牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド「go!go!vanillas」。今回はドラムのジェットセイヤさんに愛車GS1000や、バイクと音楽の関係性などについて熱く語ってもらった。
(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)
【ジェットセイヤさんのGS1000の画像はこちら】
GS1000との出会い
――この企画では初となるスズキ車、しかも、ヨシムラが1978年の第1回鈴鹿8時間耐久レースで優勝したことで知られるスズキGS1000です。先ほどエンジンをかけてもらいましたが、音がいいですね
ジェットセイヤ(以下、セ)「かなり良い音してます。自分はグレッチのドラムを使ってるんですけど、その太さとちょっと似てますね。低重心な感じとか」
――「音」とはミュージシャンらしいポイントです。では、セイヤさんとこのGSとの出会いから伺いましょうか
セ「『マッドマックス』が大好きだし、カワサキの空冷Zが欲しいと思って専門店に見に行ったんですね。KZ1000を試乗したんですけど、ちょっとイメージと違うなと思ったんですよ」
――その違和感って何だったんでしょう
セ「実は、その前にGSにまたがっていたからかもしれませんね。GSのあのゴツさ、どっしり感がZにはなかった。自分でも何故だかわからないんですけど、GSは“出会っちゃった感”があった」
――”出会っちゃった感”ですか、なるほど
セ「昔からの知り合いでもある『君はバイクに乗るだろう』の編集長・坂下(浩康)さんと一緒にバイク探しの旅に出て、川口市のバットモーターサイクルさんでGS1000に出会ったんですけど、見たときにまず『ダース・ベイダーみたいだな』と思ったんですよね。で、タンクに大きく“GS”って描いてあって『なんだこのバイク!?』って衝撃を受けました。タンクも大きくて、Zよりも太い」
――購入したのは?
セ「4年くらい前です。結局、Z系もいろいろ比較検討したあと、バットさんじゃなくて絶品輪業さんにあったGSを買ったんですけど、バットの川島さんが『せっかくなら状態いいのを買ってほしい、うちじゃなくてもいいから』と言って頂いて。そんなバイク屋さんほかにないですよね」
――自分のお店で買わせたいと普通は思いますよ
セ「そうですよね。絶品輪業さんにあったGSは程度がすごく良かったんで、川島さんにはほんとに感謝してます。購入後すぐGSと報告に行きました」
GSは「カスタムしない」と決めた
――1978年ごろのモデルでしょうか、外装やエンジンもとてもきれいです。カスタムやこだわりについて教えてください
セ「納車時から、ハンドルが幅の広いタイプにしてあったのとエンジンガードがついていた以外はノーマルです。マフラーを変えようかと考えたこともあるんですけど、この2本出しがかっこいいからやめましたね」
――今後のカスタム予定は?
セ「しないと思います。このままの状態が一番かっこいいと思うのでキープしていきたいですね。もしカスタムしたくなったら、カスタムしている方のバイクを見て楽しみます」
――ちょっと意外です。セイヤさんといえば、革ジャンとかヘルメット、楽器にもペイントしたりと、何でも自分色に染めちゃうイメージです
セ「そうなんですけど、GSはイジっちゃいけない気がしてるんですよ。関係性でいうと、『先輩』って感覚なんですよね。自立しているオートバイって感じがするんで、手を入れるのは違うなと」
――あえてノーマル状態をキープしているセイヤさんのGSですが、お気に入りのポイントは?
セ「さっき話したとおり、まずこの上から見たときのタンクの太さですね。それとテールランプの角張った感じ。丸みと角張ったデザインのバランスがいいなと思います。タンクからテールへのライン、大きめなウインカーも、スターキャストホイールも、全部気に入ってますね」
――スタイリング以外の部分ではどうでしょう
セ「走っているときの安定感ですね。GSに乗り出してすぐのころ、ふと思い立ってどこまで行けるか走りに出たんですけど、朝出発して、あっという間に名古屋まで着きました。そのとき、GSにして良かったなって思いましたね。大きいんですけど、意外と軽やかで乗りやすいんです」
――これまで故障やトラブルなどは?
