カロッツェリアのフラッグシップモデルとなるサイバーナビは20年以上もカーナビ業界をリードしてきた存在。モデルチェンジごとに近未来をイメージさせる新技術を搭載し、多くの人を驚かせてきた。そんなサイバーナビの2016年モデルの目玉のひとつといえるのが「マルチドライブアシストユニット」の搭載だ。
これは、サイバーナビに様々な先進安全運転機能を付加するユニット。カーナビが「カーをナビゲート」するだけでなく、カーライフ全体を快適にしてくれる存在になることを具現化したモデルである。
今回は、9月下旬の発売に先駆けてカロッツェリアがプレス向けに開催した「マルチドライブアシストユニット体験会」へと参加。その性能をいち早くチェックしてきた。
デモカーに装着されていたのは10型ディスプレイを搭載したステップワゴン専用サイバーナビに、マルチドライブアシストユニット/通信モジュール/フロアカメラ(室内撮影用の小型カメラ)をパッケージした「AVIC-CE900ST-M」だ。マルチドライブアシストユニットはルームミラー裏側に装着したカメラで捉えた映像をもとに、様々な運転支援情報をドライバーに提供する先進機能。カロッツェリアが長年培ってきたカーナビ技術に最新のAR(拡張現実)技術を組み合わせている。
一見するとゲームのようでエンターテイメント重視のようだが、自動車の安全性向上に寄与することを目的に開発されたものだ。多くの自動車メーカーで普及が進んでいる「自動ブレーキ」と同様に予防安全を目指しており、汎用性が高い市販メーカーならではのアプローチとしている。クルマメーカーとの大きな違いは、カーナビは車両自体を制御できるワケではないため、数秒後の安全確保を目指しているのではない点。差し迫った未来ではなく、数十秒後~数十分後の、大きな意味での予防安全を目指しているのだ。
経産省が推進するプロジェクトから実現した「右折時つられ発信検知」に注目
今回のデモ走行では多くの機能を体験できたが、もっとも注目したのは「右折時つられ発進検知」。右折時に前方車両の動きにつられて安全確認をせずに進むことで発生する、直進車との衝突事故を防いでくれる。最新のサイバーナビは独自のスマートループデータをもとに事故が発生しやすい箇所をヒヤリハット地点として地図上に表示できるが、そのような交差点でルート案内中に前方車を追いかけるように右折すると警告音でドライバーに注意を促すのだ。
また、信号待ちなどで前方車両が停車しているにも関わらず発進してしまった場合には、「誤発進警告」として警告音を発するとともに、画面に「前方注意」の警告表示を行う。前方に停車している車両に近づきすぎる場合にも「前方車両接近警告」として同様の警告を発する。
さらに「レーンキープサポート」ではレーンの白線を踏んだりまたぐなど片寄った走行を続けると、画面上でレーンに重なった線の色が青から黄色へと変化するとともに警告音を発する。
いずれもドライバーの「うっかり」を防ぎ、事故を未然に防ぐ効果がきわめて高いといえるだろう。右折時つられ発進検知については経済産業省が推進する次世代高度運転支援システム研究開発・実証プロジェクトの知見を用いた機能でもあり、多くの実験でも実力が認められている。
車両に異常があればスマホにメール通知してくれる
そして、セキュリティシステムとして活躍する点も見逃せない。駐車中に振動や音、ドア開けなどを検知すると写真撮影を行ったうえに、ユーザーのスマホやユーザーが指定したメールアドレスへ自動的に異常検知を知らせるメールを送信してくれる。このメールには車両前方と室内を撮影した写真、位置情報が添付されており、離れた場所にいても瞬時に状況を把握することが可能。このほかドライブレコーダーやデジタルカメラしても利用でき、さまざまなニーズに対応する。
マルチドライブアシストユニットの多くの機能は単に優れた画像認識技術だけでなく、膨大なプローブ情報を蓄積したカロッツェリア独自のスマートループデータがあればこそ実現できるもの。最新のサイバーナビは単なる道案内ツールではなく、ドライバーの安全マージンを広げるサポートツールへ進化を遂げたといえる。未来のカーナビをいち早く具現化したモデルだ。