と最多の車両数を誇ったのが12200系で、1969(昭和44)年から7年にわたり製造された。ニックネームは「新スナックカー」で、誕生当時にスナックコーナーを設けていたことからこの名が付いた。近年になってリニューアルされ塗装変更された車両が増えるなか、旧来の車体カラーのまま走り続けたことから、逆に鉄道ファンの間で人気となっていた。

 

そんな車両も生まれて半世紀、徐々に車両数も減っていき、2月12日に定期運用から離脱。11月20日にはラストランツアーが行われ、この日で引退となった。ちなみに、近鉄では12200系を改造した4両編成の観光特急「あをによし」を2022(令和4)年4月29日にデビューさせ、大阪、奈良、京都の3都市を結ぶ予定とされる。なんとも近鉄らしい車両の活かし方である。

 

◆JR四国 キロ47形 伊予灘ものがたり

↑日本100名城に選ばれる大洲城を背景に走る「伊予灘ものがたり」。来春からは同橋梁を新たな車両が走ることに

 

愛媛県の松山駅〜伊予大洲駅間、または松山駅〜八幡浜駅間を走る観光列車「伊予灘ものがたり」。2014(平成26)年夏にキハ47形を改造した観光列車で、7年にわたり運転されてきた。JR四国では初の本格的な観光列車で、その後に複数の観光列車が生まれたが、この列車の成功が大きかったと言えるだろう。

 

改造元の車両が国鉄形キハ47形ということもあり、老朽化の問題もあって12月27日で運行が終了する予定。すでにキハ185系を改造した新「伊予灘ものがたり」が2022(令和4)年春に登場することがJR四国から発表されている。

 

◆東京都交通局 浅草線5300形

↑浅草線5300形同士のすれ違いシーン。すでに1編成となった5300形だけに、こうした光景ももう見ることができなくなった

 

東京の都心を南北に貫く都営地下鉄浅草線。2018(平成30)年6月に新型5500形が導入され、徐々に増備されていった。新車両5500形は導入からまだ3年と日が浅いが、すでに計画していた27編成すべてが導入され、瞬く間に旧車両5300形が減ってきていた。12月22日の運用を見ても5300形は5320編成1本が残るのみとなっている。

 

5300形は2021年いっぱいで消えると言われている。最後の編成の走りを見られるのも、あとわずかとなった。

 

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