セ「一度だけですね。家から出発して数分後、高速乗る前にクラッチ板が割れて、クラッチスカスカになって、どうしようもなくなって、路肩に停めました。すぐお世話になってるFUNTECHさんに電話して修理してもらいました。それ以外のトラブルはないですね。もともとがいい車体だったということもあるんでしょうけど、かなり調子いいです」
――トラブル少ないですね、素晴らしい
セ「先輩たちから、『旧車を買うときは妥協しちゃいかんよ』『金額がちょっと高くても状態いいのを買ったほうがいい』と聞いてましたから」
――妥協しなかったから、いい1台に出会えたのかもしれませんね
セ「あと、基本的な整備はぜんぶFUNTECHの(北川)譲二さんにおまかせしてるんですけど、自分のバイクの調子を知ってくれているいいメカニックさんがいるって点でも安心です」
バイクに乗ったきっかけ
――続いてバイク歴について教えて下さい。まず、バイクに乗ろうと思ったきっかけは?
セ「親父がバイクやクルマが好きで、その仲間もみんなバイクとか音楽が好きだったのでその影響はありますね。ロックンロールを聴き始めるとバイクってリンクしていくじゃないですか。それが自分のバイクのルーツですね。16歳になったらバイクの免許取ろうと思ってましたし、小学校の卒業文集に『グレッチのドラムを叩いて、革ジャン革パンで、バンドで全国回って、バイクはZ400FXが欲しい』って書いてるんですよ(笑)」
――いいものが分かる小学生だったんですね(笑)。
セ「そのあたりの夢が全部叶ったんですよね、10年後ぐらいに。ずっとその生き方してたので」
――どうしてZ400FXだったんですか
セ「師匠でもあるし、一番好きなドラマー・中村達也さんが当時Z500FXに乗っていて、バイク雑誌の表紙に写真が出てたんです。それを見て『バイク買うならFXでしょ』と。その後、実際にFXにまたがったんですが、思ってたより車体が細くてイメージと違いましたね」
――小学生でBLANKEY JET CITYとか中村達也さん、FXが好きって相当早熟ですよ
セ「そうですね。実際にライブハウスも観に行ってたので、かっこよさも身に染みて感じてました。中学の時は近所の人に譲ってもらったスーパーカー自転車を改造して乗ったり、小学生の時は親父の現場で拾ったパイプを自転車に針金で取り付けてマフラーに見立てたりとかしてました(笑)」
――シブいエピソードには事欠きませんね(笑)。で、高校卒業後に上京されたんですよね
セ「仕事しながら千葉に住んでました。バイクの免許は、高校が厳しかったので卒業したあと、上京する1週間くらい前に取りに行ったんですけど卒検で落ちちゃって、上京後に幕張の運転免許試験場で一発試験で取りました。免許取ったあと、千葉に父親のバイクを送ってもらったんですけど、それが浅井健一さんが乗ってるXS250“サリンジャー”のレプリカ(親父制作)で。ちなみにエンジンも400に積み替えてあります」
――浅井さん、BJCのファンに“サリンジャー”は有名ですね。バイクを送ってくれるなんて、いいお父さんだなぁ
セ「でも、せっかくバイクを手に入れたのに、そのころは仕事が忙しすぎて休みもほぼなかったからあまり乗れませんでしたね。一緒にバンドやっていたゼファー乗りの友だちと週末に木更津あたりを走ったりとか、そんな感じでした」
――千葉は走りやすいのに残念でしたね
セ「むしろ今、千葉には走りに行きたいです。結局サリンジャーレプリカは18歳から、go!go!vanillasをやりはじめる22歳ごろまで乗って、地元に送り返しました。やっぱり父が作って乗っていたお下がりだったし、大事なバイクすぎて“自分のバイクではないな”って感覚がありましたね」
もう1台の愛車・スズキK90について
――サリンジャーレプリカを送り返したあとはどうなったんでしょう
セ「その後、バンドが忙しくなって都内に引っ越して来て、今も乗っているスズキK90をネットオークションで買いました。見つけたときは、『安いし、かっこいいし、これしかない!』って感じでした。落札価格は5万円だったかな。出品していたのはK90を数台持っている方で、一番調子いいのを譲ってくれました」
