【気になる甘鉄④】起点となる基山駅のとても簡素な入口
ここからは起点の基山駅から甘木鉄道の旅を楽しんでみよう。
列車の本数は多い。平日は42往復で、みな全線を通して走る。土曜・休日はやや減便され下り34往復となる。通勤通学客に対応すべく平日は増便し、朝夕は最短15分間隔、日中も30分間隔で列車が走る。地方の三セク鉄道としては非常に便利な路線と言ってよいだろう。
起点はJR鹿児島本線の基山駅で、同駅は佐賀県の基山町にある。同駅のJRの改札を出て、階上にある自由通路を国道3号方面へ向かったところに甘木鉄道の乗り場があるはずなのだが……。
JRの改札口側から見ると、それらしき入口がすぐには分からなかった。近づいてみて、上に小さな案内と、その右にこじんまりとした降り口の階段があることに気がついた。意外に目立たない入口だったのである。
JR基山駅のホームは1〜3番線、国鉄当時は4番線が甘木線のホームだったそうで、今もJR駅に平行してホームがある。だが、最初に見当たらないと錯覚したように簡素である。何番線という表示もない。同鉄道の駅員も不在の無人駅だ。
同鉄道を巡って良く分かったのだが、この鉄道会社は徹底的に無駄をそぎ落としている。反面、利用者に直接関わってくるサービスには力を入れていることが分かった。基山駅もそんな一面を持つ駅で、とにかく簡素だった。
訪れた時にホームに停車していたのは国鉄急行形塗装のAR305だった。国鉄色とは〝これは幸先が良いかな〟と思い乗り込む。同駅を朝6時33分に発車する〝2番列車〟だった。始発駅では、座席の5割程度という乗車率だった。
しばらく鹿児島本線と平行して鳥栖駅方面へ走る。上り坂をあがって国道3号を高架橋で越えた。
【気になる甘鉄⑤】小郡市の玄関駅・小郡駅も西鉄の駅と比べると
基山駅から発車した列車はしばらく工場や倉庫が建ち並ぶ一帯を走る。次は立野駅。ここは九州自動車道のちょうど真下にある駅で、甘木鉄道が生まれた翌年に駅が設けられた。高速道路の高架橋が屋根代わりという、なかなかユニークな造りの駅だ。
三セク転換とともに、複数の新駅が設けられ、利用者の増加につながっている。こうしたことがなぜ国鉄時代にできなかったのか、不思議に感じるところでもある。この駅までが佐賀県内の駅で、次の駅からは福岡県内に入る。
立野駅を発車して間もなく、列車は大原信号場で停止した。全線単線の甘木鉄道では、こうした信号場や駅で上り下り列車の交換を行う。大原信号場は基山駅側にある最初の列車交換のための施設だ。停車した後に、すぐに基山駅行きの列車が通り、下り列車もそれに合わせて信号場を発車、次の停車駅へ向かった。
大原信号場は2003(平成15)年4月に開設されたもの。15分ヘッドという密度の濃い運転を可能にするために設けられた。信号場開設のために地元・小郡市(おごおりし)から土地が提供されたという。地元も甘木鉄道をより便利にするため、こうした協力を惜しまなかったわけである。
さて、次の駅は小郡駅。その名の通り地元の小郡市の玄関口にあたる駅だ。
この小郡駅は西鉄天神大牟田線の西鉄小郡駅に近く、乗り換えに利用する人が多い。帰りに立ち寄ってみたが、2駅間の距離は約200mで徒歩3分ほどと近い。こちらは幹線の駅ということで立派だ。西鉄小郡駅の規模に比べると小郡駅は簡素そのものだった。
【気になる甘鉄⑥】平行して走る高速バスとの乗り換えも便利
小郡駅では多くの学生たちが乗車してきた。ちょうど朝、通学するのに使う列車だったのである。この駅の特長は、ホームの目の前に高速道路の高架橋が平行して延びていること。大分自動車道の高架橋だ。次の大板井駅(おおいたいえき)まではわずかに700mの距離しかない。
実はこの大板井駅のすぐ目の前には高速バスの大板井バスストップがある。大板井駅は甘木鉄道に転換した翌年の開業だ。バス停方面の階段も設けられる。
駅と高速バス停が近いことを同鉄道ではしっかりPRしている。路線図には、高速バスのバス停が近いことを表示し、さらに列車の中でも「高速バス乗り換えの方は次でお降りください」とアナウンスしている。
駅などの施設は簡素だが、利用者を考えた対応を細かくしている。こうした配慮があれば、同線に初めて乗る人でも、まごつく心配がないだろう。