――K90マニアのお墨付き(笑)
セ「その時は、自分のバイクを手に入れたことがうれしかったですね。それが7年くらい前ですけど、K90は今でも毎日乗ってますね。小回りがきくし、荷台があるから機材も積める。あとかっこいいんですよ、レトロで。特に前から見たアングルが好きです」
――GS1000とK90とを乗りわけてるわけですね
セ「GSは用事で乗っていってその辺にちょっと停めておくってわけにはいかないですからね。スタジオ入るのに乗ってっちゃったら、いたずらや盗難が気になっちゃって集中できないですね。普段も倉庫に入れて保管してます」
――先程お邪魔してきましたが、いいガレージでしたね
セ「バイクと、楽器を入れてます。バイクは大事にしたいんで、倉庫に入れておかないと不安なんですよ。雨に濡らしたくないし、盗まれたくない」
――徹底してるんですね。倉庫でメンテナンスやカスタムなどもするんですか?
セ「そうですね。K90を一度バラしてフレームを塗ったことがあります。あとは、レコーディングしてます」
――まさにガレージロック!
セ「音が漏れちゃうんで大変です(笑)」
――壁に飾ってあるのは?
セ「僕がスネアのヘッドに描いた絵です。オーダーを受けてヘルメットにも描いています」
――セイヤさんは個展も開かれてますもんね。そういえばガレージにはもう1台、白いベスパも停まってましたが
セ「Vespa100ビンテージですね。K90と併用して普段乗りとして使ってます。スピードも出ないし、ブレーキもあまり効かないので遊びでって感じで」
――ベスパとはどういった出会いが?
セ「もとはレコーディングエンジニアさんが持ってたやつで、スタジオの軒先でずっと雨ざらしになっていたんです。新しいバイクを購入されたようだったので、その流れで自分が引き取りました。全塗装しようかなと思ったんですけど、ヤレた感じがいいのでそのままにしてます。GS1000やK90は“先輩”という感じですが、ベスパは“友だち”という感じですね」
ツーリングについて
――セイヤさんはどういった時にバイクに乗るんですか?
セ「K90やベスパは普段の足として乗りますし、GSはツーリングとか、遠出する時によく乗ります」
――ツーリングはどのあたりに?
セ「逗子に行くことが多いですね。坂下さんと一緒に」
――逗子にお目当てがあるんですか?
セ「“魚平商店”とか“808cafe10R”さんに行くのが定番です」
――魚平商店は、バイカー弁当で有名ですよね
セ「ですね。808cafe10Rさんには、自分が絵を描いたヘルメットも販売してもらってます。スパイスカレーがオススメです。いつか北海道とか行ってみたいですね。あとは四国もいいなと思うし、地元の九州も最高だし」
――バイクに乗っているときに、音楽的にインスパイアされたりするんですか?
セ「GS乗ってるときにできた曲って結構ありますね。思いつくんですよね、なんでかなぁ……テンション上がるからじゃないかな。単純に、バイク乗って走るだけでテンション上がってます。高速とかだと特に、『今これ、ハンドルから手を離したら死ぬな』っていう、デッドラインとともに走る“死ぬか生きるかの瀬戸際”感が、自分のなかに何か生み出すんでしょうね。GSは特にそういう感覚があります」
――バイクとセイヤさんの音楽性に共通点はあったりするんですかね
セ「自分の音楽性とマッチする部分はあるんじゃないかと思いますね。加速する感じとか。エンジン音がビートに聞こえてきます。グレッチのドラムとGSに感じた共通点として“太さ”がありましたけど、ホンダのバイクはPEARLのドラムのベーシックさに近いなとか、ヤマハはやっぱりヤマハのドラムの安定感を感じるし…とか。こういうこと話すやついないですよね(笑)」
――ドラマーらしい観点がすごくいいですよ
セ「『GS A GO!GO!』って曲を作ったんですよ。逗子にツーリングするそのまんまの歌詞なんですけど、それにエンジン音入れてふかしてます」
――ギターウルフの『環七フィーバー』的な
セ「そうですね。次はベスパの曲も作ろうと思ってます」
今後について
――GSとK90、ベスパで乗りわけも安定してる感じですが、今後欲しいバイクはありますか?
セ「いま250くらいのバイクが欲しいですね。カワサキのZ-LTDが好きなんですよ、アメリカンぽいモデル。あとZ200とかもいい。いずれにしてもバイクは増えそう。GSやK90を手放すことはないです」
――GSとK90へのほれ込み具合をうかがっていると、ジェットセイヤさんはスズキ党だと確信するところです。実際のところはどうですか?
セ「K90に乗ってたときも特にスズキのバイクって意識はなくて、GSを買ってからですね、スズキのバイクが持ってる“スズキらしさ”に気づいたのは。自然に魅了されてますね」
――具体的にどういうところが?
セ「スズキのバイクはスタイリングにどっしり感があると思うんですよ。小さいオートバイでも大きく見える。自分は『湘南爆走族』も好きなんですけど、登場するバイクで目が行くのはGS400、GT380とか、自然にスズキ車に目が行ってます。サンパチのテールランプとかね、好きなんですよ」
――俳優の舘ひろしさんが『西部警察』で乗っていた刀も昔からお好きだとか?
セ「そうなんですよ。考えてみたら刀もスズキですね。何かもともと惹かれるものがあったのかな。親父がZ750RS(Z2)とCB750Fに乗ってるんで、カワサキとホンダは身近にあったんですけど、GSを買うときは、そこにスズキ車が加わるという新鮮さは自分の中にあったんでしょうね。それに、ZやCBほど乗っている人も多くないので、そこもいいなと思ってます」
――イラストではハーレーも描かれていますけど、ハーレーは?
セ「欲しいですけど、抑えてます(笑)。乗ってみたいし、カスタムしてみたい形もあるんですけど、置き場の問題もありますから。でも、やっぱりGSに乗っている自分が一番しっくりきますね、日本男児なんで」
――GSはほんとに愛着を持ってるんですね
セ「ここまで深くなると思わなかったですね。最初は、こんなでかいの乗り回せるかな、でか過ぎんかなって気持ちもあったんですけど、それは自分の中で挑戦でもあった。出会いは直感でしかなかったですけど、GSにしてよかったって思います。自分、これって決めたら愛着がわくタイプなんです」
「ミュージシャンになる」という想いを一途に追いかけ実現した、かつてのロッケンロー少年。その一本気な性格はバイクとの付き合い方にも現れているようだ。若きGS乗りジェットセイヤ、かっこいいぜまったく。
【profile】
go!go!vanillas
牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド。さまざまなジャンルを呑み込んだオリジナリティ豊かな楽曲で聴く人を魅了し、ライヴでは強烈なグルーヴを生み出す。音楽ルーツへのリスペクトにとどまらず、常に変化・革新をし続けている。
2022年3月16日より全国11公演の「青いの。ツアー 2022」を開催。同月30日にはニューシングル「青いの。」のリリースを予定している。
【公式HPはこちら】
<青いの。ツアー 2022>
3月16日(水) Zepp Haneda w:Saucy Dog
3月17日(木) Zepp Haneda
3月24日(木) Zepp Nagoya w:SHE’S
3月25日(金) Zepp Nagoya
4月9日(土) なんば Hatch
4月10日(日) なんば Hatch w:フレデリック
4月16日(土) BLUE LIVE 広島
4月17日(日) 高松 festhalle
4月22日(金) 仙台 GIGS
4月24日(日) Zepp Sapporo
5月5日(木・祝) 大分 iichikoグランシアタ